経営事項審査を受けたことがある人ならわかると思いますが、経営事項審査を受けると、申請した業種ごとに「総合評定値(P点)」が付与されます。経営事項審査の結果通知書である「経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書」には、内装工事であれば内装工事のP点、解体工事であれば解体工事のP点が記載されます。
この総合評定値P点は、以下の計算式によって算出されます。
総合評定値(P点) | 0.25(X1)+0.15(X2)+0.20(Y)+0.25(Z)+0.15(W) |
---|
X1やZというたくさんの記号が出てきますが、これらは、経営事項審査で審査される審査項目につけられた記号です。経営事項審査では以下のように4つの審査区分に分かれた5つの審査項目について、各会社の状況を審査します。
審査区分 | 記号 | 審査項目 |
---|---|---|
経営規模 |
X1 | 業種別完成工事高 |
X2 | 自己資本額/利払前税引前償却前利益の額 | |
技術力 | Z | 技術職員数/元請完成工事高 |
社会性など | W | 建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組状況など |
経営状況 | Y | 負債抵抗力/収益性・効率性/財務健全性/絶対的力量 |
X1、X2、Z、Yについては、すでに他のページで解説していますので、このページでは、「社会性など」の審査区分に該当する「W」について解説をしていきたいと思います。「W」の特徴は、なんと言っても、審査項目が複雑で多岐にわたるという点です。このページでは、そんな「W」の評点について、わかりやすく解説していきたいと思います。
W評点(その他の審査項目/社会性等)の概要
このページの一番初めにも記載した通り、経営事項審査の結果である総合評定値P点は、「X1×0.25+X2×0.15+Y×0.20+Z×0.25+W×0.15」という計算式で算出されます。P点は、公共工事の入札資格を取得する際の等級の格付け基準となりますが、そのP点の15%をW評点が占めていることになります。
そのため、P点で良い点数を取りたい(=公共工事の等級格付けを良くしたい)という場合、Wの審査項目の対策を怠ることは致命的です。W(その他の審査項目/社会性)で審査される審査項目は、以下の8つです。
記号 | 項目 |
---|---|
W1 | 建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組状況 |
W2 | 建設業の営業継続の状況 |
W3 | 防災活動への貢献の状況 |
W4 | 法令遵守の状況 |
W5 | 建設業の経理の状況 |
W6 | 研究開発費の状況 |
W7 | 建設機械の保有状況 |
W8 | 国又は国際標準化機構が定めた規格による認証または登録の状況 |
W(その他の社会性)の審査項目は、W1~W8までありますが、このW1~W8には、それぞれの項目ごとに点数が付与されます(付与される点数の詳細については、順次、解説していきます)。Wの評点は、W1~W8の合計点数に「10×175/200」を掛け算して算出します。
- W評点=(W1+W2+W3+W4+W5+W6+W7+W8)×10×175÷200
となります。つまりW評点は、W1~W8の合計に8.75を掛け算することによって、導き出すことができます。
なお、令和4年12月までは、W評点の算出方法は、「(W1+W2+W3+W4+W5+W6+W7+W8)×10×190÷200」でしたが、令和5年1月以降は、「(W1+W2+W3+W4+W5+W6+W7+W8)×10×175÷200」に改正されていますので、ご注意ください。
以下では、Wを構成する項目であるW1~W8について、細かく見ていきたいと思います。
W1:建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組状況
まずは「W1」の「建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組状況」についてです。「建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組状況」といっても、漠然とし過ぎていて何を審査の対象としているのか?わかりにくいですね。
「W1」の「建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組状況」は、以下の10個の項目に細分化されます。
- 雇用保険加入の有無
- 健康保険加入の有無
