経営事項審査の審査項目の中には、「技術職員数」や「元請完成工事高」といった技術力に関するZ評点というものが存在します。「技術職員数」が多かったり「元請完成工事高」が高かったりすれば、Z評点がアップし、ひいては、経営事項審査の結果である総合評定値P点も良くなるという関係性にあります。
そこでこのページでは、経営事項審査の結果(総合評定値P点)を良くし、より大きい公共工事の落札を目指している人のために、「技術職員数および元請完成工事高」の評点であるZ評点の意味・仕組み・点数アップの方法について、記載していきたいと思います。
「技術職員数および元請完成工事高」(Z)とは
「技術職員数」も「元請完成工事高」も、経営事項審査における審査項目です。いずれも会社の「技術力」を評価するための審査項目に該当します。技術職員数が多い会社、元請完成工事高の高い会社は、いずれも「技術力の高い会社」として、経営事項審査で、高く評価されます。
公共工事において、より金額が大きく、より複雑で、より工期の長い工事の入札に参加する場合、その会社の「経営規模(X1、X2)」「社会性(W)」「経営状況(Y)」はもちろんのこと「技術力(Z)」が高くなければ、安全で確実に工事を施工することが難しくなります。そこで、経営事項審査では、X1、X2、W、Yとともに「Z」として「技術職員数および完成工事高」を数値化し、その会社の「技術力」を評価するようにしているのです。
審査区分 | 記号 | 審査項目 |
---|---|---|
経営規模 |
X1 | 業種別完成工事高 |
X2 | 自己資本額/利払前税引前償却前利益の額 | |
技術力 | Z | 技術職員数/元請完成工事高 |
社会性など | W | 建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組状況など |
経営状況 | Y | 負債抵抗力/収益性・効率性/財務健全性/絶対的力量 |
なお、経営事項審査の結果である総合評定値P点は、下記の計算式で求められます。P点におけるZ評点の割合は25%ということになります。「業種別完成工事高」の評点であるX1と同じく高い割合で評価されますので、P点を上げたいという場合には、真っ先に対策に取り組むべき審査項目であるということができます。
総合評定値(P点) | 0.25(X1)+0.15(X2)+0.20(Y)+0.25(Z)+0.15(W) |
---|
Z評点は、「技術職員の数(Z1)」と「元請完成工事高(Z2)」からなりますので、以下では、「技術職員の数(Z1)」と「元請完成工事高(Z2)」に分けて、説明をしていきます。
「技術職員の数」(Z1)についての解説
「技術職員の数が多い方が、その会社の技術力が高く、技術力が高ければ経営事項審査の結果であるP点も良くなる」という点については、誰もが理解できるかと思います。一方で、「技術職員の数」が、どのように審査され、評価されているのか?について、仕組みを詳しく理解できている人は少ないと思います。
そこで、以下では「技術職員の数」が、経営事項審査で、どのように評価されているのか?について詳しく解説していきたいと思います。
技術職員数値の算出
「技術職員の数」(Z1)を算出するには、まず最初に、技術職員数値の算出から始めます。技術職員数値は、以下の計算式によって求めることができます。
- 1級監理受講者数×6+1級技術者数×5+監理技術者補佐×4+基幹技能者数×3+2級技術者数×2+その他技術者数×1
1級監理技術者、1級技術者、監理技術者補佐、基幹技能者等、2級技術者、その他技術者の内容と具体例は、それぞれ以下のようになっています。
1級監理技術者(6点) | ||
---|---|---|
(内容)技術者を対象とする国家資格の1級又は技術士法に基づく資格を有し、かつ監理技術者資格者証の交付を受けているもの | (具体例)1級建設機械施工技士/1級土木施工管理技士/1級建築士/建設・総合技術管理技術士など |
1級技術者(5点) | ||
