【専門家解説】東京都の公共工事を落札するための完全必勝ガイド

みなさん。こんにちは。行政書士法人スマートサイド 代表行政書士の横内賢郎と申します。『【専門家解説】東京都の公共工事を落札するための完全必勝ガイド』のページにお越し頂きありがとうございます。

このページをご覧になっているということは、

  • 東京都の公共工事の入札に興味がある
  • 1度でよいから、東京都の公共工事を落札してみたい
  • 知り合いの会社が、公共工事を受注しているらしい
  • 東京都の公共工事を受注して、民間工事以外の売上の柱にしたい

といったように、何かしら「東京都」の「公共工事」の「入札・受注」に興味があるのかもしれませんね。そんな、皆さんの期待に応えるべく、このページでは、以下の目次に沿って、「どうやって、東京都の公共工事の落札の可能性を高めていけばよいのか?」という点について、解説していきます。

内容
【1】売上高を操作する!?「X1」を爆上げする方法

【2】名簿に記載できる?できない?技術職員で点数を稼ぐ方法

【3】知っている会社は、みんなやってる!即日対策可能なW評点アップの方法

【4】知らないと損をする!意外な盲点。YとX2の点数の仕組み

【5】東京都の公共工事の格付基準を理解する

【6】東京都の入札案件。発注のされ方の「クセ」を知る

【7】総まとめ

もちろん、誰でも簡単に公共工事を受注できるわけではありません。すでに、熾烈な競争、戦いが繰り広げられているのは事実です。とはいえ、弊所のお客さまの中には、継続的に安定して、公共工事を受注している建設会社さまがいらっしゃるのも事実です。

そこで、このページでは、そういった会社がいかにして、継続的に安定して東京都の公共工事を受注できているのか?について、私なりに学んできたノウハウを披露していきたいと思います。

このページを最後まで読み終わった後には、

  • 総合評定値P点をアップするための方法が分かった!
  • 東京都の公共工事を落札する意欲が湧いてきた!
  • いままでわからなかったことが明瞭になったおかげで、やる気が出てきた!
  • 何から始めればよいか?頭の中が整理でき、ますます、入札に参加したくなってきた!

といった「ちょっとした変化」を感じとることができると思います。

1.売上高を操作する!?「X1」を爆上げする方法

まずは、業種別完成工事高(X1)についての説明です。前提として、東京都の公共工事の入札参加資格を取得するには、「経営事項審査(略して経審)」を受けて、「総合評定値P点を取得」しなければなりません。この経営事項審査の結果である「総合評定値P点」が高ければ高いほど、より、大きい規模の公共工事に参入できるというイメージです。

そして、この「総合評定値P点」の算出にあたって、業種別の完成工事高(X1)が大きく影響してきます。もちろん、P点の算出には、会社の財務状況・技術職員数・保険の加入状況なども影響してくるので、完成工事高だけでP点が決まるわけでは、ありません。しかし、完成工事高が大きければ大きいほど、P点が高くなり、ひいては公共工事にも参入しやすくなるということは、理解できるかと思います。

売上高の「振替制度」の活用

「業種別の完成工事高」について、実は、「○○工事の完工高」と「□□工事の完工高」を合算して申請することができるという「振替制度」があります。

たとえばA社の

  • 内装工事の完工高が1億2000万円
  • 大工工事の完工高が8000万円

だった場合。「内装工事=1億2000万円」「大工工事=8000万円」として、経審を受けることもできれば、内装工事と大工工事を合算して「建築一式工事=2億円」として経審を受けることもできるのです。

  • 「内装工事=1億2000万円」で経審を受けた場合、内装工事のX1は730点、P点に換算すると183点
  • 「大工工事=8000万円」で経審を受けた場合、大工工事のX1は689点、P点に換算すると172点

これに対して

  • 「建築一式工事=2億円」で経審を受けた場合、建築一式工事のX1は790点、P点に換算すると198点

といったように、P点に換算すると約20点の開きが出てきます。このように、経審では、それぞれ異なる工事の完工高を合算して申請することができる「振替制度」があることを頭の中に入れておいてください。

