相談者:建設会社 佐藤社長(仮)
今まで、下請として何件かの公共工事に関わったことはあります。公共工事とはいえ、下請だと、どうしても利益率が悪いので、「発注者である自治体から直接受注できる体制を…」と考えています。経営事項審査を受けて、東京都の公共工事を直接受注したいと思っています。素人の私たちには、とてもできそうにないので、外部の専門家に依頼することは、社内で稟議を経ています。そこで、経営事項審査の手続きを行政書士法人スマートサイドさんに依頼したいのですが、対応していただくことは可能でしょうか?
回答者:行政書士
発注者である自治体から直接工事を受注したいとのこと。たしかに、そのほうが下請けとして工事に関与するより、利益率が上がりそうですね。もちろん、経営事項審査の手続きに関して、弊所にて対応させて頂くことは可能です。社内稟議も経ているとのことですので、早速ですが、「御社にご用意していただきたいもの」をご説明させて頂きますね。経審の手続きは、とてもたくさんの書類が必要になりますので、まずは、このページに記載してあるところから準備を始めてみてください。
相談者の佐藤社長(建設会社社長)のように、元請として公共工事を受注したいという相談を受けることは、よくあります。「下請として公共工事に入っても、元請さんが多く持って行ってしまうので…」というように、金銭面(工事の請負金額)で、下請ではなく元請として、公共工事を受注したほうが、メリットがあると考えているようです。
また、何回も下請として公共工事の現場に入っているうちに、役所の人から、「今後、入札に参加してみませんか?」といったお声がけを頂くケースもあるようです。
このページでは、行政書士法人スマートサイドに経営事項審査のご依頼をいただくにあたって、事前に用意して頂きたい書類をご案内させて頂きます。
御社で事前に用意して欲しい書類
東京都が公表している経営事項審査の手引きなどを見ると、驚くほどたくさんの書類が一覧として掲載されています。ただし、そのすべてが必要になるわけではありません。また、その中でも、特に重要なものは決まっています。ここでは、御社が初めての経営事項審査を弊所にご依頼頂いたと仮定して、まずは、手続きのスタートに必要な「御社で事前に用意して欲しい書類・5つ」を、ご案内させて頂きます。
1.税務申告書(決算書)3期分
経営事項審査を受けるには、事前に経営状況分析を受けて、結果通知書(Y点)を取得しておかなければなりません。これは、経営状況分析の結果通知書が、経営事項審査を受ける際の必要書類として、求められているからです。そして、経営状況分析を受けるには、税理士の先生が作成した税務申告書3期分が必要になります。経営状況分析は、民間の分析機関に、直近3年分の財務諸表を分析してもらう手続きのことを言います。
まずは、経営状況分析に必要な税務申告書(決算書)3期分をご用意ください。
2.建設業許可通知書+許可申請書の副本
建設業許可通知書と建設業許可を取得(もしくは更新)した際の副本一式をご準備ください。経営事項審査を受けるには、建設業許可業者であることが必須です。また、経営事項審査の際には、「経営業務管理責任者」や「専任技術者」など、建設業の許可要件を満たしているか?の確認も必要になります。
建設業許可通知書や建設業許可を取得(更新)した際の副本は、いずれもコピーで構いませんので、ご準備ください。
3.決算変更届(+その他の変更届)
建設業許可を取得した会社は、事業年度終了後4か月以内に、許可行政庁に「決算の報告」(「決算変更届」といいます)を提出していなければなりません。万が一、決算変更届の提出が漏れていると、決算変更届を提出してからでないと、経営事項審査を受けることができません。
経営事項審査は、直近事業年度1年間の数字をもとに、会社の財務状況や実績を評価する審査です。そのため、事業年度1年分の決算の報告書である決算変更届が出ていないと、審査のもとになる数字がないため、審査を行うことができず、経営事項審査を受け付けてもらうことができません。経営事項審査を受けるのであれば、決算変更届は、もれなく提出されていなければなりません。
また、「代表者の変更・本店所在地の変更・資本金の変更」などの会社の重要事項の変更の際には、許可行政庁に変更届の提出が義務付けられています。経営事項審査の際には、これらの変更届の副本も必要になりますので、事前にご準備していただく必要があります。
4.技術職員の名簿
経営事項審査の際には、「技術職員名簿」と言って、下記の名簿を提出します。この名簿は、審査基準日時点で6か月を超える期間、御社に常勤している技術職員に関する名簿になります。技術職員が数名程度という会社はよいですが、技術職員の人数が10名を超える場合には、「保有資格」「講習受講状況」などを記載するのが大変です。
そのため、これから経営事項審査を受けようとする会社は、あらかじめ技術職員について「生年月日」「保有資格」「講習の受講状況」「監理技術者資格者証」などを一覧にして、準備しておくとよいでしょう。
5.工事実績一覧+工事請負契約書など
決算変更届を毎年漏れなく提出している会社は、工事実績一覧(=工事経歴書)のことをご存知かと思いますが、経営事項審査の際には、この工事実績一覧(=工事経歴書)が非常に大事になってきます。なぜなら、「工事請負契約書」や「注文書・請書」で、工事実績を証明しなければならないからです。つまり、工事経歴書に記載されている工事の真実性が問われるわけです。
万が一、決算変更届の際に提出した工事実績に不備、齟齬がある場合、決算変更届の提出および経営事項審査の申請を1からやり直さなければならないケースも出てきます。
工事実績については、行政書士である私たちが「作成」するわけにはいきません。御社が、過去1年間を通じて、どのような工事を施工して来たかを下記のような工事経歴書にまとめる必要があります。