---|---|---|
(内容)技術者を対象とする国家資格の1級を有する者(上記を除く)、技術士法に基づく資格を有する者(上記を除く) | (具体例)1級建設機械施工技士/1級土木施工管理技士/1級建築士/建設・総合技術管理技術士など |
監理技術者補佐(4点) | ||
---|---|---|
(内容)監理技術者を補佐する資格を有する者 | (具体例)1級建設機械施工技士補/1級土木施工管理技士補など |
基幹技能者等(3点) | ||
---|---|---|
(内容)登録基幹技能者講習の修了者、能力評価基準によりレベル4と判定された者 | (具体例)登録電気工事基幹技能者など |
2級技術者(2点) | ||
---|---|---|
(内容)技術者を対象とする国家資格の2級を有する者、技能者を対象とする国家資格の1級を有する者など | (具体例)2級建設機械施工技士、2級土木施工管理技士、2級建築士、木造建築士、第1種電気工事士、1級左官技能士、登録基礎ぐい工事試験の合格者など |
その他技術者(1点) | ||
---|---|---|
(内容)技能者を対象とする国家資格の2級+実務経験を有する者、実務経験による主任技術者 | (具体例)第2種電気工事士+実務3年、電気主任技術者+実務5年、給水措置工事主任技術者+実務1年、2級左官技能士+実務3年、指定学科卒業後3年または5年の実務経験を積んだ主任技術者、実務経験10年の主任技術者 |
技術職員数値の具体例
それでは、技術職員数値の算出の仕方が分かったところで、具体例を使って、技術職員数値を見ていくことにしましょう。
A社の場合
A社の土木工事の技術職員の構成は以下の通りです。
- 1級監理技術者=21人
- 1級技術者=2人
- 2級技術者=44人
- その他技術者=22人
弊所に申請手続きをご依頼頂いているお客さまのうち、全国に営業所がある規模の大きい大臣許可業者の例です。この場合、技術職員数値はいくつになるでしょうか?それぞれ、人数に点数を掛け合わせると、246になります。この246が、Z1を算出する際の、技術職員数値になります。
6点×21人+5点×2人+2点×44人+1点×22人=246
B社の場合
B社の建築工事の技術職員の構成は以下の通りです。
- 1級監理技術者=9名
- 1級技術者=2名
- 2級技術者=1名
- その他技術者=17名
弊所のお客さまのうち、東京都の公共工事を積極的に落札している業歴の長い東京都知事許可業者の例です。この場合、技術職員数値は、83になります。
6点×9人+5点×2人+2点×1人+1点×17人=83
C社の場合
C社の電気工事の技術職員の構成は以下の通りです。
- 1級監理技術者=1名
- 2級技術者=6名
- その他技術者=1名
弊所のお客様の中でも、比較的業歴が浅いものの、区の電気工事の公共工事を頻繁に落札されている東京都知事許可業者の例です。この場合、技術職員数値は、19になります。
6点×1人+2点×6人+1点×1人=19
技術職員数値を使ったZ1の算出方法
気を付けたいのは、上記で算出した技術職員数値が、そのままZ1の点数になるわけではない、という点です。Z評点は「技術職員数および元請完成工事高」からなります。そのうち「技術職員数」はZ1、「元請完成工事高」がZ2になるわけですが、Z1の点数は、上記で算出した技術職員数値を下記のテーブル表にあてはめて算出します。
Z1を算出するためのテーブル表
Z1を算出するためのテーブル表は以下の通りになります。
技術職員数値 | 点 数 | |
---|---|---|
15,500以上 | 2335 | |
11,930以上15,500未満 | 62×(技術職員数値)÷3,570+2,065 | |
9,180以上11,930未満 | 63×(技術職員数値)÷2,750+1,998 | |
7,060以上9,180未満 | 62×(技術職員数値)÷2,120+1,939 | |