業種 売上高 X1評点 換算後のP点
内装工事 1億2000万円 730点 183点
大工工事 8000万円 689点 172点
建築一式工事 2億円 790点 198点

実際、弊所のお客さまの中にも、この「振替制度」を使って、東京都の格付けをEランクからCランクにアップさせて、公共工事を受注されている会社が、何社もいます。しかも、この「振替制度」は、東京都の手引きにも、きちんと掲載されている合法な手続きです。

「2年平均or3年平均」の選択

さらにX1を爆上げする方法として有名なのが、「2年平均/3年平均」の選択です。完成工事高は、「2年平均を選択するか?」「3年平均を選択するか?」どちらか都合の良い方を選択して申請することができるのです。

例えばB社の解体工事の売上が

  • 前々期 4億円
  • 前期  3億円
  • 今期  2億円

だった場合。2年平均を選択して申請すると、解体工事の完成工事高は、2億5000万円になる((2億円+3億円)÷2年)のに対して、3期平均を選択して申請すると、解体工事の完成工事高は、3億円になります((2億円+3億円+4億円)÷3年)。

2億5000万円と3億円であれば、3億円のほうがいいに決まっていますね。具体的には、以下の通りになります。

  • 2年平均を選択した場合、X1は、818点。P点に換算すると205点
  • 3年平均を選択した場合、X1は、842点。P点に換算すると211点
2年or3年 平均売上高 X1評点 換算後のP点
2年平均 2億5000万円 818点 205点
3年平均 3億円 842点 211点

「振替制度」も「2年平均/3年平均の選択」も、初めて知ったという人が多いのではないでしょうか?東京都の公共工事を継続的に安定して受注できている会社は、こういったシステムを十分理解したうえで、自社に有利なように「業種別の完成工事高(X1)」を巧みに使いわけているのです。

何も知らないと、ただ何となく漠然と申請書類を作成して経審を受けているだけになってしまいかねません。そういったやり方で、うまく公共工事を落札できれば良いのですが、そこまで、よほどの運がない限り、うまく行く保障はありません。他社との競争にも負けてしまいます。「経審の仕組みを知る」ということは、公共工事を落札する上で、とても大事な意味を持つのです。

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2.名簿に記載できる?できない?技術職員で点数を稼ぐ方法

続いて、業種別の完成工事高(X1)と同様に、経営事項審査の結果である総合評定値P点を算出する際に必要な「技術職員の人数」について解説していきます。この「技術職員の人数」は、Zという審査項目で評価の対象になります。

ここまで記載した通り、売上高が高ければ高いほど、よりP点が良くなり、ひいては、より大きい規模の公共工事に参入できる可能性が増えてきます。同様に、技術職員がたくさんいればいるほど、Zの評点および、経審の結果であるP点はよくなり、より大きい規模の公共工事に参入できる可能性が増えるのです。

とはいうものの、経審で技術職員が加点対象になるためには、一定のルールがあります。

6か月を超える常勤期間

まず、経審の際には、「技術職員名簿」という名簿を作成して東京都に提出します(技術職員名簿については、下記、画像を参考にしてください)。技術職員名簿に掲載できる技術職員は、「6か月を超える期間、会社に常勤している人」でなければなりません。例えば、「3か月前に採用した新人」や「先月入社した新入社員」に、どんなに「立派な資格」や「優れた経歴」があったとしても、そもそも、6か月を超える期間、在籍していないので技術職員名簿には掲載できないのです。

一方で、技術職員名簿には「自社」の社員のほか、「出向者」も掲載することができます。比較的規模の大きい会社になると、親会社からの出向者やグルーブ会社からの出向者を、技術職員として迎え入れているケースも多いと思います。この「出向者」も、「出向後6か月を超える期間在籍している」ということが証明できれば、技術職員名簿に掲載することができ、経審の加点対象になります。

以前、「出向者」は、経審の加点対象にならない(技術職員名簿に掲載することができない)と、勘違いされている人がいましたが、「出向者だから不可」というわけではありません。あくまでも、「6か月を超える期間」という在籍期間が判断の対象になります。

