【WEB版】はじめての方のための経営事項審査“入門書”_第3章:事例編(モデルケースのご紹介)

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このページは、行政書士法人スマートサイド(横内賢郎)が執筆した書籍「はじめての方の経営事項審査“入門書”」(Parade Books)の「第3章:事例編~参考にして欲しいケースのご紹介~」を、WEB用にリライトしたものです。

みなさまに、自由にお読みいただくために公開しておりますが、書籍購入をご希望の方は、ぜひ、Amazonのページから、お買い求め下さい(こちらをクリックするとAmazonのページに移動します)。

また、「第1章:手続編」「第2章:内容編」にも興味をお持ちの方については、以下のリンクからお進みいただくことができます。

■「第1章:手続編~手続きの流れの把握~」は、こちらをクリック

■「第2章:内容編~仕組みや重要ポイントの解説~」は、こちらをクリック


(以下、第2章からの続き)

この章では、初めて経審を受ける方にとって参考になりそうなケースを、いくつかピックアップして、ご紹介させて頂きます。どの事例も弊所で実際に申請したケースをモデルにしていますが、理解しやすいように説明の仕方を工夫しています。

第2章でみてきた経審の仕組みや重要ポイントについて、事例をもとに解説していますので、ぜひ、参考にしてみてください。


目次:事例編(モデルケースのご紹介)
【1】技術職員78名を申請したA社のケース

【2】建設機械の保有台数を5台から15台に増やしたB社のケース

【3】塗装、防水、内装の売上を建築一式に振り替えて申請したC社のケース

【4】退職金制度を導入・整備して、点数アップを果たしたD社のケース

【5】出向社員10名を技術職員名簿に掲載したE社のケース

【6】完成工事高=3年平均、自己資本額=2年平均を選択したF社のケース

【1】技術職員78名を申請したA社のケース

まずは、78名の技術職員が在籍しているA社が、土木一式工事の経審を受けたケースをご紹介いたします。

1:技術職員の内訳

A社の技術職員区分の内訳は以下の通りです。

技術職員区分 人数
1級土木施工管理技士(監理技術者資格者証の交付を受けており、かつ監理技術者講習を受講しているもの) 18名
1級土木施工管理技士(上記以外のもの) 4名
2級土木施工管理技士 36名
その他技術者

・指定学科卒業後3~5年以上の実務経験あり(15名)

・上記以外で10年以上の実務経験あり(5名)

20名
合計 78名

土木施工管理技士の資格は、土木一式工事のみならず、とび工事や石工事でも加点対象になりますが、今回経審を受けたのは土木一式工事のみでしたので、土木一式工事以外の業種についての加点は考慮する必要がありません。

土木施工管理技士という資格を持っていなかったとしても、土木科や環境科といった特殊な学科(指定学科)を卒業している場合、中学・高校卒業後5年以上もしくは大学卒業後3年以上の実務経験があれば、技術職員名簿に掲載することができます。

また、資格がなく、指定学科の卒業経歴がなかったとしても、土木一式工事の実務経験が10年以上あれば、土木一式工事の技術職員として技術職員名簿に記載し、加点対象とすることができます。A社の場合は20名を上記の「その他技術者」として技術職員名簿に記載しました。

2:P点のシミュレーション

それでは、実際にP点に換算すると何点になるのか、計算してみましょう。まずは、技術職員数値です。技術職員区分から、技術職員数値を計算すると220になります(18名×6+4名×5+36名×2+20名×1=220)。

点数 技術職員区分
6点 1級の資格者で、監理技術者資格者証の交付を受けており、かつ監理技術者講習を受講しているもの
5点 1級の資格者(1級建築施工管理技士など)
4点 監理技術者補佐(1級技士補)
3点 基幹技能者等(登録基幹技能者講習の修了者など)
2点 2級技術者(2級建築士など)
1点 その他技術者(実務経験10年の主任技術者など)