5,430以上7,060未満 | 62×(技術職員数値)÷1,630+1,876 | |
4,180以上5,430未満 | 63×(技術職員数値)÷1,250+1,808 | |
3,210以上4,180未満 | 63×(技術職員数値)÷970+1,747 | |
2,470以上3,210未満 | 62×(技術職員数値)÷740+1,686 | |
1,900以上2,470未満 | 62×(技術職員数値)÷570+1,624 | |
1,460以上1,900未満 | 63×(技術職員数値)÷440+1,558 | |
1,130以上1,460未満 | 63×(技術職員数値)÷330+1,488 | |
870以上1,130未満 | 62×(技術職員数値)÷260+1,434 | |
670以上870未満 | 63×(技術職員数値)÷200+1,367 | |
510以上670未満 | 62×(技術職員数値)÷160+1,318 | |
390以上510未満 | 63×(技術職員数値)÷120+1,247 | |
300以上390未満 | 62×(技術職員数値)÷90+1,183 | |
230以上300未満 | 63×(技術職員数値)÷70+1,119 | |
180以上230未満 | 62×(技術職員数値)÷50+1,040 | |
140以上180未満 | 62×(技術職員数値)÷40+984 | |
110以上140未満 | 63×(技術職員数値)÷30+907 | |
85以上110未満 | 63×(技術職員数値)÷25+860 | |
65以上85未満 | 62×(技術職員数値)÷20+810 | |
50以上65未満 | 62×(技術職員数値)÷15+742 | |
40以上50未満 | 63×(技術職員数値)÷10+633 | |
30以上40未満 | 63×(技術職員数値)÷10+633 | |
20以上30未満 | 62×(技術職員数値)÷10+636 | |
15以上20未満 | 63×(技術職員数値)÷5+508 | |
10以上15未満 | 62×(技術職員数値)÷5+511 | |
5以上10未満 | 63×(技術職員数値)÷5+509 | |
5未満 | 62×(技術職員数値)÷5+510 |
技術職員数値をあてはめて算出したZ1
それでは、前述のA社、B社、C社のそれぞれの技術職員数値を使って、3社のZ1を算出してみましょう。
A社のZ1
まず、A社のZ1についてです。A社の土木工事の技術職員数値は「246」でした。この246は、「230以上300未満」に該当しますので「63×(技術職員数値)÷70+1,119」の計算式に「246」をあてはめます。
そうすると、A社のZ1評点は、「63×246÷70+1,119」で「1340点」になります。
B社のZ1
続いて、B社のZ1についてです。B社の建築工事の技術職員数値は「83」でした。この83という数字は、「65以上85未満」に該当しますので「62×(技術職員数値)÷20+810」の計算式に「83」をあてはめます。
そうすると、B社のZ1評点は、「62×83÷20+810」で「1067点」になります。
C社のZ1
最後に、C社のZ1についてです。C社の電気工事の技術職員数値は「19」でした。この19という数字は、「15以上20未満」に該当しますので「63×(技術職員数値)÷5+508」の計算式に「19」をあてはめます。
そうすると、C社のZ1評点は、「63×19÷5+508」で「747点」になります。
以上が、Z評点のうち「技術職員の数(Z1)」のを算出する方法・仕組みの解説です。
「元請完成工事高」(Z2)についての解説
経営事項審査の評価項目となる「技術力」は、いままで説明してきた「技術職員数」だけでなく「元請完成工事高」も加味して評価されます。技術職員数(Z1)は、技術職員の人数から技術職員数値を計算し、その技術職員数値をテーブル表の計算式にあてはめて、算出しました。
それでは、元請完成工事高の点数(Z2)は、どのようにして算出されるのでしょうか?