資格を「持っている人」と「持っていない人」

技術職員名簿には、「資格者しか掲載できない」と勘違いしている人もいます。しかし、そんなことはありません。施工管理技士や建築士などはもちろんのこと、建築科や土木科といった特殊な学科を卒業している人、もしくは資格がなくても10年以上の実務経験がある人など、さまざまな人を名簿に掲載することができます。

技術職員名簿には、1人でも多くの技術職員を掲載したほうが有利なわけですから、自分で勝手に判断するのではなく、手引きをよく読んで、掲載の可否を判断する必要があります。

なお、ご存知の方も多いと思いますが、Z(技術者)の評点は、技術者のグレードごとに加点される点数が異なります。たとえば、

  • 1級資格者(講習受講あり)→6点
  • 1級資格者(講習受講なし)→5点
  • 1級技士補→4点
  • 基幹技能者→3点
  • 2級技術者→2点
  • その他技術者→1点

というように、より難易度の高い資格を保有している人の方が、点数が高くなっています。何となく理解できると思いますが、難易度の高い試験を合格した人(=技術力が高い人)に、より良い点数・評点を与えるという仕組みになっています。

このように経審で良い点数を取る(=よりよい条件で公共工事の入札に参入する)には、技術職員で点数を稼ぐことが必須です。技術職員名簿に掲載する技術職員の人数が、1人よりは10人の方が、点数が良くなりますし、無資格者よりは2級の資格者、2級の資格者よりは1級の資格者の方が点数が良くなります。そういった意味で、とても分かりやすい項目です。

添付画像の技術職員名簿には、1枚で30名の技術職員を記入できるようになっていますが、1枚で足りない場合には、2枚、3枚と追加して、記入することができます。

ただし、だからと言って、「名義だけを借りて常勤しているような形にしている人」は、技術職員名簿に掲載することはできません。経審の際には、標準報酬決定通知書などの資料を提出して、「その技術職員が、実際に、会社に常勤していること」の証明が必要です。当たり前のことですが、「Z評点」や「経審の結果であるP点」を良くしたいがために、本当は在籍していない人を在籍しているかのように装うことはできないようになっているのです。

ここまで説明してきた「技術職員の点数」については、ぜひ、社員の採用や育成の際に、参考にしてみてください。

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3.知っている会社は、みんなやってる!即日対策可能なW評点アップの方法

続いて、P点の構成要素である「W(社会性等)」について、説明させて頂きます。

「1.売上高を操作する!?「X1」を操作する方法」で説明した完成工事高は、過去1~2年間の売上高の実績です。また、「2.名簿に記載できる?できない?技術職員で点数を稼ぐ方法」で説明した技術職員は、6か月を超える期間の在籍が必要でした。「1」も「2」も、半年から1年以上の対策が必要な項目になります。

他方、この章でお伝えする「W評点」については、短期間で対策可能なものばかりです。むしろ、その気になれば、即日対策可能なものであるということもできます。

労災・退職金・建退協・防災協定の4項目

まずは、「法定外労災」について。この「法定外労災」とは、工事現場はもちろんのこと、通勤時や移動中に不慮の事故や災害にあった際に、保険が下りる「上乗せ労災」のことです。この法定外労災に加入しているとW評点の加点事由になります。社員の労働環境が整備されている会社であるという点において、そうでない会社に比べて、相対的に評価が高くなるのです。

次に、W評点の加点事由として挙げられるのが、「退職金制度の導入」です。社内に退職金規定があったり、中退共に加入していたりすると、やはり、W評点がアップし、ひいては、P点が高くなります。

さらに、「建退協に加入している」ことも、W評点の加点事由になります。但し、建退協の場合、加入しているだけでなく履行証明書が必要になるので、慣れていない人にとっては、「法定外労災」や「退職金制度」に比べると少しハードルが高いかもしれません。

最後に、W評点の加点事由になるものとしては、「防災協定の締結」を挙げることができます。防災協定は「地震や災害があった際には、積極的に防災活動に従事します」という自治体との協定のことです。

ここまで一気に4つの項目について、挙げてきました。W評点については、この4つ以外にもたくさんの審査項目があり、経審の加点対象となる項目があります。とはいうものの、すべての項目で加点を狙うのは非現実的なので、まずは、この4つの項目に重点を置いて、対策を行いましょう。