- 厚生年金保険加入の有無
- 建設業退職金共済制度加入の有無
- 退職一時金制度若しくは企業年金制度導入の有無
- 法定外労働災害補償制度加入の有無
- 若年技術職員の育成及び確保の状況
- 知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況
- ワークライフバランスに関する取組の状況
- 建設工事に従事する者の就業を蓄積するために必要な措置の実施状況
雇用・健康・厚生年金保険の加入の有無
まず、「W1」の「建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組状況」で審査の対象になるのは「雇用保険加入の有無」「健康保険加入の有無」「厚生年金保険加入の有無」の3点です。但し、令和2年10月の建設業法の改正で、建設業許可を取得する際の要件として上記3つの保険に加入することが義務付けられています。
そのため、「雇用・健康・厚生年金保険への加入していること」が加点事由として評価されれるのではなく、「雇用・健康・厚生年金保険に加入していないこと」が減点事由として評価されます。減点評価される場合、「雇用保険に加入していない場合」が-40、「健康保険に加入していない場合」が-40、「厚生年金保険に加入していいない場合」が-40と各保険について40点の大幅減点になります。
各保険への加入の有無と減点数 | |
---|---|
雇用保険に加入していない場合 | -40 |
健康保険に加入していない場合 | -40 |
厚生年金保険に加入していない場合 | -40 |
建設業退職金共済制度加入の有無
「W1」の「建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組状況」では、「建設業退職金共済制度の加入の有無」も審査の対象になります。この「建設業退職金共済制度加入の有無」で、加点されるためには、建退協に加入しているだけでなく、「建設業退職金共済事業加入履行証明書」が必要になります。
「建設業退職金共済制度に加入していること」によって、W1が15点加点されます。
退職一時金制度若しくは企業年金制度導入の有無
「W1」の「建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組状況」では、「退職一時金制度若しくは企業年金制度導入の有無」も審査の対象になります。
退職一時金制度には、中小企業退職金共済制度と自社退職金制度の2つがあります。中小企業退職金共済制度に加入している場合には、加入証明書が必要です。自社退職金制度を導入している場合には、労働基準監督署への届出印の押印がある就業規則(退職金に関する各種規定が明記されていること)が必要です。
企業年金制度は、企業が従業員のために設ける私的な年金制度のことで、国民年金や厚生年金に加えて、退職後の従業員の生活資金を補うために企業が自主的に設定する制度です。この企業年金制度には、「確定給付企業年金(規約型/基金型)」「確定拠出年金(企業型)」「厚生年金基金」の3つの種類があります。制度の詳細な解説は割愛しますが、加入証明書や領収書によって、企業年金制度を導入していることを証明できれば、W1の加点事由になります。
「退職一時金制度若しくは企業年金制度を導入していること」によって、W1が15点加点されます。
法定外労働災害補償制度加入の有無
「W1」の加点事由になる「法定外労働災害補償制度」とは、建設現場等での労働災害の発生に対して国が行う法定の労災保険(労働災害補償保険)に上乗せして、補償を手厚くする制度です。工事現場のみならず、通勤に起因した負傷、疾病、障害、死亡などに対して、企業が国の労災保険とは別に、補償給付を上積みするので、経審の際の加点事由として評価されます。
但し、経審の際に加点事由となるためには、
- ア:業務災害と通勤災害の両方を担保していること
- イ:死亡及び労働災害補償保険の傷害等級第1~第7までを補償していること
- ウ:直接の使用関係にある下請負人の直接使用関係にある職員全てを対象としていること
- エ:工事現場ごとの契約ではなく、施工するすべての工事を対象にしていること
の4つの要件を満たしている必要があります。また、保険会社から「労働災害総合保険証券または加入証明書」を発行してもらう必要もあります。
この「法定外労働災害補償制度に加入していること」によって、W1が15点加点されます。
若年技術職員の育成及び確保の状況