元請完成工事高の点数(Z2)の算出
元請完成工事高の点数であるZ2は、下記のテーブル表に「年間平均元請完成工事高」の数字をあてはめて、算出することになります。X1(工事種類別年間平均完成工事高)と同じ説明になりますが、ここでは、甲社の場合、乙社の場合の2つの会社の場合を想定して、Z2の点数を算出してみましょう。
甲社の土木工事のZ2
前々審査対象事業年度 | 前審査対象事業年度 | 審査対象事業年度 |
---|---|---|
30,000千円 | 50,000千円 | 40,000千円 |
甲社の土木工事の元請完成工事高は、それぞれ前々審査対象事業年度が30,000千円、前審査対象事業年度が50,000千円、審査対象事業年度が40,000千円です。3か年の土木工事の「平均完成元請工事高」は、40,000千円になります((30,000千円+50,000千円+40,000千円)÷3年)。
この場合、40,000千円は、下記テーブル表の4,000万円以上5,000万円未満に該当するので、「27×(年間平均元請完成工事高)÷10,000+610」という計算式に40,000千円をあてはめて計算します。
- 27×40,000÷10,000+610=718点
そうすると、甲社の土木工事のZ2の点数は、718点であることが分かります。
建設工事の種類別年間平均元請完成工事高 | 点 数 | |
---|---|---|
以上省略 | 以上省略 | |
6,000万円以上8,000万円未満 | 36×(年間平均元請完成工事高)÷20,000+659 | |
5,000万円以上6,000万円未満 | 22×(年間平均元請完成工事高)÷10,000+635 | |
4,000万円以上5,000万円未満 | 27×(年間平均元請完成工事高)÷10,000+610 | |
3,000万円以上4,000万円未満 | 31×(年間平均元請完成工事高)÷10,000+594 | |
以下省略 | 以下省略 |
乙社の建築工事のZ2
それでは、甲社に続いて、乙社のZ2の点数も見ていくことにしましょう。乙社の建築工事の元請完成工事高は、それぞれ前々審査対象事業年度が100,000千円、前審査対象事業年度が100,000千円、審査対象事業年度が130,000千円だったと仮定します。この場合、3か年の建築工事の「平均完成元請工事高」は、110,000千円になります((100,000千円+100,000千円+130,000千円)÷3年)。
前々審査対象事業年度 | 前審査対象事業年度 | 審査対象事業年度 |
---|---|---|
100,000千円 | 100,000千円 | 130,000千円 |
110,000千円は、下記テーブル表の1億円以上1億2000万円未満に該当するので、「26×(年間平均元請完成工事高)÷20,000+702」の計算式に110,000という数字をあてはめて、Z2を算出します。
- 26×110,000÷20,000+702=845
上記の通り乙社の建築工事のZ2の点数は845点ということになります。
建設工事の種類別年間平均元請完成工事高 | 点 数 | |
---|---|---|
上記省略 | 上記省略 | |
1億2,000万円以上1億5,000万円未満 | 32×(年間平均元請完成工事高)÷30,000+730 | |
1億円以上1億2,000万円未満 | 26×(年間平均元請完成工事高)÷20,000+702 | |
8,000万円以上1億円未満 | 29×(年間平均元請完成工事高)÷20,000+687 | |
以下省略 | 以下省略 |
元請完成工事高の点数(Z2)を算出するためのテーブル表
なお、上記の例で示した甲社、乙社のテーブル表は、全体のうちの一部を見やすいように切り取ったものです。Z2を算出するためのテーブル表の全体像(1,000万円未満~1,000億円以上)は、以下の通りです。
建設工事の種類別年間平均元請完成工事高 | 点 数 | |
---|---|---|
1,000億円以上 | 2,865 | |
800億円以上1,000億円未満 | 119×(年間平均元請完成工事高)÷20,000,000+2,270 | |
600億円以上800億円未満 | 145×(年間平均元請完成工事高)÷20,000,000+2,166 | |
500億円以上600億円未満 | 87×(年間平均元請完成工事高)÷10,000,000+2,079 | |
400億円以上500億円未満 | 104×(年間平均元請完成工事高)÷10,000,000+1,994 | |
300億円以上400億円未満 | 126×(年間平均元請完成工事高)÷10,000,000+1,906 | |