W評点で重要なのは、「みなさんが、役所の人間だったら、どういった会社に公共工事を落札してもらいたいか?」という視点です。たとえば、法定外労災にも加入せず、退職金制度もない、いわば「従業員をないがしろに扱っている会社」に公共工事を落札してもらうよりも、法定外労災に加入し、退職金制度も導入し、建退協にも加入し、自治体と防災協定を締結しているような優秀な会社に、公共工事を落札してもらいたいと思うはずです。

そうであるならば、皆さんの会社も、公共工事を落札するにふさわしい体制を整えなければなりません。それが、W評点を上げるためのコツでもあるのです。

審査基準日に加入・導入されていればOK

なお、上記であげた

  • 法定外労災
  • 退職金制度
  • 建退協
  • 防災協定

の4つは、「審査基準日=決算日」までに加入・導入していれば、評価の対象になります。そのため、仮に現時点で、加入・導入していなくても、次の決算までに対策を行えば、次の決算日を基準とした経審においては、加点の対象になるのです。つまり、いまから、次の決算までに対策を行えばよいのです。

また、特殊な計算式を用いて計算すると、4つすべての対策を行うと、P点が合計で85点もアップします。できれば4つ全ての対策を行ってもらいたいところですが、強いて順位をつけるとすれば、まずは、簡単な「法定外労災」「退職金制度」あたりから始めてみては如何でしょうか?

なお、弊所の関与先で、公共工事を継続して落札できているお客さまで、「法定外労災」や「退職金制度」が整っていない会社は皆無です。それだけ、どの会社も「公共工事落札のために、やれることはすべてやる」という信念を持って臨んでいるということです。まさに、「知っている会社はみんなやっている」経審対策ですので、対策がまだの人は、ぜひ、今すぐにでも、加入・導入を検討してみてください。

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4.知らないと損をする!意外な盲点。YとX2の点数の仕組み

経営事項審査では、ここまで説明してきたX1、Z、Wのほかに、「経営状況分析」のYと「自己資本額+平均利益額」のX2が審査の対象になります。以下では、「Y」と「X2」の両方を、説明します。この「Y」と「X2」が終われば、X1、Z、Wと合わせて、経審の5つの審査項目をすべてマスターしたことになります。

経営状況分析の点数=Y評点

まず、Y評点は「会社の財務に関する経営状況の点数」のことをいいます。このY評点は、許可行政庁に対して申請を行うのではなく、「経営状況分析機関」に「財務諸表」や「別表16(税務申告書)」を提出して行います。

手続的には、以下のように1~3の順番になります。

  1. 経審を受ける前に、まず経営状況分析機関に経営状況分析の依頼をして、経営状況分析の結果通知書を入手します
  2. その経営状況分析の結果通知書にY点が記載されています
  3. 経審の際には、Y点が記載されている経営状況分析結果通知書を、その他の書類と一緒に都庁に提出します

Y評点は、以下の表にある4つの項目に属する8個の指標をもとに算出します。

項目 指標
負債抵抗力 純支払利息比率
負債回転期間
効率性・収益性 総資本売上総利益率
売上高経常利益率
財務健全性 自己資本対固定資産比率
自己資本比率
絶対的力量 営業キャッシュフロー
利益剰余金

たしかに、会社の財務状況を表す指標なので、1つ1つの指標を詳しく勉強するのも大事です。しかし、皆さんの目的は「勉強すること」にあるわけではなく「公共工事を受注すること」なわけですから、なるべく少ない労力で、最大限の成果を獲得したいですね。そこで、「公共工事を受注する」という観点から、あえて、大雑把に俯瞰してとらえると、「Y評点=財務状況」をよくするには、ずばり、「いかに少ない資産でより多くの売上を上げるか?」という効率性に着目することが重要です。

少しわかりにくいので、具体例を挙げて、解説します。

たとえば、ともに、完成工事高2億円の甲社と乙社があったとします。甲社の総資産は1億円であるのにたいして、乙社の総資産が1000万円であった場合、どちらのほうが、Y評点が良いでしょうか?

