経営事項審査でよい点数を取ると、より規模の大きい公共工事の入札に参加できるチャンスが広がります。経営事項審査では、「業種別の完成工事高」「業種別の元請完成工事高」「技術職員の人数」「建退協への加入」「法定外労災への加入」など、さまざまな項目が審査の対象になりますが、このページでは、その中でも、建設会社のみなさんが特に興味を示す「工事種類別年間平均完成工事高(X1評点)」について、詳しく解説をしていきたいと思います。
審査区分 | 記号 | 審査項目 |
---|---|---|
経営規模 |
X1 | 業種別完成工事高 |
X2 | 自己資本額/利払前税引前償却前利益の額 | |
技術力 | Z | 技術職員数/元請完成工事高 |
社会性など | W | 建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組状況など |
経営状況 | Y | 負債抵抗力/収益性・効率性/財務健全性/絶対的力量 |
上記の表は、行政が発行している手引きにも掲載されている表で、経営事項審査の審査対象となる4つの「審査区分」、5つの「記号」、そのなかのさまざまな「審査項目」を表したものです。経営事項審査で審査の対象となるのは「経営規模(X1・X2)」「技術力(Z)」「社会性など(W)」「経営状況(Y)」で、このページで解説るすのは「経営規模」の中の、X1についてです。
工事種類別年間平均完成工事高(X1)とは
経営事項審査の際に審査の対象となる「工事種類別年間平均完成工事高(X1)」とは、どういったものを言うのでしょうか?まずは、言葉の中身(定義)から、解説していきます。
経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書の中のX1
下の画像は、経営事項審査の結果通知書である「経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書」のサンプルです。経営事項審査が完了すると、都庁から郵送されてきます。そのうち、「工事種類別年間平均完成工事高(X1)」は、赤い四角の中に表示されます。
総合評定値(P点)を構成するX1の比率
経営事項審査の結果である総合評定値(P点)は、以下のような計算式によって算出されます。
総合評定値(P点) | 0.25(X1)+0.15(X2)+0.20(Y)+0.25(Z)+0.15(W) |
---|
この計算式の一番はじめに出てくる「0.25(X1)」が、このページで解説する「工事種類別年間平均完成工事高」のことです。経営事項審査では、数ある審査項目のうち「工事の種類ごと」の「年間平均完成工事高」を1つの審査項目として、「工事の種類ごと」の「年間平均完成工事高」の額が大きい会社ほど、P点の点数が高くなるように設計されています。
この点については、「工事の売上高が大きい方が、結果が良くなる」「完成工事高は高ければ高い方がよい」といったように漠然と理解している人も多いかもしれません。しかし、実際に、どういった基準でP点やX1評点が算出されているかを細かく理解している人は少ないようです。
そこで、以下では、具体的な数字を使って、工事種類別年間平均完成工事高(X1)を見ていきたいと思います。
工事種類別年間平均完成工事高(X1)の具体例
A社のX1評点
- 経営事項審査を受ける業種=建築工事
- 審査対象事業年度の建築工事の完成工事高=2億7000万円
- 前審査対象事業年度の建築工事の完成工事高=2億5000万円
上記のようなA社が建築工事の経営事項審査を受ける際にX1の評点は何点になるでしょう?X1の評点は、下記のテーブル表をもとに算出します。
建設工事の種類別年間平均完成工事高 | 評 点 | |
---|---|---|
以上省略 | 以上省略 | |
3億円以上4億円未満 | 42×(年間平均完成工事高)÷100,000+716 | |
2億5,000万円以上3億円未満 | 24×(年間平均完成工事高)÷50,000+698 | |
2億円以上2億5,000万円未満 | 28×(年間平均完成工事高)÷50,000+678 | |
以下省略 | 以下省略 |
A社が経審を受ける業種は「建築工事」です。そして、A社の建築工事の年間平均完成工事高は、「(2億7000万円+2億5000万円)÷2年」で「2億6000万円」になります。
「2億6000万円」は、上記のテーブル表の「2億5,000万円以上3億円未満」に該当しますので、「24×(年間平均完成工事高)÷50,000+698」の計算式に数字をあてはめることになります。
そうすると、「24×(260,000÷50,000)+698」の答えである「822点(少数点以下切り捨て)」が、X1の点数になります。
B社のX1評点
- 経営事項審査を受ける業種=電気工事
- 審査対象事業年度の建築工事の完成工事高=7000万円
- 前審査対象事業年度の建築工事の完成工事高=9000万円
それでは、A社に続いて、B社の場合のX1評点は何点になるでしょうか?