次に、技術職員数値を下記の表にあてはめると、技術職員数の点数を算出することができます。技術職員数の点数は、1312点です。

技術職員数値 点数
・・・・ ・・・・
230以上300未満 63×(技術職員数値)÷70+1119
180以上230未満 62×(技術職員数値)÷50+1040
140以上180未満 62×(技術職員数値)÷40+984
・・・・ ・・・・

※少数点以下、切り捨て

Z点は、技術職員数の点数に0.8を掛け算して算出しますので、技術職員数の点数をZ点にすると1049点になります。

Z点=(技術職員数の点数×0.8)+(工事種類別年間平均元請完成工事高の点数×0.2)

※少数点以下、切り捨て

総合評定値P点は、Z点に0.25を掛け算して算出しますので、上記のZ点をP点に換算すると262点になります。

総合評定値(P点)=0.25(X1)+0.15(X2)+0.20(Y)+0.25(Z)+0.15(W)

※小数点以下、四捨五入

このように、技術職員78名の技術職員区分を知ることによって、Z点ひいてはP点を算出することができます(なお、正確なZ点を算出するには、元請完成工事高も必要になってきます)。

パズルゲームをやっているようで、頭が混乱してしまったかもしれませんが、実際に経審を申請する際には、このように1つ1つ計算をしてP点をシミュレーションするわけではなく、経審の申請ソフトを使って、申請書類を作成していく過程で、P点を算出できるようになっています。

逆に、経審の申請ソフトを使うことなく、都や県のホームページ上にあるエクセルをダウンロードして申請書類を作成する場合には、P点の自動計算はできませんので、上記Zだけでなく、X1、X2、Y、Wなども、1つ1つ計算していくことになるでしょう。

3:必要な書類

技術職員の人数が多いと、その分、必要な書類も膨大な量になります。A社の場合、技術職員の資格を証明するための資料として

  • 18名分の1級土木施工管理技士の合格証明書+監理技術者資格者証
  • 4名分の1級土木施工管理技士の合格証明書
  • 36名分の2級土木施工管理技士の合格証明書

をコピーして提出しました。また、技術職員は、6か月を超える期間常勤していなければならないため「健康保険・厚生年金保険被保険者標準決定通知書」も必要であったことは「第2章 内容編」で説明した通りです。なお、技術職員名簿には、技術職員の氏名、生年月日、年齢の他に「業種コード」「有資格区分コード」「講習受講の有無」「監理技術者資格者証交付番号」などを記載する箇所があります。

  • 業種コードについては、土木工事の場合「001」
  • 有資格区分コードについては、一級土木施工管理技士の場合「113」、二級土木施工管理技士の場合「214」、高校または大学の指定学科卒業+実務経験の場合「001」、10年の実務経験の場合「002」
  • 講習受講の有無については、講習受講ありの場合「1」、講習受講なしの場合「2」

など、コードをそれぞれ間違いのないように記入する必要があります。この点については、手引きのコード一覧とにらめっこをしながら慎重に申請書類を作成していく必要があります。

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【2】建設機械の保有台数を5台から15台に増やしたB社のケース

続いて、建設機械の保有台数を5台から15台に増やしたB社のケースをご紹介します。建設機械の保有台数の増加が、P点に与えた影響、ひいては等級の格付けに与えた影響などがわかると思います。

1:建設機械の保有状況

B社の建設機械の保有状況は以下の通りです。

保有(リース)機械の種類 台数
前回 今回
ショベル系掘削機 1台 1台
モーターグレーダー 1台 1台
トラクターショベル 3台 5台
ダンプ 0台 8台
合計 5台 15台

建設機械の保有(リース)が、経審の際の加点事由になるのは、地域災害への備えの観点から、防災に役に立つからです。そのため、経営事項審査の結果通知書の有効期間中は申請会社の手元にあり、かつ、いつでも使用できるように整備などがされていることが必要です。このように、経審の加点事由となる建設機械には一定の基準があります。B社の場合、保有している15台すべてについて、経審の加点事由となる基準を満たしていました。