一見すると、甲社の総資産が1億であるのに対して、乙社の総資産が1000万円しかないので、甲社の方がY評点が高いように思えます。しかし、甲社は、総資産(1億円)を2回転させて、完成工事高2億円を売り上げているのに対して、乙社は、総資産(1000万円)を20回転もさせて、完成工事高2億円を売り上げていることになります。「2回転の甲社」より「20回転の乙社」の方が、効率性がよいといえます。そのため、よりよいY評点が付くのは甲社ではなく、乙社の方なのです。

総資産 完成工事高 回転率
甲社 1億円 2億円 2回転
乙社 1000万円 2億円 20回転

「自己資本額+平均利益額」の点数=X2

続いて、「自己資本額+平均利益額」のX2評点をよくするには、どうすればよいでしょう?X2評点は、「自己資本の額」と「平均利益額」の2つの点数を総合評価して、算出されます。Yと同様に会社の財務状況の良し悪しによって、点数が変わってきます。このX2については、経審の点数を良くする秘策というのはありません。「毎年毎年、地道に利益を積み増して、会社の財務状況を健全にしていく」しか方法がないと言えます。たとえば、過度な税金対策や、無駄遣いを極力抑えて、利益体質にすることが必要です。

あえて、経審対策として挙げることができるとすれば、X2評点のうち「自己資本額」については、「基準決算か?2期平均か?」を選択することができるという点です。たとえば、「前期の自己資本額が5000万円」で「今期の自己資本額が4000万円」であった場合。

  • 前期の自己資本額=5000万円
  • 今期の自己資本額=4000万円

基準決算の額を採用し、自己資本額を4000万円として、経審を受けることはできます。しかし、それでは、X2の評点で損をしてしまします。なぜなら、この場合、「基準決算(4000万円)」ではなく、「2期平均(4500万円=(5000万円+4000万円)÷2年)」にした方が、自己資本額が髙くなるからです。

この点については、小学生レベルの算数ができれば、わかることですので、難しいことはありません。知っているか否かの違いだけですので、「自己資本額は、基準決算か2期平均かを選ぶことができる」と覚えておいてください。

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5.東京都の公共工事の格付基準を理解する

「1~4」までは経営事項審査に関する説明でしたが、経営事項審査のP点のアップに関する説明は理解できましたか?ここからは、東京都の入札参加資格についての説明に入ります。

手続きの流れ的にも、「経営事項審査の申請⇒P点の取得⇒入札参加資格の申請⇒入札参加資格の取得⇒東京都の公共工事への参入」という流れになります。そのため、以下では、公共工事の入札参加資格を取得する際に、ぜひ理解しておきたい「東京都の公共工事の格付基準」について、説明をしていきたいと思います。

東京都の公共工事の格付基準

東京都の公共工事の入札参加資格は、経審が無事終わって、総合評定値P点を取得した後でなければ、申請することができません。つまり、経審を受けてP点を取得していることが、入札参加資格の取得の条件になっているのです。では、なぜ、経審を受けてP点を取得していないと、入札参加資格を取得できないのでしょうか?

これは、経審の結果であるP点が、入札参加資格の等級(ランク)の格付けに用いられているからです。

東京都の場合、道路舗装工事、橋りょう工事、河川工事、水道施設工事、下水道施設工事、一般土木工事、建築工事の7つの業種で、A~Eの等級(ランク)が格付けされます。また、電気工事、給排水衛生工事、空調工事の3つの業種でA~Dの等級(ランク)が格付けされます。

なぜ、わざわざ、AやBやCといった等級(ランク)を付与するのか?それは、以下のように等級(ランク)ごとに、発注標準金額をグループ分けするためです。

  • A等級=2億円以上
  • B等級=8000万円以上2億円未満
  • C等級=3000万円以上8000万円未満
  • D等級=700万円以上3000万円未満
  • E等級=700万円未満

たとえば、「A等級の会社は2億円以上の公共工事に参入できる」とか「B等級の会社は8000万円以上2億円未満の公共工事に参入できる」といったようなグループわけです。それでは、この格付けがどのように行われるか?ご存知ですか?(下記の画像は、実際に東京都から公表されている「工事の発注標準金額に対応する等級」です。

