【専門家に聞く】入札成功のカギ「P点」とは?総合評定値の計算方法と目安をプロが伝授

公共工事の入札参加資格を持っている建設会社であれば、「総合評定値P点」という言葉をご存知の人も多いはずです。経営事項審査を受けると「総合評定値通知書」が発行され、その「総合評定値通知書」にP点が記載されています。さすがに、P点を、「まったく見ていない」「全然、意識していない」という人は少数派だと思いますが、「去年より上がった」「去年より下がった」と一喜一憂しているだけの人も多いかもしれません。

総合評定値P点について、どれだけわかっているか?というと、「前回と同じくらいであればよいのかな?」とか、「高ければ高い方がよいのでしょう。」という一般的なイメージしかない人もいるでしょう。こういったことは、やはり専門家に意見を聞くのが一番手っ取り早いです。そこで、本日は、「総合評定値P点の目安・計算方法」というテーマで、行政書士法人スマートサイドの横内先生にインタビューを実施します

総合評定値P点とは?


それでは、横内先生。本日は、「総合評定値P点」をテーマにお話しをお伺いさせて頂ければと思います。経営事項審査や総合評定値P点に関しては、行政書士法人スマートサイドさんが、とても得意としている分野ですよね。


はい。

私の事務所は、東京都の公共工事の入札参加資格申請という手続きをメインにしている事務所ですので、経営事項審査については、かなり専門的に扱っているという自負があります。今回のインタビューは、総合評定値P点という難しい分野に関するテーマですので、可能な限りわかりやすい言葉でお話しをさせて頂ければと思います。

まず、総合評定値P点とは、経営事項審査の結果の点数を言います。経営事項審査は、官公庁から公共工事を直接受注しようとする会社が必ず受けなければならない手続きを言います。公共工事を落札できている会社は、経営事項審査を経て、入札参加資格を取得したうえで、入札に参加しているのです。

そして、経営事項審査の結果通知書である「総合評定値通知書」に総合評定値P点が記載されています。「総合評定値P点」と言うから、わかりづらいのですが、よりわかりやすく言うと、学生時代の「学力テストの点数」に例えるとわかりやすいかもしれません。たとえば、高校時代を振り返ってみてください。テストの際には、「英語:70点」「数学:60点」「国語:90点」というように、それぞれの科目に点数がつけられましたよね。そして、「英語は70点だから良」「数学は60点だから可」「国語は90点だから優」といったように、それぞれの点数に応じて、ランクを割振りされてました。

経営事項審査も同様に考えることができます。経営事項審査は、毎年1回、必ず受けなければなりませんが、事業年度の財務諸表の数字や工事実績が、審査の対象になります。その審査を経て、例えば「建築一式工事:750点」「道路舗装工事:800点」「電気工事:830点」というように点数が付けられているのです。


「総合評定値P点」という名前だから、難しく感じるのであって、学生時代の学力テストの結果だと思えば良いんですね。


経営事項審査は、建設会社にとって年に1回の学力テストです。「総合評定値通知書は、建設会社の学力テストの成績表。総合評定値P点は、学力テストの点数・・・。」そんなイメージでよいと思います。

みなさん気になるのは、「一体、総合評定値P点の平均点」は何点なのか?ということだと思います。自分の会社の点数が、平均より良いのか?悪いのか?は、とても気になるところです。ずばり、総合評定値P点の平均・目安は700点であると言われています。

総合評定値P点の目安は、700点


700点が目安ですか?


はい。一般的に700点が目安と言われていますし、私の肌感覚としても700点前後が平均的な点数になるのではないかと感じております。これから話すことは、あくまでも私の経験上の話ですので、すべての会社に当てはまるとは限りませんが、あえてお話しさせて頂きます。

経営事項審査の結果である総合評定値P点が400点台や500点台の場合、「申請の仕方が悪い」もしくは「経審対策ができていない」というのが、私の感想です。たしかに、「会社設立直後で実績がないようなケース」や「まずは練習でよいので、経審を受けてみるというケース」であれば、400点台という数字もあるかもしれません。しかし、「しっかりと、公共工事の落札を狙っていきたい」と考えている会社で400点台や500点台は、なにか「歯車がかみ合っていない」という印象です。もしこのインタビュー記事を読んでいる建設会社の社長の中に、P点が400点台、500点台という人がいれば、1度、専門家に相談してみることをお勧めいたします。

