経審の点数を上げるには、どのような準備をすればよいですか?

相談者:建設会社総務部長

今回、はじめて経営事項審査を受ける予定です。スマートサイドさんのホームページには、いろいろな情報が掲載されており参考にしています。できれば東京都の建築工事のCランク以上の等級を狙っていきたいのですが、経審でよい点数を取るには、どのような準備をすればよいのでしょうか?

回答者:行政書士

弊所のホームぺージをご覧いただいているとのこと、ありがとうございます。東京都の建築工事のCランクを獲得するには、経営事項審査の結果である総合評定値P点が、650点以上なければなりません。P点の平均は、700点前後と言われていますので、平均より少し低いくらいの点数を確実に取れるように準備が必要です。

「経審の点数を上げるには、どのような準備をすればよいか?」というのは、とてもよくある質問です。相談者さま(総務部長)のように、「できれば❝〇ランク❞以上の等級が欲しい」という明確な希望がある場合には、なおさら、経審準備がものを言います。そこで、このページでは、経審を初めて受ける人のために、経審点数を上げるために必要な準備について、解説していきたいと思います。

総合評定値P点の審査項目や算出方法

経営事項審査は、さまざまな項目を審査の対象にしており、複雑な計算式を用いて、総合評定値P点を算出します。審査項目は、以下の通りです。

項目区分 記号 審査項目
経営規模 X1 完成工事高(業種別)
X2 自己資本額
利払前税引前償却前利益の額
技術力 技術職員数(業種別)
元請完成工事高(業種別)
その他の審査項目

(社会性等)

建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組の状況
建設業の営業継続の状況
防災活動への貢献の状況
法令遵守の状況建設業の経理の状況
研究開発の状況
建設機械の保有状況国又は国際標準化機構が定めた規格による認証又は登録の状況
経営状況 負債抵抗力
収益性・効率性
財務健全性
絶対的力量

また、総合評定値P点は、以下の計算式によって算出されます。

  • 0.25(X1評点)+0.15(X2評点)+0.20(Y評点)+0.25(Z評点)+0.15(W評点)

参照:「国土交通省 関東地方整備局 建政部 建設産業第一課 令和7年4月版 手引きP4」

さらに、総合評定値P点の平均点は700点前後とされておりいます。

  • 900点台以上=優良
  • 800点台=良
  • 700点台=普通
  • 600点台=やや悪い
  • 500点台以下=悪い

東京都の場合、公共工事でCランクを獲得するには、650点以上のP点が必要です。650点というと、普通より少し悪い(低い)くらいの印象ですので、きちっとした準備をすれば、初めての経審でも狙うことができない点数ではありません(東京都公報 特定調達公告版 参照)。

初心者が絶対に抑えておきたい3つの加点事由

それでは、はじめて経審を受ける会社が、平均点もしくは平均点よりやや低いくらいの点数を確実に取得するには、どのような準備が必要になってくるのでしょうか?

実は、初心者が絶対に抑えておきたい3つの加点事由というのがあります。それが、「その他の審査項目(社会性等):W」の中の「建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組の状況」の中にある「建設業退職金共済制度加入の有無」「退職一時金制度若しくは企業年金制度導入の有無」「法定外労働災害補償制度加入の有無」の3点です。

建設業退職金共済制度加入の有無

審査基準日(直前の決算日)において、「独立行政法人勤労者退職金共済機構」と、特定業種退職金共済契約を締結し、かつ、建設業退職金共済事業加入履行証明書を発行してもらえる場合には、加点事由となります。

加入・履行証明書の発行については、建退協東京支部のホームぺージをご参照ください。

退職一時金制度又は企業年金制度導入の有無

審査基準日(直前の決算日)において、退職一時金制度又は企業年金制度を導入している場合には、加点事由となります。中小企業退職金共済制度または特定退職金共済団体制度に加入している場合は、加入証明書が必要になります。自社で退職金制度を導入している場合には、労働基準監督署の届出印又は従業員代表者の意見書が添付されている就業規則が必要になります。企業年金制度を導入している場合には、領収書や加入証明書などが必要になります。

法定外労働災害補償制度加入の有無

審査基準日(直前の決算日)において、法定外労働災害補償制度に加入している場合には、加入証明書を提示することによって、加点事由となります。法定外労働災害補償制度とは、政府の労働災害補償制度とは別に、上乗せ給付などを目的とするもので、以下の4つの条件を全て満たしていることが必要です。

  • (ア)業務災害と通勤災害を担保していること
  • (イ)死亡および労働災害補償保険の傷害等級第1級から7級までを補償していること
  • (ウ)直接の使用関係にある下請負人の直接使用関係にある職員全てを対象にしていること
  • (エ)当該申請者が施工する全工事を補償していること

P点に換算すると、何点加点になるか?