2:P点に与える影響

それでは建設機械の保有台数が5台から15台になったことで、P点にはどのようは影響を与えたのでしょうか?まずは、5台の場合(前回)、建設機械の保有状況(W7)の点数は9点です。一方で、15台の場合(今回)、建設機械の保有状況(W7)の点数は15点です。

建設機械の所有及びリース台数 台数に応じた点数
15台以上 15
14台 15
13台 14
12台 14
11台 13
10台 13
9台 12
8台 12
7台 11
6台 10
5台
4台
3台
2台
1台

これをW評点に換算すると、W評点は、「W1~W8の点数×10×175÷200」(小数点以下、切り捨て)という計算式で算出されるので、以下のようになります。

  • 5台の場合(前回)のW評点=9×10×175÷200=78点
  • 15台の場合(今回)のW評点=15×10×175÷200=131点

さらに、経営事項審査の結果である総合評定値P点は、「0.25(X1)+0.15(X2)+0.20(Y)+0.25(Z)+0.15(W)」という計算式によって算出されるので、W評点が78点から131点にアップしたことによって、総合評定値P点は8点アップします。

  • 5台の場合(前回)のP点=78×0.15=11.7
  • 15台の場合(今回)のP点=131×0.15=19.65

このように、建設機械の保有台数を5台から15台に増やしたことによって、P点が8点アップすることになります。

3:等級の格付けに与えた影響

建設機械を5台から15台に増やした割には、P点が8点しか上がらないのか?と思った方も多いと思います。しかし、B社の場合、この8点が等級の格付けに大きな影響を与えました。下記の表は、東京都の道路舗装工事の算定等級表です。

客観点数(P点) 客観

等級

主観点数(都独自の点数) 主観

等級

900点以上 2億点以上
750点以上900点未満 8000万点以上2億点未満
650点以上750点未満 3000万点以上8000万点未満
600点以上650点未満 700万点以上3000万点未満
600点未満 700万点未満

東京都の場合、P点(客観点数)によって格付けされた客観等級と、都独自の点数で格付けされた主観等級が一致する場合には、その等級が最終的な格付けになります。客観等級と主観等級が異なる場合には、いずれか低い方の等級が、最終的な格付けになります。例えば、客観等級B、主観等級Bの場合には、最終的な格付けはBになります。客観等級がD、主観等級がCの場合には、最終的な格付けはDになります。

B社の前回の客観点数(P点)は645点でしたので、客観等級はDです。東京都独自の基準で定めた主観等級はCでしたが、客観等級がDである以上、主観等級を加味したとしても、最終的な格付けはDにしかなりませんでした。

今回、建設機械の保有台数を増やしたおかげで、経審のP点(客観点数)は、645点から8点アップし653点にすることができました。その結果、客観等級をCに上げることができ、主観等級はもともとCでしたので「客観等級=C・主観等級=C」となり、東京都の最終的な格付けをCにすることができました。

東京都の道路舗装工事の等級および発注標準金額は、下記の通りです。前回まではDでしたが、今回からCに等級がアップしましたので、発注標準金額も「7百万円以上3千万円未満」から「3千万円以上8千万円未満」に大幅にアップしたことがお分かりいただけると思います。

等級 発注標準金額
2億円以上
8千万円以上2億円未満
3千万円以上8千万円未満
7百万円以上3千万円未満
7百万円未満

P点(客観点数)の算出には、建設機械の保有台数の他にも、さまざまな項目が審査されます。また、最終的な等級の格付けには、東京都が独自に定めた主観点数も考慮したうえで、客観点と主観点が総合的に判断されます。そのため、建設機械の保有台数を増やしたからといって、確実に等級が上がるかといえば、そうではありません。

しかし、このB社のケースは「建設機械の保有台数を増やしたことによるP点のアップが、最終的な格付けにも影響してくる」といった意味で、とても参考になるケースではないかと思います。

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【3】塗装、防水、内装の売上を建築一式に振り替えて申請したC社のケース