東京都の公報を参考に話を続けると、東京都の場合、総合評定値P点が入札参加資格における客観等級を決める際の基準になります。そして一部の特殊な工事を除いて、700点がC等級になるように割り振られています。「A~E」まである客観等級のうち、P点が700点であれば真ん中のC等級になるわけです。そういった観点からも、総合評定値P点の目安・平均は、700点前後になるように制度設計されているといって間違いないと思います。

総合評定値P点の算出方法


東京都の公報についても言及されていて、かなり、説得力のあるお話しです。では、この総合評定値P点は、どうやって計算されるのでしょうか?計算方法について、話を続けて頂けますでしょうか?


いままでの話が、総合評定値P点の意味や目安についての話でしたが、ここからは、総合評定値P点の算出方法の話になります。総合評定値P点の算出方法については、かなり複雑ですので、心して聞いてくださいね。

まず、総合評定値P点は、「X1×0.25+X2×0.15+Y×0.20+Z×0.25+W×0.15」という計算式によって算出されます。X1とかX2とかいう記号は、それぞれの評点を意味します。今回は、資料もご用意いたしましたので、手元にある資料を見てもらえますか?

この資料は、大手ゼネコンの「総合評定値通知書」です。数字ばかりで、何が何だかわからないと思いますが、青と赤で囲ったところに着目してみてください。

実は、経審結果である総合評定値通知書は、だれでも自由にネットから閲覧できるようになっています。この資料も、「一般財団法人建設業情報管理センター」のホームページからプリントアウトしたものです。数字が小さすぎて拡大しないとわかりにくいかもしれませんが、先ほど私が説明した通り「X1×0.25+X2×0.15+Y×0.20+Z×0.25+W×0.15」という計算をして、小数点以下を四捨五入すると、P点が2002点になるはずです。


たしかに、計算した結果、答えが「2001.85」になって、小数点以下を四捨五入すると2002点になっています!


経審を受けているのであれば、総合評定値通知書は手元にあるはずです。もし手元になければ、建設業情報管理センターのホームページを検索すれば、いろいろな会社の結果を見ることができます。ぜひ、みなさん自身も、電卓を使って計算し、記載されている通りのP点になっているかを確認して欲しいですね。なお、この会社は、日本でもトップクラスの大手ゼネコンですので、総合評定値P点が2000点超えとなっていますが、通常は、700点前後、良くても900点から1000点前後です。その点もお忘れなく。

で、本題は、ここからですが、「X1評点は、工事種類別完成工事高」「X2評点は、利益額+自己資本の額」「Y評点は、経営状況分析の結果」「Z評点は、工事種類別元請完成工事高+技術職員数」「W評点は、社会性等」からそれぞれ導かれます。いま述べた

  • 工事種類別完成工事高(X1評点)
  • 利益額+自己資本額(X2評点)
  • 経営状況(Y評点)
  • 工事種類別元請完成工事高+技術職員数(Z評点)
  • 社会性等(W評点)

は、いずれも経営事項審査の際に、審査の対象となる項目です。「経営事項審査では、会社の何を審査するのですか?」という質問を受けることがありますが、経営事項審査では、いま述べた5つの項目を審査します。この5つの項目ごとに評点がつけられ、その評点を先ほどの計算式にあてはめることによって、最終的にP点が算出されるということになります。


「経営事項審査では、X1~Wの5つの項目が審査の対象になる。そして、その項目ごとに評点がつけられ、その評点を計算式に当てはまることによって、総合評定値P点が算出される」という流れですね。


はい。そういう流れです。

1度でも経営事項事項審査を受けたことがある人ならわかると思いますが、経営事項審査の際には、申請書類に金額や数字を入力するとともに、裏付資料として、さまざまな書類を提示します。その「金額」「数字」「書類」を元に、5つの項目について審査が行われ、P点が導き出されるのです。

この話を初めて聞く人にとっては、とても難しく感じるかもしれませんが、何回か経審を受けて、実際に結果通知書を眺めてみて、自分で計算をしてみると、なんとなく理解できるようになってくると思います。