250億円以上300億円未満 | 76×(年間平均元請完成工事高)÷5,000,000+1,828 | |
200億円以上250億円未満 | 90×(年間平均元請完成工事高)÷5,000,000+1,758 | |
150億円以上200億円未満 | 110×(年間平均元請完成工事高)÷5,000,000+1,678 | |
120億円以上150億円未満 | 81×(年間平均元請完成工事高)÷3,000,000+1,603 | |
100億円以上120億円未満 | 63×(年間平均元請完成工事高)÷2,000,000+1,549 | |
80億円以上100億円未満 | 75×(年間平均元請完成工事高)÷2,000,000+1,489 | |
60億円以上80億円未満 | 92×(年間平均元請完成工事高)÷2,000,000+1,421 | |
50億円以上60億円未満 | 55×(年間平均元請完成工事高)÷1,000,000+1,367 | |
40億円以上50億円未満 | 66×(年間平均元請完成工事高)÷1,000,000+1,312 | |
30億円以上40億円未満 | 79×(年間平均元請完成工事高)÷1,000,000+1,260 | |
25億円以上30億円未満 | 48×(年間平均元請完成工事高)÷500,000+1,209 | |
20億円以上25億円未満 | 57×(年間平均元請完成工事高)÷500,000+1,164 | |
15億円以上20億円未満 | 70×(年間平均元請完成工事高)÷500,000+1,112 | |
12億円以上15億円未満 | 50×(年間平均元請完成工事高)÷300,000+1,072 | |
10億円以上12億円未満 | 41×(年間平均元請完成工事高)÷200,000+1,026 | |
8億円以上10億円未満 | 47×(年間平均元請完成工事高)÷200,000+996 | |
6億円以上8億円未満 | 57×(年間平均元請完成工事高)÷200,000+956 | |
5億円以上6億円未満 | 36×(年間平均元請完成工事高)÷100,000+911 | |
4億円以上5億円未満 | 40×(年間平均元請完成工事高)÷100,000+891 | |
3億円以上4億円未満 | 51×(年間平均元請完成工事高)÷100,000+847 | |
2億5,000万円以上3億円未満 | 30×(年間平均元請完成工事高)÷50,000+820 | |
2億円以上2億5,000万円未満 | 35×(年間平均元請完成工事高)÷50,000+795 | |
1億5,000万円以上2億円未満 | 45×(年間平均元請完成工事高)÷50,000+755 | |
1億2,000万円以上1億5,000万円未満 | 32×(年間平均元請完成工事高)÷30,000+730 | |
1億円以上1億2,000万円未満 | 26×(年間平均元請完成工事高)÷20,000+702 | |
8,000万円以上1億円未満 | 29×(年間平均元請完成工事高)÷20,000+687 | |
6,000万円以上8,000万円未満 | 36×(年間平均元請完成工事高)÷20,000+659 | |
5,000万円以上6,000万円未満 | 22×(年間平均元請完成工事高)÷10,000+635 | |
4,000万円以上5,000万円未満 | 27×(年間平均元請完成工事高)÷10,000+610 | |
3,000万円以上4,000万円未満 | 31×(年間平均元請完成工事高)÷10,000+594 | |
2,500万円以上3,000万円未満 | 19×(年間平均元請完成工事高)÷5,000+573 | |
2,000万円以上2,500万円未満 | 23×(年間平均元請完成工事高)÷5,000+553 | |
1,500万円以上2,000万円未満 | 28×(年間平均元請完成工事高)÷5,000+533 | |
1,200万円以上1,500万円未満 | 19×(年間平均元請完成工事高)÷3,000+522 | |
1,000万円以上1,200万円未満 | 16×(年間平均元請完成工事高)÷2,000+502 | |
1,000万円未満 | 341×(年間平均元請完成工事高)÷10,000+241 |
元請完成工事高の点数(Z2)の折れ線グラフ
下記の折れ線グラフは、年間平均元請完成工事高が10,000千円~1,000,000千円までのZ2の点数を折れ線グラフにしたものです。縦軸がZ2の点数、横軸が年間平均元請完成工事高(千円)となっています。