完成工事高の振替を行ったC社のケースのご紹介です。C社は、都内区市町村の入札案件を落札したいと考えている会社です。売上高の振替が、P点および等級の格付けにどのような影響を与えたかを知るうえで参考になるケースです(※なお、説明の便宜上、完成工事高は全て下請としています。また、金額は税抜きで千円単位となっています)。

1:直前3年の工事施工金額

C社の直前3年の各事業年度における工事施工金額は、以下の通りです。

事業年度 建築一式 塗装 防水 内装 合計
前々期 0 1,059,000 219,000 0 1,278,000
前期 0 1,228,000 253,000 89,000 1,570,000
今期 0 1,253,000 386,000 176,000 1,815,000

この金額を見れば、工事種類別年間平均完成工事高(X1)で選択すべきは、2年平均か?3年平均か?は、わかりますね。C社は建築一式を除くすべての業種で、前年度売上を上回っていますので、2年平均を採用する方が有利です。間違っても「今まで3年平均を選択していたから」とか「自社に有利な方を選択できるのを知らなかった」という理由で3年平均を選択することがないようにしてください。

2:売上高の「振替なし」の場合と「振替あり」の場合

それでは、C社の担当者が、売上高の振替という制度を知らなかったがために、売上高の振替を行わず、上記の4業種すべてで経審を受けていた場合のP点は、何点になったでしょうか?振替をしない場合には、上記の工事施工金額を基準に、それぞれの業種ごとにP点が算出されますので、以下の表の通りになります。

事業年度 建築一式 塗装 防水 内装
前期 0 1,228,000 253,000 89,000
今期 0 1,253,000 386,000 176,000
2期平均 0 1,240,500 319,500 132,500
P点 679 810 760 732

それでは、逆に塗装、防水、内装のすべての工事施工金額を建築一式に振り替えた場合はどうでしょう?この場合、塗装、防水、内装の工事施工金額の合計が建築一式の工事施工金額としてP点が算出されることになります(東京都の場合、振替元の業種では経審を受けることができないため、塗装、防水、内装のP点を取得することはできなくなります)。

事業年度 建築一式 塗装 防水 内装
前期 1,570,000 0 0 0
今期 1,815,000 0 0 0
2期平均 1,692,500 0 0 0
P点 854 なし なし なし

3:どちらが入札に有利かという視点

もし仮に、内装や防水で経審を受けてP点を取得しておいた方が入札に有利であるならば、売上高の振替は行いませんでした。なぜなら、内装や防水の売上高を建築一式に振り替えることによって、内装や防水で経審を受けることができなくなるからです。

しかし、C社が入札を目指している自治体の手引きを確認したところ、C社の希望する入札参加資格を取得するには、建築一式で経審を受けていることが条件になっていました。つまり、建築一式で経審を受けていなければならず、かつ、建築一式で経審を受けてさえいれば、そのほかの内装や防水のP点は関係なかったのです。内装や防水で経審を受ける必要がないのであれば、建築一式のP点を上げるためにも、内装や防水の売上高を建築一式に振り替えた方がよいということができます。

4:等級

C社が希望する入札の客観等級の一覧表は下記の通りです。実際に公表されている都内区市町村の入札の手引きから引用しました。

客観点数(P点) 客観等級
900点以上
750点以上900点未満
650点以上750点未満
600点以上650点未満
600点未満

仮に、C社が振替を行わないで経審を受けたとしたら、建築一式の客観点数(P点)は、679点ですので、客観等級はCです。一方で、振替を行った場合の建築一式の客観点数(P点)は、854点ですので、客観等級はBです。

最終的な等級の格付けには、主観点数をもとにした主観等級も判断の対象になるので、客観等級が最終的な等級のすべてを決定するわけではありません。しかし、C社にとっては、塗装、防水、内装の売上高を建築一式に振り替えて経審を受けた方が、P点がアップするとともに、経審後の入札参加資格申請における等級の格付けにおいても、有利であることがわかると思います。C社のケースは、売上高の振替を行ったほうがよいのか、しない方がよいのかを判断する上において、参考になる事例であると思います。