「W1」の「建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組状況」においては、「若年技術職員の育成及び確保の状況」も、審査の対象になります。この「若年技術職員の育成及び確保の状況」は、「若年技術職員の継続的な育成及び確保」と「新規若年技術職員の育成及び確保」の2つからなります。
「若年技術職員の継続的な育成及び確保」は、技術職員名簿に記載された満35歳未満の技術職員の人数が、技術職員の全体の人数の15%以上に該当する場合には、W1が1点加点されます。
「新規若年技術職員の育成及び確保」は、満35歳未満の技術職員のうち、審査対象事業年度内に新規に技術職員となった人数が、技術職員全体の人数の1%以上に該当する場合には、W1が1点加点されます。
なお、若年技術職員が、満35歳未満に該当するか否かは、申請日時点の年齢を基準にするのではなく、審査基準日時点の年齢を基準にします。
知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況
「W1」の中にある「知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況」を理解するのは、非常に複雑で難しいのでこのページでは、全体像の簡単な説明にとどめ、別途、他のページで詳しく解説することを予定しています。
まず、「知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況」は、「技術者のCPD単位取得数」と「技能者の能力評価レベル向上」の2つに分かれます。
「技術者のCPD単位取得数」について。「CPD」とは「技術者の継続教育(Continuing Professional Development)」のことですが、技術者として、最新の技術者や知識を習得し、能力の維持・向上を図るために、さまざまな団体からプログラムが用意されています。そのプログラムを受講し、CPD単位を取得すると、その単位の取得数に応じて、W1の点数に反映される仕組みになっています。
「技能者の能力評価レベル向上」について。「技能者の能力評価レベル向上」は、建設キャリアアップシステム(CCUS)のレベルの向上が、W1の点数に反映されるようになっています。
ここでは、あまり難しく考えずに、「技術者がCPD単位を取得した場合」や「技能者がCCUSのレベルがアップした場合」に、W1の点数が有利になるというように覚えておいて頂ければと思います。
ワークライフバランスに関する取組の状況
ワークライフバランスに関する取組の状況は、「女性活躍推進法に基づく認定」と「次世代法に基づく認定」と「若年雇用促進法に基づく認定」の3つに分かれます。以下の表をご覧ください。それぞれの認定によって、加点になるW1の点数が変わってきます。
ワークライフバランスに関する取組の状況 | 点数 | |
---|---|---|
女性活躍推進法に基づく認定 | プラチナえるぼし | 5 |
えるぼし(第3段階) | 4 | |
えるぼし(第2段階) | 3 | |
えるぼし(第1段階) | 2 | |
次世代法に基づく認定 | プラチナくるみん | 5 |
くるみん | 3 | |
トライくるみん | 3 | |
若年雇用促進法に基づく認定 | ユースエール | 4 |
建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況
「W1」で審査の対象となる「建設工事に従事する者の就業を蓄積するために必要な措置」とは、建設キャリアアップシステムにおいて、工事現場情報の作成や登録を実施しており、かつ、建設工事に従事する者が建設キャリアアップシステムと連携したカードリーダなどを使って建設キャリアアップシステム上に就業履歴を蓄積できる体制を整備していることを指します。
民間工事を含む全ての建設工事で上記措置を実施している場合には、W1が15点加点されます。
全ての公共工事で上記措置を実施している場合には、W1が10点加点されます。
W2:建設業の営業継続の状況
経営事項審査のW評点を構成するW1~W8までのうち、W2は「建設業の営業継続の状況」についての審査項目です。この項目は単純で、「営業継続の状況」とあるように、建設業の許可を取得してからの営業年数を審査の対象とし、かつ、営業年数が長ければ長いほど、W2の点数がよくなります。
営業年数 | 点数 | 営業年数 | 点数 | 営業年数 | 点数 |
---|---|---|---|---|---|
35年以上 | 60 | 24年 | 38 | 13年 | 16 |
34年 | 58 | 23年 | 36 | 12年 | 14 |
33年 | 56 | 22年 | 34 | 11年 | 12 |
32年 | 54 | 21年 | 32 | 10年 | 10 |