建設工事の種類別年間平均完成工事高 | 評 点 | |
---|---|---|
以上省略 | 以上省略 | |
1億2,000万円以上1億5,000万円未満 | 26×(年間平均完成工事高)÷30,000+626 | |
1億円以上1億2,000万円未満 | 19×(年間平均完成工事高)÷20,000+616 | |
8,000万円以上1億円未満 | 22×(年間平均完成工事高)÷20,000+601 | |
以下省略 | 以下省略 |
B社の電気工事の年間平均完成工事高は「(7000万円+9000万円)÷2年」で「8000万円」になります。「8000万円」は上記テーブル表の「8,000万円以上1億円未満」に該当しますので、「22×(年間平均完成工事高)÷20,000+601」の計算式にあてはめることになります。
そうすると、「22×80,000÷20,000+601」の答えである「689点」が、X1の点数になります。
X1評点の算出方法
上記のA社・B社の具体例を使ってみたように、工事種類別年間平均完成工事高に関するX1評点は、テーブル表にある計算式にあてはめて算出します。
工事種類別年間平均完成工事高の「2年平均」か「3年平均」の選択
ここまで説明してきた「工事種類別年間平均完成工事高(X1)」ですが、経営事項審査の際には、完成工事高を「2年平均で選択するか」「3年平均で選択するか」を選ぶことができます。完成工事高は、高ければ高い方が、経審の結果に有利に働くのですから、「2年平均」よりも「3年平均」の方が高いのであれば「3年平均」を選択すべきですし、「3年平均」よりも「2年平均」の方が高いのであれば「2年平均」を選択するべきなのです。
なお、申請する業種ごとに「2年平均」「3年平均」をバラバラに申請することはできません。例えば、「とび工事」と「内装工事」と「建築工事」の3つの業種で経審を受ける場合。その3つの全てを「2年平均」にするのか?それとも「3年平均」にするのか?という選択の仕方をすることはできますが、「とび工事」と「内装工事」は「2年平均」を選択し、残りの「建築工事」は「3年平均」を選択するといったような、申請の仕方をすることができません。
C社のX1評点
具体的にC社の場合を見ていくことにしましょう。C社の道路舗装工事の過去3年間の完成工事高が以下のようなものだったとします。
前々審査対象事業年度 | 1億2000万円 |
---|---|
前審査対象事業年度 | 1億円 |
審査対象事業年度 | 8000万円 |
ご覧の通り、残念ながら年を追うごとに、完成工事高が「1億2000万円→1億円→8000万円」と下がってきてしまっています。この場合、特に何も考えずに、「工事種類別年間平均完成工事高(X1)」について、「2年平均」を採用していたらどうなるでしょう?