工事経歴書や工事請負契約書の準備は、経営事項審査を受ける直前になってやろうとしても、時間が足りなくなってしまうことが多いので、「経営事項審査を受けたい」「公共工事を受注したい」とお考えの会社は、なるべく普段の日常業務の段階から、意識して、工事の実績や契約書を管理するようにしましょう。
経営事項審査を受けるまでの流れ
上記の書類以外にも、経営事項審査の際に必要になる書類は、たくさんあります。たとえば
- 法人事業税納税証明書(知事許可の場合)
- 消費税納税証明書その1
- 健康保険料や厚生年金保険料の支払いが分かる資料
- 雇用保険の支払いが分かる資料
- 法定外労災の加入証明書
- 建退協の加入履行証明書
- 退職金規定
など、数え上げたらきりがありません。ただ、一方で、弊所にご依頼をいただくにあたって、まず準備して頂きたいものは、上記5つで大丈夫です。御社から手続きのご依頼をいただいたあと、以下のような流れに沿って、経営事項審査をうけ、結果通知書を受領することになります。
1.経営状況分析の申請
前段でお話しした通り、経営事項審査を受けるには、経営状況分析を受けておくことが必要です。お客さまからお預かりした税務申告書3期分を使用して、経営状況分析に必要な書類を作成し、まずは、経営状況分析の申請をおこないます。
2.経営状況分析の結果の受領
経営状況分析は、電子申請で行うため、早ければ、申請後2~3日中に結果を受領することができます。経営状況分析の結果通知を受領したうえで、経営事項審査の申請準備に入ります。
3.経営事項審査の申請書の作成及び提出
経営事項審査は、「JCIPを利用した電子申請か」「東京都庁での対面申請か」のどちらかから選ぶことができます。「JCIPを利用した電子申請」の場合、GビズIDプライムアカウントが必要になります。「都庁での対面審査」の場合、東京都庁に事前に予約を入れる必要があります。
どちらも一長一短という感じがしますが、これからは、さまざまな申請手続きにおいて、電子化の流れが加速することになるかと思いますので、ぜひ、GビズIDを取得して頂き、「JCIPを利用した電子申請」で、経営事項審査を申請できればと考えています。
弊所では、電子申請にも対面申請にも、どちらの申請にも対応しております。書類作成・書類の収集など、申請手続きの準備が整い次第、経営事項審査を受けることになります。
4.経営事項審査の結果通知書の受領
経営事項審査申請後、おおむね1か月程度で、経営事項審査の結果通知書(=経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書)を取得することができます。経営事項審査は、「受けること」が大事なのではなく、結果である「総合評定値P点が何点なのか?」が大事です。P点の分析や、よりよい点数にするにはどうしたらよいか?といった検討を怠らずに行いましょう。
経営事項審査の申請手続きの依頼をご検討中の方へ
行政書士
経営事項審査は、時間も手間もかかる難しい手続きです。御社にご用意して頂かなければならない書類もたくさんあります。とはいえ、このページで記載した「1~5」さえあれば、申請に向けた準備を開始することもできなくはありません。
佐藤社長(仮)のように、経営事項審査の手続きを行政書士法人スマートサイドに依頼したいとご検討中の社長は、ぜひ、「1~5」の書類を準備できるか?社内で検討してみてください。総務部や営業部の協力を仰げば、意外と早く準備できるかもしれませんね。
経営事項審査をはじめて受けようとする人の中には、手引きを読んだり、インターネットで検索をしたり、同業から情報を仕入れたりと、勉強熱心な人もいらっしゃることでしょう。特に、「東京都の公共工事の入札に参加したい!」という向上心がある人ほど、まずは自分の力で何とかやってみようと思うのではないでしょうか?
ただ、私たち専門家の目線で考えると、経営事項審査の手続きを、知識ゼロの人が行うのは、非常に危険であると考えます。経営事項審査は、さまざまな書類を提出する必要があります。ただ、経営事項審査の難しさは、「書類の準備が大変である」という点にあるわけではありません。
もしかしたらご存知かもしれませんが、「経営事項審査の結果=総合評定値P点」で、どの規模の入札に参加することができるのか?が決まってきます。そして、総合評定値P点は、さまざまな計算式を組み合わせ、「完成工事高(X1)」「自己資本額と利益額(X2)」「元請完成工事高と技術職員数(Z)」「経営状況分析(Y)」「その他の審査項目・社会性(W)」の評点を算出したのちに、導き出されます。
これらのX1やX2は、まさに、経営事項審査の申請の仕方で、評点が大きく変わってきます。このホームページでもP点の算出の仕方については、解説していますが、素人のひとが、効率の良い公共工事の受注対策を行うのは、難しいと言ってよいでしょう。
行政書士法人スマートサイドは、経営事項審査や総合評定値P点に関する手続きの専門家です。冒頭の佐藤社長のように、弊所にご依頼を検討いただいてる建設会社の社長には、まずは、
- 税務申告書3期分
- 建設業許可通知書+許可申請書の副本
- 決算変更届(+その他の変更届)
- 技術職員の名簿
- 工事実績一覧+工事請負契約書など
を準備して頂くようにご案内をしております。これらの書類があると、比較的スムーズに経営事項審査の手続きに入ることができます。もちろん、すべてを用意できなくても構いません。準備に時間がかかるものもあるでしょう。その際には、いま手元にあるものだけでも構いません。
行政書士法人スマートサイドに経営事項審査の手続きの依頼を検討している場合、ぜひ、上記の書類の準備ができるか確認してみてください!ご不明点などございましたら、下記、問い合わせフォームからお問い合わせいただければと思います。