31年 | 52 | 20年 | 30 | 9年 | 8 |
30年 | 50 | 19年 | 28 | 8年 | 6 |
29年 | 48 | 18年 | 26 | 7年 | 4 |
28年 | 46 | 17年 | 24 | 6年 | 2 |
27年 | 44 | 16年 | 22 | 5年以下 | 0 |
26年 | 42 | 15年 | 20 | – | – |
25年 | 40 | 14年 | 18 | – | – |
なお、W2の「建設業の営業継続の状況」においては、上記の営業年数ごとにW2の点数が加算されるだけでなく、民事再生法または会社更生法の適用がある場合に、点数が60点減点されます。滅多にありませんが、再生手続開始の決定または更生手続開始の決定を受け、かつ、審査基準日以前に再生手続終結の決定又は更生手続終結の決定を受けていない場合には、減点対象になります。
W3:防災活動への貢献の状況
経営事項審査における「W(その他の審査項目/社会性等)」の項目では、「防災活動への貢献の状況(W3)」も審査の対象になります。この「防災活動への貢献の状況(W3)」は、国や地方公共団体と災害時における防災活動について、防災協定を締結している場合に、評価の対象になります。
防災活動を締結している場合には、W3の点数が20点加点されます。
W4:法令遵守の状況
W4は、審査対象年度内(審査基準日直前1年以内)に、建設業法に基づく営業停止処分・指示処分を受けた場合、減点対象になります。
- 「指示をされた場合」は15点の減点となります。
- 「営業の全部若しくは一部の停止を命ぜられた場合」は30点の減点となります。
W5:建設業の経理の状況
「W5」の「建設業の経理の状況」は、「監査の受審状況」と「公認会計士等(2級登録経理士試験合格者等を含む)の数」からなります。W5の点数は「監査の受審状況の点数」と「公認会計士等(2級登録経理士試験合格者等を含む)の数の点数」を合算して算出します。
- W5=監査の受審状況の点数+公認会計士等(2級登録経理士試験合格者等を含む)の数の点数
監査の受審状況の点数
「監査の受審状況」については、以下の4つのいずれかに該当する場合に、それぞれ加点対象になります。
監査の受審状況 | 点数 |
---|---|
会計監査人の設置 | 20 |
会計参与の設置 | 10 |
経理処理の適正を確認した旨の書類の提出 | 2 |
公認会計士等(2級登録経理士試験合格者等を含む)の数の点数
審査基準日時点において社内に「公認会計士等」「2級登録経理士試験合格者等」が常勤していると加点対象になるという審査項目です。加点対象になるのは、以下の人を指します。
公認会計士等 |
---|
1:公認会計士であって、公認会計士法第28条の規定による研修を受講した者 |
2:税理士であって、所属税理士会が認定する研修を受講した者 |
3:1級登録経理試験に合格した年度の翌年度の開始の日から5年経過していない者 |
4:1級登録経理講習を受講した年度の翌年度の開始の日から5年経過していない者 |
2級登録経理士試験合格者等 |
---|
1:2級登録経理試験に合格した年度の翌年度の開始の日から5年経過していない者 |
2:2級登録経理講習を受講した年度の翌年度の開始の日から5年経過していない者 |
公認会計士等(2級登録経理士試験合格者等を含む)の数の点数は、以下の計算式から「公認会計士等数値」という数値を算出し、以下のテーブル表にあてはめて求めることができます。
- 計算式:公認会計士等の数×1+2級登録経理試験合格者の数×0.4
年間平均完成工事高 | 公認会計士等の数の点数 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
10点 | 8点 | 6点 | 4点 | 2点 | 0点 | |
600億円以上 | 13.6以上 | 10.8以上
13.6未満 |
7.2以上
10.8未満 |
5.2以上
7.2未満 |
2.8以上
5.2未満 |
2.8未満 |
150億円以上
600億円未満 |
8.8以上 | 6.8以上
8.8未満 |
4.8以上
6.8未満 |
2.8以上
4.8未満 |
1.6以上
2.8未満 |
1.6未満 |
40億円以上
150億円未満 |
4.4以上 | 3.2以上
4.4未満 |
2.4以上
3.2未満 |
1.2以上
2.4未満 |
0.8以上
1.2未満 |
0.8未満 |
10億円以上
40億円未満 |
2.4以上 | 1.6以上
2.4未満 |
1.2以上
1.6未満 |
0.8以上
1.2未満 |
0.4以上
0.8未満 |
0.4未満 |