建設工事の種類別年間平均完成工事高 | 評 点 | |
---|---|---|
以上省略 | 以上省略 | |
1億円以上1億2,000万円未満 | 19×(年間平均完成工事高)÷20,000+616 | |
8,000万円以上1億円未満 | 22×(年間平均完成工事高)÷20,000+601 | |
以下省略 | 以下省略 |
2年平均を採用した場合
2年平均を採用した場合の道路舗装工事の年間平均完成工事高は「審査対象事業年度」と「前審査対象事業年度」の平均、すなわち「(1億円+8000万円)÷2年」で「9000万円」になります。「9000万円」は上記テーブル表の「8,000万円以上1億円未満」に該当しますので、「22×(年間平均完成工事高)÷20,000+601」の計算式にあてはめることになります。
そうすると、「22×90,000÷20,000+601」の答えである「700点」が、X1の点数になります。
3年平均を採用した場合
それでは、3年平均を採用した場合は、どうなるでしょうか?C社が3年平均を採用した場合の道路舗装工事の年間平均完成工事高は、「審査対象事業年度」と「前審査対象事業年度」と「前々審査対象事業年度」の平均、すなわち「(1億2000万円+1億円+8000万円)÷3年」で「1億円」になります。「1億円」は上記テーブル表の「1億円以上1億2000万円未満」に該当しますので、「19×(年間平均完成工事高)÷20,000+616」の計算式にあてはめることになります。
そうすると、「19×100,000÷20,000+616」の答えである「711点」が、X1の点数になります。
「2年平均」と「3年平均」の比較
上記のように、C社の過去3年間の道路舗装工事の完成工事高を見ると、2年平均を採用した場合のX1が700点、3年平均を採用した場合のX1が711点となります。他の数字を何もいじらずに、ただ、完成工事高について2年平均を採用するか?3年平均を採用するか?でこれだけ点数に開きがあるということになります。
もちろん、会社の状況によって、2年平均が良い場合もあれば、3年平均が良い場合もあるでしょう。また、入札参加資格のランクとの兼ね合いで、あえて、低い方の平均を採用する場合もあるでしょう。
しかし、何も考えずに
- 今まで2年平均で出していたから今年も2年平均を採用する
- 2年平均か、3年平均を選べることを知らなかったので、ずっと、3年平均を採用していた
となると、X1評点、ひいては、経営事項審査の結果である総合評定値P点を、思わぬかたちで損をしているかもしれません。
工事種類別年間平均完成工事高が2倍になった時のX1評点およびP点への影響
ここまでお読みいただいた方の中には、工事種類別年間平均完成工事高の評点であるX1および経営事項審査の結果である総合評定値P点を上げるためには、単純に「完成工事高を増やせばよい」と考えている人もいるかもしれません。たしかに、「工事種類別の年間平均完成工事高」が高ければ高いほどX1およびP点の点数はよくなります。
しかし、完成工事高が2倍になったからと言って、X1の評点やP点が2倍になるわけではありません。以下、具体的に見ていきます。
建設工事の種類別年間平均完成工事高 | 評 点 | |
---|---|---|
以上省略 | 以上省略 | |
4億円以上5億円未満 | 34×(年間平均完成工事高)÷100,000+748 | |
3億円以上4億円未満 | 42×(年間平均完成工事高)÷100,000+716 | |
2億5,000万円以上3億円未満 | 24×(年間平均完成工事高)÷50,000+698 | |
2億円以上2億5,000万円未満 | 28×(年間平均完成工事高)÷50,000+678 | |
以下省略 | 以下省略 |
管工事の平均完成工事高が2億円の場合のX1評点
まずは、管工事の経審を受けるD社のケースを想定します。D社の管工事の平均完成工事高が2億円であった場合。
「2億円」は上記テーブル表の「2億円以上2億5000万円未満」に該当しますので、「28×(年間平均完成工事高)÷50,000+678」の計算式にあてはめることになります。
そうすると、「28×200,000÷50,000+678」の答えである「790点」が、X1の点数になります。
管工事の平均完成工事高が4億円の場合のX1評点
それでは、仮に、D社の管工事の平均完成工事高が2倍の4億円になった場合、X1の評点はどうなるでしょうか?