なお、売上高の振替については自治体ごとに取扱いが異なるようですので、十分に注意をしてください。また「どの業種で経審を受けていれば、どの工事の種類で入札に参加できるか?」といった判断も自治体により、バラバラです。C社のケースでは建築一式のP点を上げるために、いわば、内装・塗装・防水を犠牲にしました。しかし、内装・塗装・防水で経審を受けていないと(P点を取得していないと)、入札参加資格を取得できない業種もあります。

このあたりの取扱いには、行政書士である私も非常に神経を使うところですので、皆さんも慎重に確認するように心がけてください。


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【4】退職金制度を導入・整備して、点数アップを果たしたD社のケース

「建設業退職金共済制度への加入」および「退職一時金制度の導入」を行い、P点のアップを果たしたD社のケースをご紹介します。「第2章 内容編」で説明した「その他の審査項目(社会性等)(W)」に関する申請事例です。すぐにでもできる即効性の高いP点対策として参考になると思います。

1:過去2年間の完成工事高

D社の過去2年間の解体工事の完成工事高は、下記の表の通りです。経審の際には、2年平均を採用しています。

事業年度 元請 下請 解体工事の完成工事高
前期 6,000 192,000 198,000
今期 20,000 198,000 218,000
2年平均 13,000 195,000 208,000

2:必要な書類

D社は、9月末決算の会社でしたので、9月末までに「建退協への加入」および「退職一時期制度の導入」を行っていただきました。W点は、あくまでも審査基準日時点に加入しているか?導入しているか?が審査の基準になりますので、9月末を過ぎていたら、今回の経審では加点事由とならず、次回の経審に持ち越しになるところでした。

建退協は加入するだけでなく、証紙を購入し履行していることを証明する「建設業退職金共済事業加入・履行証明願書」が必要になります。また、退職一時金制度については、社会保険労務士に退職金に関する規定が明記されている就業規則を作成してもらったほか、労働基準監督署への届出を行ってもらい、監督署の届出印も押印してもらいました。経審の際には「建設業退職金共済事業加入・履行証明願書」および「労働基準監督署の届出印のある退職金規定(就業規則)」を必要書類として提示しました。

3:P点のシミュレーション

それでは、D社が、「雇用・健康・年金」の3保険に加入していて、かつ、法定外労災にも加入しており、営業年数25年目の会社であると想定して、「建退協」および「退職一時金」の対策を行わなかった場合と行った場合とで、点数のシミュレーションをしていきます。

(1)対策を行わなかった場合のW点

まずは、建退協への加入および退職一時金制度の導入を行わなかった場合のW点です。この場合、「建設業退職金共済制度加入の有無(15点)」「退職一時金制度若しくは企業年金制度導入の有無(15点)」については加点対象とならないため、W評点は656点になります。

  • (15+40+20)×10×175÷200=656点(小数点以下切り捨て)

(2)対策を行なった場合のW点

続いて、建退協への加入および退職一時金制度の導入を行った場合のW点です。の場合、「建設業退職金共済制度加入の有無(15点)」「退職一時金制度若しくは企業年金制度導入の有無(15点)」については加点対象となるため、W評点は918点になります。

  • (15+15+15+40+20)×10×175÷200=918点(小数点以下切り捨て)

(3)P点に換算すると

D社が建退協ならびに退職一時金の加入・導入状況を改善させる対策をとることによって、W点は656点から918点になり、262点アップしました。これをP点に換算すると、P点はWの点数に0.15を掛け算して算出するので、39点アップしたことになります。

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【5】出向社員10名を技術職員名簿に掲載したE社のケース

出向社員10名を技術職員名簿に記載することによって、電気工事のP点を18点(797点から815点に)、アップさせることができたE社のケースのご紹介です。E社は「出向社員が経審の加点事由になる」ということを知らず、前回の経審までは、技術職員名簿に出向社員を記載していなかったようです。