総合評定値P点をアップさせる対策


横内先生。P点の計算方法については、わかりました。先ほどの700点が平均という話に戻るのですが、仮に自分の会社のP点が600点だった場合、どのような方法によって、P点を上げていけばよいのでしょうか?これだけ、難しい計算式にあてはめなければならないとなると、P点アップの対策のしようがないように思うのですが…


とてもよい質問だと思います。

P点算出のための計算方法をどんなに理解したとしても、実際にP点を上げるための方法がわからなければ、「絵にかいた餅」と同じです。実は、このP点を上げるための方法やテクニックが専門家の腕の見せ所というか、行政書士の実力の違いが分かるところなのです。「P点を上げたい!」と言って、簡単にP点が上がったら、みんないい点数が取れるはずです。しかし、それでは、入札の公平性に問題が生じてしまいます。小手先のテクニックでP点が上がってしまったら、実績や経験の伴わない建設会社が大規模工事を落札できてしまうことになりかねないからです。

とは言え、私の方からできるアドバイスをいくつかさせて頂きます。

まずは、「完成工事高を気にするよりほかにやることがある」という点です。例えば、完成工事高が1億円から2億円に増えればP点は20点アップします。しかし、完成工事高を1億円から2億円に上げることなどできるのでしょうか?「設立後、間もないスタートアップの会社」であれば、別かもしれませんが、経審対策として、完成工事高を2倍に増やそうというのは、得策ではありません。

仮に、完成工事高が2倍に増えたとしても、その分、原価がかさみ売上総利益が減ってしまったら、経審対策としては、かえってマイナスになってしまいかねません。そのため、完成工事高を気にするより利益率を気にしたほうがよいと思います。

また、社会性等の審査項目でW評点の加点事由となる「建退協への加入」「中退共への加入」「法定外労災への加入」は、P点対策として必須であると言えると思います。たとえば、この3つのうち、どれか1つにでも加入すれば、総合評定値P点は、19点アップします。完成工事高が1億円から2億円にアップした時と同程度の加点率を見込めることができるのです。このように、経審の対策は、どこに目を向けるかによって、大きく変わってきます。

P点を上げるための対策については、会社の置かれている状況により、それぞれです。すでに何回か経審を受けている会社であれば、過去の申請書類などを拝見し、大まかな傾向を掴むことはできます。はじめて経審を受ける会社の場合、現時点での確定した決算の書類や工事経歴を拝見し、経審までにできる対策をご案内することもできます。


ありがとうございます。このインタビューを通じて、総合評定値P点の意味や目安・計算方法、点数アップの対策を、理解することができました。


そういって頂けると、私もうれしいです。

P点アップの対策については、本当に会社ごとに異なります。まれにですが、「これ以上ランクを上げたくないのでP点を下げたい」というご相談もあるくらいです。その会社の置かれている状況や、社長がどれだけ公共工事の受注に向けて真剣に取り組めるかによって、変わってきます。

私から言えることは、「完成工事高以外にも目を向ける部分がたくさんあって、むしろ、そっちの方が、効率的で実効性のある対策を打つことができる」ということです。


ついつい完成工事高に目が行きがちですが、より効率的な対策もあるということですね。勉強になります。そろそろ、お時間が来ましたので、最後に何か一言あれば、お願いします。


今回は、総合評定値P点の算出方法や審査項目など、かなり突っ込んだ難しい話になってしまいました。そのため、なかなか、頭の中の整理が追い付かなかった人もいるかもしれません。その点が心配です。

もし、今日の私の話のなかで、疑問や質問がある人は、ぜひ、専門家である行政書士の先生に相談されてみてはいかがでしょうか?みなさんの周りにも経営事項審査を得意とした行政書士の先生はたくさんいるはずです。もしかしたら、私なんかより、もっと知識や経験が豊富な先生もいらっしゃるかもしれません。

もちろん、みなさんの周りやお知り合いにそういった行政書士の先生がいない場合、私の事務所で良ければ、相談に来てください。総合評定値通知書や実際に申請した申請書の副本を拝見することによって、また、違った角度でのアドバイスができるかもしれません。