「4億円」は上記テーブル表の「4億円以上5億円未満」に該当しますので、「34×(年間平均完成工事高)÷100,000+748」の計算式にあてはめることになります。
そうすると、「34×400,000÷100,000+748」の答えである「884点」が、X1の点数になります。
P点への影響
この場合のD社のように、仮に管工事の年間平均完成工事高が2億円から4億円になったとしても、X1評点が2倍になるわけではありません。X1評点は、790点から884点というように、90点以上アップしましたが、「完成工事高に比例して倍々で増えていく」というわけでなはない点に注意が必要です。
また、経営事項審査の最終結果であるP点は、X1評点に0.25を掛け算して算出されます。そのため、X1評点に×0.25をして、P点に換算すると
- 790×0.25=197.5点
- 884×0.25=221点
といったように23.5点の差にしかなりません。
管工事の年間平均完成工事高 | X1評点 | P点 |
---|---|---|
2億円 | 790点 | 197.5点 |
4億円 | 884点 | 221点 |
この点数の捉え方については、人それぞれ考え方が異なるでしょう。「P点が23.5点もアップする!」という人もいれば、完成工事高が2倍になっているのに「P点が23.5点しかアップしない…」という人もいるでしょう。
ただ、現実的に考えて頂きたいのですが、この計算は、管工事の年間平均完成工事高(工事種類別年間平均完成工事高)が、2億円から4億円に倍増したケースを前提としています。通常は、完成工事高が倍になるということは、よほどの成長期にある会社でない限り想定しがたいはずです。また「社会性など(W)」の項目で審査対象となっている「建設業退職金共済制度加入」「退職一時金制度若しくは企業年金制度導入」「法定外労働災害補償制度加入」については、1つの制度に加入・導入することでP点が19.125点アップします。3つ全てに加入・導入すると、実にP点が57.375点アップする計算になります。
このような観点からすると、売上高を倍増して23.5点のP点アップを狙うよりも、「退職金制度」や「法定外労災制度」などの福利厚生の拡充を図って、57.375点のP点アップを狙ったほうが、効率のよい施策であると私は考えます。
工事種類別年間平均完成工事高とX1評点の一覧表
下の表は、工事種類別年間平均完成工事高ごとの、X1評点です。すこし見にくいかもしれませんが、平均完成工事高は千円単位になっていて、平均完成工事高の右にある数字がX1評点を表しています。
たとえば、
- 平均完成工事高500,000千円の場合のX1評点は、918点
- 平均完成工事高100,000千円の場合のX1評点は、711点
- 平均完成工事高40,000千円の場合のX1評点は、626点
というように(いずれも赤字部分参照)、平均完成工事高ごとのX1評点を確認するのにお役立ていただけると思います。
平均完工高 | X1 | 平均完工高 | X1 | 平均完工高 | X1 | 平均完工高 | X1 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
80,000,000 | 2,195 | 8,000,000 | 1,411 | 800,000 | 968 | 80,000 | 689 |
60,000,000 | 2,094 | 6,000,000 | 1,361 | 600,000 | 943 | 60,000 | 661 |
50,000,000 | 2,006 | 5,000,000 | 1,310 | 500,000 | 918 | 50,000 | 645 |
40,000,000 | 1,917 | 4,000,000 | 1,259 | 400,000 | 884 | 40,000 | 626 |
30,000,000 | 1,828 | 3,000,000 | 1,209 | 300,000 | 842 | 30,000 | 602 |
25,000,000 | 1,753 | 2,500,000 | 1,158 | 250,000 | 818 | 25,000 | 589 |
20,000,000 | 1,677 | 2,000,000 | 1,119 | 200,000 | 790 | 20,000 | 573 |
15,000,000 | 1,601 | 1,500,000 | 1,083 | 150,000 | 756 | 15,000 | 553 |
12,000,000 | 1,537 | 1,200,000 | 1,045 | 120,000 | 730 | 12,000 | 539 |
10,000,000 | 1,475 | 1,000,000 | 1,006 | 100,000 | 711 | 10,000 | 528 |
工事種類別年間平均完成工事高とX1評点の折れ線グラフ
それでは、工事種類別年間平均完成工事高とX1評点を折れ線グラフにすると、どうなるでしょうか?