「建設業退職金共済制度」「退職一時金制度又は企業年金制度」「法定外労働災害補償制度」に加入していると、経営事項審査でどれくらい有利になるのでしょうか?

制度名 加点事由
建設業退職金共済制度 15
退職一時金制度又は企業年金制度 15
法定外労働災害補償制度 15

Wの評点は、上記の点数に「10×175÷200」を乗じて、求めることができます。

  • 1つの場合:15×10×175÷200=131.25
  • 2つの場合:30×10×175÷200=262.5
  • 3つの場合:45×10×175÷200=393.75

というように、W評点が加点されます。このW評点をP点に換算するには、上記のW評点に「×0.15」をする必要があります。つまり

P点に換算した結果
  • 1つの場合:131.25×0.15=20点(小数点以下四捨五入)
  • 2つの場合:262.5×0.15=39点(少数点以下四捨五入)
  • 3つの場合:393.75×0.15=59点(小数点以下四捨五入)

の点数がP点に加算される計算になります。

この加点率がどれだけすごいかと言うと業種別完成工事高が1億円、2億円、3億円のそれぞれの場合について、見ていくと

  • 業種別完成工事高が1億円の場合のP点=178点
  • 業種別完成工事高が2億円の場合のP点=197点
  • 業種別完成工事高が3億円の場合のP点=211点

ですので、業種別完成工事高が1億円から3億円になった時、つまり33点アップ(=211点-178点)した時よりも、加点率が大きいことがお分かりいただけると思います。

業種別完成工事高を、1億円から3億円に一気に3倍にするということは、いくら経審対策だからと言っても考えにくく、現実性がありません。しかしその一方で、審査基準日(決算日)までに「退職金制度を導入する」とか「法定外労災に加入する」という対策は、十分に取ることが可能です。

そのため、これから経審を受ける会社が、経審の点数を上げたいという場合には、必ず、審査基準日(決算日)までに、「建設業退職金共済制度」「退職一時金制度又は企業年金制度」「法定外労働災害補償制度」の3つを導入・加入するように準備すると良いでしょう。

経審の点数を上げたいとお考えの建設会社さまへ

行政書士

これから経審をはじめて受けるという人は、時間に余裕があるときに必ず「建退共」「退職金」「法定外労災」の3つの制度の加入・導入を検討しておきましょう。決算日までに加入すれば今回の経審で評価の対象となり最大でP点が59点アップします。仮に何の準備もしないで経審に臨むとなると59点を失うことになるので、かなり低い評価になってしまうことが想定されます。売上高アップを目指すよりも、まずは、3つの制度への加入を検討してみてください。

最後までお読み頂きありがとうございます。経営事項審査の計算式や評価項目といった細かいところまで、説明をしたので、少しわかりにくかったかもしれませんが、要は、「建退共」「退職金」「法定外労災」については、決算日まできちんと加入して、経審を迎えてくださいねという話です。

公共工事を落札している多くの会社が「建退共」「退職金」「法定外労災」の3つの制度に加入し、確実に、点数を取っている現状があります。弊所のお客さまの中でも、公共工事を落札している会社で、3つの制度に加入していない会社は「ない」といっていいくらい、どの会社も加入しています。

下の画像は、経営事項審査の結果通知書です。赤く囲った部分が、「建設業退職金共済制度」「退職一時金制度又は企業年金制度」「法定外労働災害補償制度」の加入・導入の有無をあらわしているところです。

実は、この結果通知書(経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書)は、公表されています。そのため、誰でも自由に他の会社の経審結果を閲覧することができます(参照:一般財団法人建設業情報管理センター「経営事項審査結果の公表」のページ)。

これを見ることによって、みなさんの同業や競争相手が、何点を取得しているのか?どんな評価項目で点数を獲得しているのか?分析をすることができます。

こういった材料を使いながら、経営事項審査の対策を取っていくのも1つの手段です。

行政書士法人スマートサイドでは、「相談者1人1人への適切な対応・質の高い面談時間の確保」の見地から、事前予約制の有料相談を実施しています(詳しくはこちら)。たったの1時間で、御社の経営事項審査や東京都の入札手続きに関する不安を解消し、実践的で具体的なアドバイスをさせて頂くことが可能です。

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