下記の折れ線グラフは、年間平均元請完成工事高が10,000千円~100,000千円までのZ2の点数を折れ線グラフにしたものです。縦軸がZ2の点数、横軸が年間平均元請完成工事高(千円)となっています。
元請完成工事高の点数(Z2)の表
下記の表は、元請完成工事高の点数(10,000千円~1,000,000千円)を表にしたものです。例えば、元請完成工事高が12,000千円の場合のZ2は598点、元請完成工事高が250,000千円の場合のZ2は970点ということが、ひと目で見て取れます。
元請完成工事高 | Z2評点 | 元請完成工事高 | Z2評点 | 元請完成工事高 | Z2評点 |
---|---|---|---|---|---|
1,000,000 | 1,231 | 200,000 | 935 | 40,000 | 718 |
800,000 | 1,184 | 150,000 | 890 | 30,000 | 687 |
600,000 | 1,127 | 120,000 | 858 | 25,000 | 668 |
500,000 | 1,091 | 100,000 | 832 | 20,000 | 645 |
400,000 | 1,051 | 80,000 | 803 | 15,000 | 617 |
300,000 | 1,000 | 60,000 | 767 | 12,000 | 598 |
250,000 | 970 | 50,000 | 745 | 10,000 | 582 |
以上が、Z評点のうち「元請完成工事高(Z2)」のを算出する方法・仕組みの解説です。
「技術職員数および元請完成工事高」(Z評点)のシミュレーション
ここまで見てきたように、経営事項審査の結果(総合評定値P点)の審査項目である「技術力:Z」は、「技術職員数」および「元請完成工事高」からなります。「技術職員数」を表すZ1の点数と「元請完成工事高」を表すZ2の点数の両方からZ評点を算出します。
Z評点を算出する際の、計算式は以下の通りです。
- Z評点=技術職員の数の点数(Z1)×0.8+元請完成工事高の点数(Z2)×0.2
それでは、ここまで記載してきた知識をフル活用して、実際にZ評点についてシミュレーションをしていきたいと思います。
Z評点をシミュレーションするために必要な情報
Z点を算出するために必要な会社の情報は、以下の通りです。
技術者の保有資格と人数
保有資格 | 技術者人数 |
---|---|
1級建築施工管理技士(講習受講あり) | 4名 |
1級建築施工管理技士(講習受講なし) | 1名 |
2級建築施工管理技士(種別:建築) | 2名 |
10年以上の実務経験 | 10名 |
合計 | 17名 |
2年間の元請完成工事高
決算期 | 審査対象事業年度 | 前審査対象事業年度 |
---|---|---|
元請完成工事高 | 110,000千円 | 120,000千円 |
Z1(技術職員の数)の点数について
まずは、Z1(技術職員数)の点数から見ていきます。
Z1の点数を算出するには、技術職員数値の算出が必要でした。上記の例でいうと、1級(講習受講あり)4名、1級(講習受講なし)1名、2級2名、その他10名、ということですから、技術職員数値は43点になります。
- 6点×4名+5点×1名+2点×2名+1点×10名=43点
この43点という点数をZ1を算出するためのテーブル表にあてはまると
- 63×43÷10+633=903点(※少数点以下切り捨て)
となります。この903点がZ1の点数になります。
Z2(元請完成工事高)の点数について
続いて、Z2(元請完成工事高)の点数を見ていきます。
この会社が2年平均を採用した場合、年間元請完成工事高は、115,000千円になります。
- (110,000+120,000)÷2=115,000千円
この115,000千円をテーブル表にあてはめると
- 26×115,000÷20,000+702=851点(※少数点以下切り捨て)
となります。この851点がZ2の点数になります。
Z評点のシミュレーション結果
Zの評点は「技術職員の数の点数(Z1)×0.8+元請完成工事高の点数(Z2)×0.2」という計算式で求めることができるわけですから
- 903×0.8+851×0.2=892点(※少数点以下切り捨て)
となり、この892点が、Z評点ということになります。
Z評点をアップするためのポイント
Z評点(=技術職員数および元請完成工事高)は、経営事項審査の結果であるP点(総合評定値)を算出する際の審査項目のうち、25%のウェイトを占める大変重要な項目です。そのため、Z評点が上がればP点も上がる一方で、Z評点が低いと、他社と比べて相対的にP点も低い結果になってしまいます。