本日のインタビューが、みなさんのP点の理解、そしてP点アップ対策の参考になれば幸いです。ありがとうございました。

ご相談の予約・お問い合わせ
当法人への依頼を検討中のみなさまへ。私たちが提供するのは、「確かな専門知識」と「豊富な実績」に裏打ちされた、結果を出すためのサービスです。法人としての「組織力」と「責任感」を持って、複数名の専門スタッフが一丸となってお客さまをサポートし、「経営事項審査の申請」「入札参加資格の取得」をスムーズに進めることをお約束いたします。
お電話でのご相談の予約

「公共工事のホームページを見た」とお伝えください。

受付時間:平日7:00-15:00(土日祝休み)
メールでのご相談の予約・お問い合わせ

    選択してください必須
    相談者1人1人への適切な対応、質の高い面談時間の確保の見地から、ご要望に応じて、1時間11.000円の有料相談を実施しています。

    このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。

    行政書士法人スマートサイド(以下、「当社」という。)は,ユーザーの個人情報について以下のとおりプライバシーポリシー(以下、「本ポリシー」という。)を定めます。本ポリシーは、当社がどのような個人情報を取得し、どのように利用するか、ユーザーがどのようにご自身の個人情報を管理できるかをご説明するものです。

    【1.事業者情報】
    法人名:行政書士法人スマートサイド
    住所:東京都文京区小石川1-3-23 ル・ビジュー601
    代表者:横内 賢郎

    【2.個人情報の取得方法】
    当社はユーザーが利用登録をするとき、氏名・生年月日・住所・電話番号・メールアドレスなど個人を特定できる情報を取得させていただきます。
    お問い合わせフォームやコメントの送信時には、氏名・電話番号・メールアドレスを取得させていただきます。

    【3.個人情報の利用目的】
    取得した閲覧・購買履歴等の情報を分析し、ユーザー別に適した商品・サービスをお知らせするために利用します。また、取得した閲覧・購買履歴等の情報は、結果をスコア化した上で当該スコアを第三者へ提供します。

    【4.個人データを安全に管理するための措置】
    当社は個人情報を正確かつ最新の内容に保つよう努め、不正なアクセス・改ざん・漏えい・滅失及び毀損から保護するため全従業員及び役員に対して教育研修を実施しています。また、個人情報保護規程を設け、現場での管理についても定期的に点検を行っています。

    【5.個人データの第三者提供について】
    当社は法令及びガイドラインに別段の定めがある場合を除き、同意を得ないで第三者に個人情報を提供することは致しません。

    【6.保有個人データの開示、訂正】
    当社は本人から個人情報の開示を求められたときには、遅滞なく本人に対しこれを開示します。個人情報の利用目的の通知や訂正、追加、削除、利用の停止、第三者への提供の停止を希望される方は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。

    【7.個人情報取り扱いに関する相談や苦情の連絡先】
    当社の個人情報の取り扱いに関するご質問やご不明点、苦情、その他のお問い合わせはお問い合わせフォームよりご連絡ください。

    【8.SSL(Secure Socket Layer)について】
    当社のWebサイトはSSLに対応しており、WebブラウザとWebサーバーとの通信を暗号化しています。ユーザーが入力する氏名や住所、電話番号などの個人情報は自動的に暗号化されます。

    【9.cookieについて】
    cookieとは、WebサーバーからWebブラウザに送信されるデータのことです。Webサーバーがcookieを参照することでユーザーのパソコンを識別でき、効率的に当社Webサイトを利用することができます。当社Webサイトがcookieとして送るファイルは、個人を特定するような情報は含んでおりません。
    お使いのWebブラウザの設定により、cookieを無効にすることも可能です。

    【10.プライバシーポリシーの制定日及び改定日】
    制定:令和6年7月1日

    【11.免責事項】
    当社Webサイトに掲載されている情報の正確性には万全を期していますが、利用者が当社Webサイトの情報を用いて行う一切の行為に関して、一切の責任を負わないものとします。
    当社は、利用者が当社Webサイトを利用したことにより生じた利用者の損害及び利用者が第三者に与えた損害に関して、一切の責任を負わないものとします。

    【12.著作権・肖像権】
    当社Webサイト内の文章や画像、すべてのコンテンツは著作権・肖像権等により保護されています。無断での使用や転用は禁止されています。