出向社員を技術職員名簿に記載した場合と、しなかった場合とで、P点にどのくらいの影響があるか?参考になるケースであると思います。

1:技術職員の内訳

E社の技術職員の内訳は、下記の表の通りです。E社には10名もの、出向社員として、審査基準日から起算して6か月を超える期間、常勤していました。

資格の種類 自社社員 出向者 合計
1級電気工事施工管理技士(講習受講あり) 2名 0名 2名
1級電気工事施工管理技士(講習受講なし) 1名 1名 2名
2級電気工事施工管理技士 0名 1名 1名
第1種電気工事士 3名 0名 3名
第2種電気工事士(実務経験3年以上) 0名 8名 8名
合計技術職員 6名 10名 16名

出向社員を除いた場合の技術職員の人数が6名、出向社員を含めた場合の技術職員の人数が16名。16名の技術職員のうち10名が出向社員ですから、この10名を技術職員名簿に記載しないと、P点に大きな影響が出ることは必至です。

電気工事に関する資格および技術職員区分に応じた点数は、下記の通りです。

技術職員区分 点数
・1級電気工事施工管理技士(講習受講あり) 6点
・1級電気工事施工管理技士(講習受講なし) 5点
・2級電気工事施工管理技士

・第1種電気工事士

2点
・第2種電気工事士(実務経験3年以上) 1点

2:両者の比較

それでは、技術職員名簿に出向社員を記載しなかった場合と、記載した場合との各点数の比較を行っていきましょう。順番としては「技術職員数値の算出→技術職員の数の点数の算出→Zの点数の算出→Z点をP点へ換算」という流れで説明していきたいと思います。

項目 出向社員なし 出向社員あり
①技術職員数値 23 38
②技術職員の数の点数 778 872
③Zの点数 622 697
④Z点をP点へ換算 156 174
⑤総合評定値P点 797 815

①技術職員数値の算出

まずは、出向社員「なし」と「あり」の場合とで、技術職員数値を算出してみましょう。技術職員数値の算出方法は、下記の通りですので、出向社員なしの場合の技術職員数値は23点、出向社員ありの場合の技術職員数値は38点になります。

1級監理受講者数×6+1級技術者数×5+1級技士補×4+基幹技能者×3+2級技術者×2+その他技術者×1
  • 出向社員なし 6×2+5×1+2×3=23
  • 出向社員あり 6×2+5×2+2×4+1×8=38

②技術職員の数の点数の算出

続いて、技術職員の数の点数を算出します。技術職員の数の点数は、①で算出した技術職員数値を下記の表にあてはめることによって算出することができます。出向社員なしの場合の技術職員の数の点数は778点、出向社員ありの場合の技術職員の数の点数は872点になります。

技術職員数値 点数
30以上40未満 63×(技術職員数値)÷10+633
20以上30未満 62×(技術職員数値)÷10+636

※小数点以下、切り捨て

③Zの点数の算出

技術職員が何人いるか?は、Zの審査項目ですので、②に続いてZの点数を算出します。Zの点数は「技術職員の数の点数に0.8を掛け算したもの」と「元請完成工事高の点数に0.2を掛け算したもの」との合計で算出します。

Z=技術職員の数の点数×0.8+元請完成工事高の点数×0.2(※少数点以下、切り捨て)

但し、出向社員なしと出向社員ありを比較する場合において、元請完成工事高の点数に変わりはないので、ここでは、元請完成工事高の点数については、考慮しません。そうすると出向社員なしの場合のZの点数は622点、出向社員ありの場合のZの点数は697点になります。

④Z点をP点へ換算

P点は、「0.25(X1)+0.15(X2)+0.20(Y)+0.25(Z)+0.15(W)」という計算式によって、算出されますので、上記のZの点数をそれぞれP点換算すると、以下のようになります(小数点以下、四捨五入)。