1億円以上
10億円未満 |
1.2以上 | 0.8以上
1.2未満 |
0.4以上
0.8未満 |
– | – | – |
0円以上
1億円未満 |
0.4以上 | – | – | – | – | – |
W6:研究開発費の状況
研究開発費の状況(W6)の点数は、審査対象事業年度と前審査対象事業年度における「研究開発費の額」の平均を、下記テーブル表にあてはめて算出します。
平均研究開発費の額 | 点数 | |||
---|---|---|---|---|
100億円以上 | 25 | |||
75億円以上100億円未満 | 24 | |||
50億円以上75億円未満 | 23 | |||
30億円以上50億円未満 | 22 | |||
20億円以上30億円未満 | 21 | |||
19億円以上20億円未満 | 20 | |||
18億円以上19億円未満 | 19 | |||
17億円以上18億円未満 | 18 | |||
16億円以上17億円未満 | 17 | |||
15億円以上16億円未満 | 16 | |||
14億円以上15億円未満 | 15 | |||
13億円以上14億円未満 | 14 | |||
12億円以上13億円未満 | 13 | |||
11億円以上12億円未満 | 12 | |||
10億円以上11億円未満 | 11 | |||
9億円以上10億円未満 | 10 | |||
8億円以上9億円未満 | 9 | |||
7億円以上8億円未満 | 8 | |||
6億円以上7億円未満 | 7 | |||
5億円以上6億円未満 | 6 | |||
4億円以上5億円未満 | 5 | |||
3億円以上4億円未満 | 4 | |||
2億円以上3億円未満 | 3 | |||
1億円以上2億円未満 | 2 | |||
5,000万円以上1億円未満 | 1 | |||
5,000万円未満 | 0 |
W7:建設機械の保有状況
「W7」の「建設機械の保有状況」は、建設会社が所有またはリースしている建設機械の台数を審査する項目です。建設機械には、以下のものが含まれます。
種類 | 名称 | 範囲 |
---|---|---|
掘削機械 | ショベル系掘削機 | ショベル、バックホウ、ドラグライン、クラムシェル、クレーン又パイルドライバーのアタッチメントを有するもの |
トラクター類 | ブルドーザー | 自重が3トン以上のもの |
トラクターショベル | バケット容量が0.4立方メートル以上のもの | |
整地・締め機械 | モーターグレーダー | 自重が5トン以上のもの |
ダンプ車 | – | 自動車検査証の車体の形状欄に「ダンプ」「ダンプフルトレーラ」「ダンプセミトレーラ」と記載があるもの |
移動式クレーン | – | つり上げ荷重が3トン以上の移動式クレーン |
高所作業車 | – | 作業床の高さが2メートル以上のもの |
締固め用機械 | – | ロードローラー、タイヤローラー、振動ローラー、ハンドガイドローラー |
解体用機械 | – | ブレーカ、」鉄骨切断機、コンクリート圧砕機、解体用つかみ機 |
「W7」の「建設機械の保有状況」は、上記種類の建設機械の所有・リースの台数によって、以下のように点数が加点されます。
建設機械の所有およびリース台数 | 点数 |
---|---|
15台以上 | 15 |
14台 | 15 |
13台 | 14 |
12台 | 14 |
11台 | 13 |
10台 | 13 |
9台 | 12 |
8台 | 12 |
7台 | 11 |
6台 | 10 |
5台 | 9 |
4台 | 8 |
3台 | 7 |
2台 | 6 |
1台 | 5 |
W8:国又は国際標準化機構が定めた規格による認証または登録の状況
「W8」の「国又は国際標準化機構が定めた規格による認証または登録の状況」は、環境省が定めるエコアクション21の認証を受けている場合、(公財)日本適合性認定協会のISO9001またはISO14001を取得している場合に、加点事由になります。
認証または登録の状況 | 点数 |
---|---|
第9001号および第14001号 | 10 |
第9001号およびエコアクション21 | 8 |
第9001号 | 5 |
第14001号 | 5 |
エコアクション21 | 3 |
W評点(その他の審査項目/社会性等)をシミュレーション
それでは、ここまで説明してきたW評点(その他の審査項目/社会性等)の点数を実際にW1~W8の数字を使って、シミュレーションしてみましょう。まずは、以下のW評点のシミュレーションに必要な情報を確認してみてください。
W評点のシミュレーションに必要な情報