東京都の場合、公共工事の等級格付は、①P点を基準に「客観等級」を格付けし、②過去最高完成工事経歴を基準に「主観等級」を格付けし、③客観等級と主観等級の、より低い等級を「最終等級」として格付けしています。

  • ①P点→客観等級
  • ②過去最高完成工事経歴→主観等級
  • ③客観等級と主観等級のより低いほう→最終等級

例えば、客観等級がCで、主観等級もCだった場合。最終等級はCになり、「3000万円以上8000万円未満」の工事の入札に参加できるということになります。

客観等級がCで、主観等級がDだった場合。客観等級がCであったとしても、より低い主観等級に引きずられて、最終等級はDになり、「700万円以上3000万円未満」の工事の入札にしか参加できなくなります。

客観等級がEだった場合。仮に主観等級がBだったとしても、最終等級は、客観等級・主観等級のうち、より低い客観等級に引きずられて、Eに格付けされるため、「700万円未満」の公共工事にしか参加できないことになります。

客観等級と主観等級のより低い方の等級が、最終的な等級として決定されるという意味が分かりましたか?具体的な等級格付けの方法、実際の発注標準金額は、東京都の公報を見て確認をして頂くか?こちらのセミナー動画を参考にしてください。https://tokyo-public.jp/100min-seminer/

東京都の公共工事の格付基準を理解するメリット

それでは、このような格付基準を理解すると、どういったメリットがあるのでしょうか?

たとえば、みなさんの会社が「道路舗装工事の5000万円程度の入札に参加したい」となった場合。

  • 道路舗装工事の5000万円の入札に参加するには、最終的な等級としてC等級が必要になる。

  • 最終的な等級としてC等級が必要である以上、経審の結果である総合評定値P点が650点以上必要で、過去最高完成工事経歴は6000万円以上のものが必要になる。

  • 現時点で、過去最高完成工事経歴は6000万円以上のものがあるので、総合評定値P点を650点以上にする必要がある。

  • 総合評定値P点を650点以上にするには、X1・X2・Y・Z・Wのうち、何の対策をすればよいか?何の対策が足りていないのか?

というように、みなさんの会社の目的から逆算して考えることができるようになります。

つまり手続的には(時系列としては)、

  • 経営事項審査を受けて

  • 総合評定値P点を取得して

  • 東京都へ入札参加資格を申請して

  • AやBやCといったランク(格付け)が決まって

  • 発注標準金額がわかって、○○万円規模の公共工事なら参入できることを知る

という流れですが、東京都の公共工事の格付基準を理解していれば、「どのくらいの金額の公共工事を落札したいか?」を決めてしまえば、あとは、現時点から遡って、経審の対策が打てるようになるのです。

このように、ただ漠然と東京都の入札に参加したいと考えている人より、格付基準を理解したうえで、「道路舗装工事の5000万円規模の東京都の公共工事に参加したい!」と、具体的に明確に決めている人の方が、より効果的な対策をすることができるので、公共工事落札の可能性も高くなるのです。

たしかに、経審の結果であるP点や入札資格の格付けは、申請すれば自動的に出てきます。結果通知書に書いてあるものを確認すれば良いだけなので、自社の点数やランクを事後的に知ることは簡単です。しかし、P点の算出方法やランクの格付基準を理解することによって、なるだけ、理想的な結果に近づけるよう、事前に、具体的な対策を検討することができるのです。

公共工事の入札案件を継続的に落札している会社は、少しでも、点数やランクが上がるように、常に格付基準や自社の点数アップについて、対策を勉強されています。

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6.東京都の入札案件。発注のされ方の「クセ」を知る

格付基準を理解して、対策を行った後は、実際の東京都の発注案件を見ていきます。東京都からどういった案件が発注されているのか?どういった発注のされ方をしているのか?わからないのに、いきなり棚ぼた式に案件を受注できるほど、公共工事の落札は甘くはありません。