  • 出向社員なしの場合のP点は622×0.25=156点
  • 出向社員ありの場合のP点は697×0.25=174点

になります。出向社員10名を技術職員名簿に記載することによって、P点が18点アップしています。

3:P点の比較

以上の計算によって、出向社員10名を技術職員名簿に掲載した場合の、P点への影響について理解いただけたかと思います。出向社員を技術職員名簿に掲載しなかった場合のZ(技術職員数)のP点は156点、出向社員を技術職員名簿に掲載した場合のZ(技術職員数)のP点は174点。両者の比較において、X1やYなどほかの審査項目に変更はないので、出向社員10名を技術職員名簿に掲載するというだけで、最終的には、P点を797点から815点にすることができたケースになります。

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【6】完成工事高=3年平均、自己資本額=2期平均を選択したF社のケース

事業年度 機械器具設置工事の完成工事高 自己資本額
前々期 389,000千円 40,000千円
前期 201,000千円 23,000千円
今期 158,000千円 -12,000千円

※完工高は、すべて民間元請

F社は、東京都内にある機械器具設置工事の会社です。機械器具設置工事以外に製品の製造・販売もおこなっているため、完成工事高の減少が直ちに会社全体の業績に直結するわけではありませんが、今期の完成工事高が前々期の半分以下になるなど、かなり厳しい状況にあることは間違いありません。F社のように「完成工事高」「自己資本額」が減少しつつある会社が経審を受ける際には、どのような点に注意するべきでしょうか?

1:完成工事高の選び方

まず、年間平均完成工事高(X1)と年間平均元請完成工事高(Z)の「2年平均か?3年平均か?」に注意する必要があります。完成工事高に関しては、下記の計算式にある通り、2年平均を選択するより、3年平均を選択する方が有利です。

  • 2年平均=(201,000+158,000)÷2=179,500千円
  • 3年平均=(389,000+201,000+158,000)÷3=249,333千円

そのため、項番31の「計算基準の区分」は「1.2年平均」ではなく「2.3年平均」を選択します。

2:自己資本額の選び方

続いて、完成工事高の減少により、自己資本額も前々期→前期→今期と目減りしてきています。自己資本額(X2)は「基準決算か?2期平均か?」を選択することができます。F社の場合は、下記の通り基準決算を選択するより、2期平均を選択する方が有利です。

  • 基準決算=-12,000千円
  • 2期平均=(-12,000+23,000)÷2=5,500千円

3:組み合わせの仕方

ここまで見てきたように経審の際には、完成工事高の「2年平均・3年平均」と、自己資本額の「基準決算・2期平均」を選択して使い分けることができます。組み合わせの仕方は下記の通り全部で4種類(①~④)になります。

完成工事高 自己資本額
2年平均 基準決算(①)
2期平均(②)
3年平均 基準決算(③)
2期平均(④)

4:P点

簡単な計算をすることによって、完成工事高を「2年平均にすべきか?3年平均にすべきか?」や、自己資本額を「基準決算にすべきか?2期平均にすべきか?」は、すぐにわかると思います。但し、最終的にP点がどれほど変わってくるのか?という話になると、経審ソフトを用いたシミュレーションが必要です。

下記の数字は、実際に経審ソフトを用いて、F社が①~④を選択した際のP点の結果をシミュレーションしたものです。

  • ①を採用した際のP点=725点
  • ②を採用した際のP点=734点
  • ③を採用した際のP点=737点
  • ④を採用した際のP点=747点

最高得点747点(④)と最低得点725点(①)との間には、22点もの開きがあります。これは、数字を修正したり、金額を訂正したり、技術職員名簿の記載を追加したりしたわけではありません。完成工事高と自己資本額の組み合わせ・選択の仕方を変えるだけで、22点もの開きが出てきてしまうのです。

工事種類別年間平均完成工事高(X1)および工事種類別年間平均元請完成工事高(Z)で「2年平均を選択するのか?3年平均を選択するのか?」、自己資本額(X2)で「基準決算を選択するのか?2期平均を選択するのか?」によって、P点が、大きく変わってくることが、お分かりいただけたかと思います。

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最後までお読みいただきありがとうございます。「第3章:内容編~モデルケースのご紹介~」は、ここまでです。6社のP点アップの成功事例をまとめましたが、すぐに活用できそうな事例はございましたでしょうか?

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