W1~W8 | 加入状況など |
---|---|
建設業退職金共済制度 | 加入済み |
退職一時金制度 | 導入済み |
法定外労働災害補償制度 | 加入済み |
総技術職員数 | 29人 |
35歳未満技術職員数 | 5人 |
35歳未満技術職員数のうち、新規に採用した人数 | 2人 |
建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況 | 公共工事のみ実施 |
営業年数 | 54年 |
防災協定の締結 | 締結済み |
2級登録経理試験合格者の数 | 3名(完成工事高は9億) |
建設機械の所有及びリース台数 | 7台 |
ISO9001 | 登録あり |
※雇用保険・健康保険・厚生年金には、加入していることを前提としています。
※上記の表に記載がないものは「無」となります。
「その他の審査項目(社会性等)」の申請書の例
上記の「W評点のシミュレーションに必要な情報」を実際の申請書類に落とし込むと以下のようになります。項番41~項番67が、「その他の審査項目(社会性等)」の入力項目になります。
W評点シミュレーションの解説
それでは、ここまで学んできた「計算式」や「テーブル表」を活用し、実際に点数を出していきましょう。以下の解説を読んでもわからない場合には、随時、該当箇所に戻って、詳細を確認してみてください。
W1:建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組状況
まずは、W1についてです。
建設業退職金共済制度に加入しているので、+15点。 退職一時金制度を導入しているので、+15点。法定外労働災害補償制度にも加入しているので、さらに+15点。ここまでは比較的わかりやすいかと思います。
続いて、この会社には、総技術職員29名に対して35歳未満の技術職員が5人、常勤しています。若年技術職員の割合が17.2%と15%以上ですので、+1点。さらに、総技術職員29名に対して新たに採用した35歳未満の技術職員が2人ですので、総技術職員数に対して新規採用35歳未満の技術職員数の割合が6.8%となり、1%を超えています。そのため、さらに+1点が加算されます。
また、この会社は、「建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置」を公共工事にのみ実施している状況です。そのため、+10点が加算されます。
以上によりW1の点数は、15+15+15+1+1+10=57点であるといえます。
W2:建設業の営業継続の状況
続いて、W2の点数です、
この会社は、営業年数(建設業許可を取得してからの年数)が54年です。そのため、W2の箇所で解説したテーブル表を参考にすると、+60点が加算されることがわかります。
W3:防災活動への貢献の状況
この会社は、防災協定も締結しています。そのため、W3として+20点が加算されます。
W5:建設業の経理の状況
この会社には、2級登録経理士が3名在籍しています。2級登録経理士が3名在籍しているということは、「公認会計士等数値」は3名×0.4=1.2です。この会社の年間平均完成工事高は、9億円ですので、W5の箇所で解説したテーブル表の「1億円以上10億円未満」に該当します。年間平均完成工事高が「1億円以上10億円未満」の場合、「公認会計士等数値」が1.2だと、W5の点数は10点です。
そのため+10点が加点されます。
W7:建設機械の保有状況
この会社は、7台の建設機械の所有(またはリース)しています。そのため、W7は、+11点加点されます。
W8:国又は国際標準化機構が定めた規格による認証又は登録の状況
最後に、この会社は、ISO9001の登録があるため、W8として+5点が加算されます。
W1~W8の合計
以上より、W1~W8を合計すると、「57(W1)+60(W2)+20(W3)+10(W5)+11(W7)+5(W8)」で、163点になります。
W評点シミュレーションの結果
W評点は、W1~W8の合計点数に「10×175÷200」を掛け算することによって算出するので、163×10×175÷200=1,426(少数点以下切り捨て)になります。よって、この会社のW評点は、1,426点です。
W評点のシミュレーションは、うまく行きましたでしょうか?実際には、1つ1つ計算していくというより、シミュレーションソフトを使って、シミュレーションを行います。
実際に経審を受ける前に、点数を予測し対策を立てるためにも、シミュレーションは必須です。このページに書いてあることを理解できれば、W点の対策もばっちりです。ぜひ、みなさんの会社の経審対策にもお役立ていただければ幸いです。