それでは、Z評点をアップするためには、どういった対策が必要になるのでしょうか?このページの最後に、これから経審を受けようと考えている人のために、Z評点について注意すべきことを記載させて頂きます。
資格者の採用・育成
ここまで解説してきたように、Z評点は「技術職員数」と「元請完成工事高」からなります。そのため、Z評点を手っ取り早く上げるには、技術職員の数を増やす、つまり、資格者を採用したり、育成したりすることが挙げられます。ただし、経営事項審査の際には、技術職員の審査項目で注意しなければならない点がいくつかあります。
常勤職員であること
これは、当たり前と言えば当たり前ですが、経営事項審査で「技術職員数」にカウントしてもらうためには、申請会社に常勤している職員でなければなりません。「他の会社に常勤している=申請会社に常勤していない職員」を、経営事項審査の際の「技術職員名簿」に掲載することはできません(なお、出向社員については、技術職員名簿に掲載することは可能です)。
審査基準日時点で採用後6か月を超えていること
経営事項審査を受けるにあたって、Zの評点をよくするために、慌てて技術者を採用しようとする社長もいるかもしれません。しかし、「経審の時だけ、点数を上げるために技術者を採用する」というような対策で、実際に経審の評価が上がってしまうのはよくありません。経営事項審査は、客観的かつ公正に行われるべきですので、小手先のテクニックや対策で点数が上下するのは、好ましくないからです。
そのため、経営事項審査の際に技術職員名簿に掲載することができる技術職員は、「審査基準日時点で、採用後6か月を超えて」いなければなりません。少し難しいので、具体的に説明をしていきます。
例えば、3月末決算の会社があったとします。3月末決算の会社の「審査基準日」は3月31日です。その3月31日の時点で、採用後6か月を超えている技術職員のみ技術職員名簿に掲載することができます。この会社に、前年の10月1日に採用した「1級資格者」がいたとします。しかし、「10月1日に採用した」ということは、翌3月31日時点(決算時点)で6か月を超えていません。そのため、今回の経営事項審査では、この「1級資格者」を技術職員名簿に掲載することができないのです。
仮に、この「1級資格者」の採用が、前年の9月30日だった場合。翌3月31日には、6か月を超えているということができるので、今回の経営事項審査の技術職員名簿に掲載することができます。
このように、技術職員名簿に掲載することができるのは、常勤しているだけでなく、審査基準日時点で採用後6か月を超えていなければならない点に注意が必要です。
もちろん、審査基準日が過ぎてからの採用では遅すぎます。例えば、上記の3月末決算の会社が、4月1日に資格者を採用した場合。経営事項審査を受けるのが、これからであったとしても、「3月末の時点で、採用後6か月を超えている」とは言えないので、今回の経審で技術職員名簿に掲載することはできません。
元請の完成工事高を多くする
Z評点は「技術職員数」と「元請完成工事高」からなるため、Z評点を上げたいのであれば、「技術職員数」の対策だけでなく「元請完成工事高」の対策も必要になります。
民間工事を元請として受注しよう
経営事項審査では、工事種類別の年間平均完成工事高がX1評点(経営規模)として評価の対象になりますが、年間平均完成工事高のうちの年間平均元請完成工事高がZ(技術力)として評価の対象になります。
そのため、技術力(Z)の評点を上げるには、少しでも、元請完成工事高があった方が有利になります。公共工事は、発注者である公共機関から元請として工事を請負います。役所との打ち合わせ、近隣住民への配慮、工期のスケジュール管理、下請業者の管理など、元請会社として、さまざまな能力を必要とされます。
元請としての実績がたくさんある(=元請完成工事高が高い)ほうが、Z2の点数が上がり、ひいてはZ評点のアップにつながりますので、元請工事の受注の経験がない、元請としての工事高が少ないという会社は、ぜひ、民間工事を元請として受注できるように体制を整えておくとよいでしょう。
2年平均か、3年平均か、有利な方法を選択しよう
その上で、元請完成工事高を2年平均とするのか?3年平均とするのか?についても、検討が必要です。X1の工事種類別年間平均完成工事高と同様に、Z2の元請完成工事高について2年平均か3年平均かを選択することができます。元請完成工事高は、できるだけ高い方が経審にとって有利です。
X1(工事種類別年間平均完成工事高)と合わせる必要がありますが、元請完成工事高(Z2)についても、より工事高が大きくなるように2年平均か3年平均かを選択して経審を受審するようにしましょう。