1,000億円までのX1評点の推移
下のグラフは、縦軸がX1評点、横軸が平均完成工事高(単位:百万円)を示しています。X1評点の最高得点は、「完成工事高が1千億円の場合、X1評点が2,309点」になっているため、縦軸(X1)のMAXは2309点、横軸(完成工事高)のMAXは1000億円になっています。
このようにグラフにしてみると完成工事高が高ければ高いほどX1評点も高くなる関係性が見て取れます。しかし、X1評点の増加率は、完成工事高の増加率には比例しておらず、工事高が高ければ高いほど、X1評点の伸び率が鈍くなる関係性にあることが分かると思います。
また、下記のグラフは、完成工事高のMAXを1000億円に設定しているため、完成工事高が数千万円の会社や、数億規模の会社にとっては、参考程度にしかなりません。
10億円までのX1評点の推移
上の折れ線グラフは、完成工事高のMAXを1000億円に設定していたため、X1評点の全体像を把握するには適していますが、中小企業がX1評点の推移を確認するには、少し、規模が大きすぎました。そこで、工事種類別年間平均完成工事高のMAXを10億円にして、あらたにグラフを作成してみました。
1億円までのX1評点の推移
X1で評価の対象となるのは、あくまでも「業種ごと」の年間平均完成工事高で「総」完成工事高ではありません。内装工事の経審を受けるのであれば内装工事の平均完成工事高、解体工事の経審を受けるのであれば解体工事の平均完成工事高が、評価の対象になるわけです。そのため、工事種類別の年間平均完成工事高のMAXを10億円に設定したとしても、やはり規模の小さい会社にとっては、自社の状況を把握するための目安として、少し、完成工事高が高すぎるかもしれません。
そこで、続いて、工事種類別年間平均完成工事高のMAXを1億円に設定して、折れ線グラフを作成してみました。
上記の折れ線グラフを表にしてみると以下のようになります。難しい計算をしなくても、自社の工事種類別年間平均完成工事高が、いくらくらいだと、X1評点がどれくらいになるのかが、見て取れると思います。
例えば
- 工事種類別年間平均完成工事高が12,000千円の場合→X1評点は、539点
- 工事種類別年間平均完成工事高が40,000千円の場合→X1評点は、626点
というように(いずれも赤文字部分を参照)、自社の工事高と照らし合わせながら、参考にしてみてください。
平均完工高(千円) | X1 | 平均完工高(千円) | X1 |
---|---|---|---|
100,000 | 711 | 25,000 | 589 |
80,000 | 689 | 20,000 | 573 |
60,000 | 661 | 15,000 | 553 |
50,000 | 645 | 12,000 | 539 |
40,000 | 626 | 10,000 | 528 |
30,000 | 602 | 0 | 397 |
工事種類別年間平均完成工事高の「振替」「積み上げ(加算)」について
「振替」「積み上げ(加算)」とは
このページの最後に、工事種類別年間平均完成工事高について、ぜひとも覚えておいて頂きたい制度をご紹介します。それが、完成工事高の「振替」「積み上げ(加算)」についてです。完成工事高の「振替」「積み上げ(加算)」とは、経審を受ける特定の業種について、他の業種の完成工事高を振り替えて、積み上げ(加算)して申請できる制度のことを言います。
東京都の経営事項審査の手引きを参考に
東京都の経営事項審査の手引きを参考により詳しく解説すると、下記の表のように、振替元である専門工事の完成工事高を振替先である一式工事の完成工事高に積み上げ(加算)することができるのです。
一式工事への振替(積み上げ)
振替先の一式工事 | ← | 振替元の専門工事 |
---|---|---|
土木一式工事 | ← | とび、石、タイル、鋼構造物、鉄筋、舗装、しゅんせつ、水道施設 |
建築一式工事 | ← | 大工、左官、とび、屋根、タイル、鋼構造物、鉄筋、板金、ガラス、塗装、防水、内装、建具、解体 |