弊所に、相談にお越しになる建設業者の社長の中には、「これだけ多くの案件が発注されているのだから、何かしら落札できるでしょう~」と、楽観的な方がいらっしゃいます。しかし、楽観的なのは大いに結構なのですが、せっかく東京都の入札参加資格を取得したのに「1件も落札できない」どころか、「個別の案件の入札に参加することすらできなかった…」とならないようにしたいものです。

下記の画像は、実際に東京都から公表されている案件の「希望申請要件」の実物です。この「希望申請要件」を参考にしながら、いまからお伝えすることを、入札の案件ごとに、十分に確認するようにしてください。

等級・地理的条件・配置技術者制限

まず、1つ目は、等級(ランク)についてです。先ほど説明した「5.東京都の公共工事の格付基準を理解する」と重複しますが、とても重要なことなので、説明をします。

例えば、東京都が、「建築工事のCもしくはDの等級を有する会社」といった条件を付して案件を発注した場合。みなさんの会社が東京都の建築工事の入札参加資格を持っていたとしても「E等級」であったと場合は、「どんなにこの案件を落札したい!」と願ったところで、当該案件への参加は認められません。

規模の大きい公共工事・難易度の高い公共工事は、それなりの能力、規模感、技術力のある会社に任せなければならないため、仕方ありません。CもしくはD等級の案件の入札に参加したいのであれば、頑張って、会社の等級をCまたDに格上げしなければならないのです。

続いて2つ目は。地理的条件についてです。

東京都が発注する公共工事の案件の詳細を確認すると、「東京都と契約する営業所(本店を含む)が都内にあること」といった条件が付されている場合があります。この場合、会社の本店もしくは営業所(支店)が、東京都内にある会社であればよいのですが、埼玉県内にある埼玉県知事許可業者や、神奈川県内にある神奈川県知事許可業者であった場合、入札参加資格があったとしても、当該案件の入札には参加できないことになります。

最後に3つ目として、配置技術者の制限についてです。

東京都が発注する公共工事の中には、「営業所の専任技術者を配置予定技術者にすることができない」という条件が付されている場合もあります。建設業許可を取得する際には、営業所に専任技術者が常勤していることが要件でしたが、その建設業許可を取得する際の「営業所の専任技術者」を、当該案件の公共工事の工事現場に配置することができないのです。

そのため、技術者が少ない会社では、条件にあう技術者を配置できず、当該案件の公共工事に参入することをあきらめなければならない場合も出てきます。

「入札資格を取得したこと」と「個別の案件に入札できること」は別もの

このように、東京都の公共工事については、『入札参加資格を取得したこと』と『個別の案件の入札に参加できること』は、切り離して考えなければなりません。

「A」や「B」の等級の、公共工事の入札に参加したいのであれば、「A」や「B」の等級を取得できるように、経審の点数をアップさせたり、過去最高完成工事経歴を高める工夫が必要です。

みなさんの会社が、大阪府内にある大阪府知事許可業者であった場合には、東京都内に支店を設置し、大阪府知事許可を大臣許可に切り替えてから、東京都の入札にチャレンジする必要があるかもしれません。

会社に技術職員が少ない場合、東京都の公共工事を落札するために、あらたに有資格者を採用する必要があるかもしれません。

このように、東京都の入札参加資格を取得しただけでは、必ずしも、公共工事を落札できるとは限らないのです。これが、私がお伝えしたかった東京都の入札案件の発注のされ方の「クセ」です。

「入札参加資格を取得した後のことが理解できていない方」や「公共工事の落札を簡単に考えてしまっている方」は、いざ、実際の案件に入札しようとなった段階で、「こんなはずではなかった…」と落胆することになってしまいかねません。あくまでも、入札参加資格の取得はゴールではなく、スタートです。

入札参加資格を取得した後にも、東京都の公共工事を落札するには、さまざまなハードルが待ち受けているのです。

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7.総まとめ

さて、「【専門家解説】東京都の公共工事を落札するための完全必勝ガイド」は、如何でしたか?このページで、私が皆さんにお伝えすることも、そろそろ終わりです。最後に、「公共工事を落札するための対策を総まとめ」と「東京都の公共工事を落札するための行動指針」の2点について、説明させて頂きます。