たとえば、「とび工事」の完成工事高を、「土木一式工事」の完成工事高に、振替(積み上げ)することができます。同様に、「内装工事」の完成工事高を、「建築一式工事」の完成工事高に振替(積み上げ)することもできます。
専門工事間の振替(積み上げ)
また、工事種類別年間平均完成工事高の「振替」「積み上げ(加算)」は、専門工事間でも行うことができます。
専門工事 | ⇔ | 専門工事 |
---|---|---|
電気工事 | ⇔ | 電気通信工事 |
管工事 | ⇔ | 熱絶縁工事 |
管工事 | ⇔ | 水道施設工事 |
とび工事 | ⇔ | 石工事 |
とび工事 | ⇔ | 造園工事 |
たとえば、「電気工事」の完成工事高を、「電気通信工事」の完成工事高に、振替(積み上げ)することができます。同様に、「とび工事」の完成工事高を、「造園工事」の完成工事高に振替(積み上げ)することもできます。
「振替」「積み上げ(加算)」をするときの注意点
上記のような「振替」「積み上げ(加算)」の制度は、工事種類別年間平均完成工事高の評点であるX1評点を上げるのに、非常に有利な制度です。しかし、一方で下記のような注意点があります。東京都の手引きを参考にまとめました。
- 「振替」「積み上げ(加算)」のルールは、自治体によって異なりますので、この制度を利用する際は、必ず、手引きの該当箇所を確認するようにしてください。
- 振替元の業種は、審査対象業種として申請することができません。
- 振替(積み上げ)を行う場合は、振替元の業種の全ての完成工事高を振り替える(加算する)必要があり、一部のみを振替(積み上げ)することはできません。
- 前年度、前々年度の完工高も、今回申請する基準日の完工高を基準に振り替える必要があります。
完成工事高の「振替」「積み上げ(加算)」の具体的事例
「振替」前のX1評点
内装工事の平均完成工事高が「10,000千円」、防水工事の平均完成工事高が「15,000千円」、建築一式工事の平均完成工事高が「0円」だった場合を仮定します。このようなケースで、工事種類別年間平均完成工事高の「振替」「積み上げ(加算)」制度を用いず、それぞれの業種について、経審を受ける場合、X1評点は、「内装工事=528点」「防水工事=553点」「建築一式工事=397点」となります。
業種 | 内装工事 | 防水工事 | 建築一式工事 |
---|---|---|---|
完工高 | 10,000千円 | 15,000千円 | 0千円 |
X1 | 528点 | 553点 | 397点 |
しかし、この会社が、内装工事や防水工事の経審の結果よりも、建築一式工事の経審の結果を重視したい場合には、工事種類別年間平均完成工事高の「振替」「積み上げ(加算)」を行って、内装工事や防水工事の完成工事高を建築一式工事の完成工事高として、経審を受けるとよいでしょう。
「振替」後のX1評点
業種 | 内装工事 | 防水工事 | 建築一式工事 |
---|---|---|---|
完工高 | 0千円 | 0千円 | 25,000千円 |
X1 | ― | ― | 589点 |
上の表は、内装工事と防水工事の完成工事高を「建築一式工事」に振替た際の表です。内装工事の10,000千円、防水工事の15,000千円の合計25,000千円を建築一式工事に振替ているわけですから、建築一式工事の完工高は、0円から25,000千円になります。
この結果、建築一式工事のX1評点が振替前の397点から589点と200点近くアップしたことになります。
この場合、東京都のルールに従うと、振替元の業種である「内装工事」「防水工事」で経審を受けることはできなくなります。そのため、P点も算出されることはありません。また、内装工事の売上高のうちの一部、防水工事の売上高のうちの一部を、建築一式工事に振り替えるということはできず、振替制度を利用する場合には、振替元の完工高の全てを振替先に振替なければなりません。
このように、「振替」「積み上げ(加算)」の制度を利用すると、X1評点や総合評定値P点が飛躍的にアップすることが予想されますので、ぜひ、御社でも採用してみてはいかがでしょうか?