公共工事を落札するための対策を総まとめ

経営事項審査の総合評定値P点は、X1(業種別完成工事高)、X2(自己資本額+平均利益額)、Y(経営状況分析)、Z(元請完成工事高+技術職員数)、W(その他の社会性)の5つを総合評価して算出されます。

X1の業種別完成工事高は、「振替制度」を使って、各工事の完成工事高を合算して申請することができました。また、「2年平均か、3年平均か」のどちらか良い方を選択することが可能でした。

Zの技術職員は、資格を持っていなくても、特殊な学科の卒業経歴、もしくは10年の実務経験がある人であれば、技術職員名簿に記載することができました。名義貸しはいけませんが、会社に6か月を超える期間在籍している人がいれば、技術職員名簿に掲載できるように、1人でも多くの人を技術職員名簿に掲載する可能性を探っていきましょう。

さらにWは、法定外労災に加入したり、退職金制度を導入することによって、大幅な点数アップが期待できました。いずれも、決算日までに対策を行えば、次回の経審で加点対象にすることができます。

続いて、東京都の入札については、発注標準金額ごとにグループわけがされていて、等級ごとに、入札に参加できる価格帯が異なります。「どれくらいの金額」の「何工事」を「年間何件」落札したいか?具体的なイメージを膨らませることによって、客観等級(P点)が足りないのか?主観等級(過去最高完成工事経歴)が足りないのか?対策を取ることができるようになります。

東京都のホームページ(https://www.e-procurement.metro.tokyo.lg.jp/index.jsp)を見れば、実際に公表されている案件を確認することができます。入札参加資格を持っていなくても、案件の詳細確認はできるはずです。ご自身が実際に案件に入札することを想定して、希望申請の条件や等級・価格帯を確認してみてください。

東京都の公共工事を落札するための行動指針

「経営事項審査の申請」や「入札参加資格の申請」を素人の人が行うとなると、少しハードルが高いです。正直いって、スムーズな手続きというのは、厳しいかもしれません。経審の点数アップについては、このページでお伝えしたことがすべてではありません。申請書類の書き方はもちろんのこと、さらなる点数アップの方法について、すべてを短時間のうちに理解するには無理があります。

また、東京都の入札参加資格を取得するには「電子証明書+ICカードリーダ」を購入して、パソコンの環境設定も行わなければなりません。通常業務の合間を縫って、これらの準備をするの、非常に手間がかかる上に、煩雑な作業と言えます。

そこで、このページをお読みのみなさんが、本気で東京都の公共工事の案件を落札したいと思うのであれば、そういった申請手続きはすべて、行政書士法人スマートサイドにお任せください。行政書士法人スマートサイドは、東京都の経営事項審査や公共工事の入札参加資格の申請を専門に行う行政書士法人です。いままで、いくつもの会社の東京都の案件落札に貢献してきました。手続きのやり方やノウハウについては、熟知していますし、何よりも経験があります。

みなさんが、手続きや申請作業に、時間を取られるのは、得策ではありません。むしろ、みなさんは、みなさんにしかできないこと、例えば、案件の検索や、東京都の発注動向の確認などに、時間を費やしてください。それが、公共工事案件落札への一番の近道になるはずです。

最後になりましたが、行政書士法人スマートサイドでは、有料(1時間11,000円)にはなってしまいますが、経営事項審査や東京都の入札参加資格に関する相談を随時承っております。

  • 費用→11,000円
  • 場所→東京都文京区の弊所
  • 時間→1時間
  • どうやってP点を上げていけばよいのか?
  • 事前にP点のシミュレーションをして、等級を予測したい
  • 等級や格付けについて、もう少し詳しく知りたい!
  • 東京都の案件の検索の仕方について「東京都電子調達システム」の見方を教えて欲しい
  • 電子証明書やICカードリーダの準備、入札用パソコンの環境設定の仕方がわからない
  • ほかの行政書士に頼んでいたけど、スマートサイドに切り替えたい

など、お困りの際は、ぜひ、有料相談をご活用ください。それでは、1日でも早い「東京都の公共工事の案件落札」を祈念して、終わりにしたいと思います。最後までお付き合いくださいまして、誠にありがとうございました。

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