工事種類別年間平均工事高(X1)の計算式の一覧
下の表は、「経営事項審査の事務取扱について(通知)」に公表されている「建設工事の種類別年間平均完成工事高」から「X1評点」を差算出するための計算式を一覧表にしたものです。この計算式にあてはめれば、すべての完成工事高の場合のX1評点を算出することができますので、ぜひ、参考にしてみてください。なお、X1評点の最高点は、工事種類別年間平均完成工事高が1,000億円以上の2,309点です。
建設工事の種類別年間平均完成工事高 | X1評 点 | |
---|---|---|
1,000億円以上 | 2,309 | |
800億円以上1,000億円未満 | 114×(年間平均完成工事高)÷20,000,000+1,739 | |
600億円以上800億円未満 | 101×(年間平均完成工事高)÷20,000,000+1,791 | |
500億円以上600億円未満 | 88×(年間平均完成工事高)÷10,000,000+1,566 | |
400億円以上500億円未満 | 89×(年間平均完成工事高)÷10,000,000+1,561 | |
300億円以上400億円未満 | 89×(年間平均完成工事高)÷10,000,000+1,561 | |
250億円以上300億円未満 | 75×(年間平均完成工事高)÷5,000,000+1,378 | |
200億円以上250億円未満 | 76×(年間平均完成工事高)÷5,000,000+1,373 | |
150億円以上200億円未満 | 76×(年間平均完成工事高)÷5,000,000+1,373 | |
120億円以上150億円未満 | 64×(年間平均完成工事高)÷3,000,000+1,281 | |
100億円以上120億円未満 | 62×(年間平均完成工事高)÷2,000,000+1,165 | |
80億円以上100億円未満 | 64×(年間平均完成工事高)÷2,000,000+1,155 | |
60億円以上80億円未満 | 50×(年間平均完成工事高)÷2,000,000+1,211 | |
50億円以上60億円未満 | 51×(年間平均完成工事高)÷1,000,000+1,055 | |
40億円以上50億円未満 | 51×(年間平均完成工事高)÷1,000,000+1,055 | |
30億円以上40億円未満 | 50×(年間平均完成工事高)÷1,000,000+1,059 | |
25億円以上30億円未満 | 51×(年間平均完成工事高)÷500,000+903 | |
20億円以上25億円未満 | 39×(年間平均完成工事高)÷500,000+963 | |
15億円以上20億円未満 | 36×(年間平均完成工事高)÷500,000+975 | |
12億円以上15億円未満 | 38×(年間平均完成工事高)÷300,000+893 | |
10億円以上12億円未満 | 39×(年間平均完成工事高)÷200,000+811 | |
8億円以上10億円未満 | 38×(年間平均完成工事高)÷200,000+816 | |
6億円以上8億円未満 | 25×(年間平均完成工事高)÷200,000+868 | |
5億円以上6億円未満 | 25×(年間平均完成工事高)÷100,000+793 | |
4億円以上5億円未満 | 34×(年間平均完成工事高)÷100,000+748 | |
3億円以上4億円未満 | 42×(年間平均完成工事高)÷100,000+716 | |
2億5,000万円以上3億円未満 | 24×(年間平均完成工事高)÷50,000+698 | |
2億円以上2億5,000万円未満 | 28×(年間平均完成工事高)÷50,000+678 | |
1億5,000万円以上2億円未満 | 34×(年間平均完成工事高)÷50,000+654 | |
1億2,000万円以上1億5,000万円未満 | 26×(年間平均完成工事高)÷30,000+626 | |
1億円以上1億2,000万円未満 | 19×(年間平均完成工事高)÷20,000+616 | |
8,000万円以上1億円未満 | 22×(年間平均完成工事高)÷20,000+601 | |
6,000万円以上8,000万円未満 | 28×(年間平均完成工事高)÷20,000+577 | |
5,000万円以上6,000万円未満 | 16×(年間平均完成工事高)÷10,000+565 | |
4,000万円以上5,000万円未満 | 19×(年間平均完成工事高)÷10,000+550 | |
3,000万円以上4,000万円未満 | 24×(年間平均完成工事高)÷10,000+530 | |
2,500万円以上3,000万円未満 | 13×(年間平均完成工事高)÷5,000+524 | |
2,000万円以上2,500万円未満 | 16×(年間平均完成工事高)÷5,000+509 | |
1,500万円以上2,000万円未満 | 20×(年間平均完成工事高)÷5,000+493 | |
1,200万円以上1,500万円未満 | 14×(年間平均完成工事高)÷3,000+483 | |
1,000万円以上1,200万円未満 | 11×(年間平均完成工事高)÷2,000+473 | |
1,000万円未満 | 131×(年間平均完成工事高)÷10,000+397 |
小数点以下切り捨て
引用元:経営事項審査の事務取扱いについて(通知)