経営事項審査の「X2評点(自己資本額・利益額)」を徹底解説

経営事項審査の評価項目の中には、売上高(X1)や技術力(Z)のほかに、「自己資本額・利益額(X2)」という評価項目があります。売上高や技術力または社会性の項目と比べて、マイナーな評価項目なので、あまり詳しくない人も多いでしょう。また、「自己資本額」といっても、何を表しているのか?「利益額」というのは、どこの利益を指しているのか?判然としないかもしれません。

そこで、このページでは、経営事項審査の評価項目である「自己資本額・利益額(X2)」に着目して、意味や仕組みやX2評点を上げるためのコツについて、記載していきたいと思います。

審査区分 記号 審査項目
経営規模
X1 業種別完成工事高
X2 自己資本額/利払前税引前償却前利益の額
技術力 技術職員数/元請完成工事高
社会性など 建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組状況など
経営状況 負債抵抗力/収益性・効率性/財務健全性/絶対的力量

経営事項審査では、上記の表のように「経営規模」「技術力」「社会性」「経営状況」の4つの審査区分を設けて、それぞれ、X1評点、X2評点、Z評点、W評点、Y評点を算出し、最終的に経営事項審査の結果である総合評定値P点を導き出します。X2評点は、X1やZ、W、Yと並んで、総合評定値P点の構成要素となっています。

「自己資本額及び利益額」(X2)とは

「自己資本額及び利益額(X2)」は、工事種類別完成工事高(X1)と並んで、会社の経営規模を表す指標です。一般的に、自己資本額や利益額が高ければ、つぶれにくい会社と評価されます。特に、これから入札に参加して公共工事を受注しようという建設会社が、いまにも倒産してしまいそうな財務状況でよいはずありませんし、そういった会社に公共工事を落札させるわけにはいきません。

「公共工事の途中で会社が倒産してしまった」という事態を避けるためにも、経営事項審査では、わざわざ、「自己資本額・利益額」という審査項目を設けて、X2評点として、その会社の「健全性(つぶれにくさ、倒産しにくさ)」を評価しているのです。

このX2評点は、「自己資本額の点数(X21)」と「平均利益額の点数(X22)」の合計点を2で割った数値(小数点以下切り捨て)です。X2評点を算出するための計算方法は以下の通りです。

自己資本額・利益額(X2評点) {自己資本額の点数(X21)+平均利益額の点数(X22)}÷2

経営事項審査の結果である総合評定値(P点)は、上記計算式によって、算出されたX2評点に、0.15を掛け算して、他の審査項目の点数を加算して求められます。

総合評定値(P点) 0.25(X1)+0.15(X2)+0.20(Y)+0.25(Z)+0.15(W)

以下では、「自己資本額の点数(X21)」と「平均利益額の点数(X22)」に分けて説明を進めていきたいと思います。

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自己資本額の点数(X21)

経営事項審査の結果である総合評定値P点の一部を構成するのが、X2評点です。そして、X2評点の一部を構成するのが「自己資本額の点数(X21)」です。それでは、「自己資本額の点数(X21)」は、どのように算出されるのでしょうか?

まず、自己資本額は、財務諸表の中の貸借対照表に記載されている「純資産の額」を言います。自己資本とは、会社が調達した資金のうち、他の人から借り入れした資金(負債)を除いた、会社が他の人に返さなくてよい金額の総額のことです。自己資本額(純資産)が大きければ大きいほど、他人に返すお金が少なくて済むということですから、結果として、会社の財務状況は万全で、つぶれにくく、倒産しにくい健全な会社という評価を受けることができます。

「自己資本額の点数(X21)」の算出方法

それでは、「自己資本額の点数(X21)」は、どうやって算出するのでしょうか?以下のテーブル表をご覧ください。「自己資本額の点数(X21)」は、「自己資本の額又は平均自己資本額」に対応した左側の計算式をあてはめて算出します。

自己資本の額又は平均自己資本額 点 数(X21)の計算式
以上省略 以上省略
2,500万円以上3,000万円未満 10×(自己資本額)÷5,000+579
2,000万円以上2,500万円未満 12×(自己資本額)÷5,000+569
1,500万円以上2,000万円未満 14×(自己資本額)÷5,000+561
以下省略 以下省略

自己資本の額が、15,000千円の場合

自己資本の額が、15,000千円の場合、15,000千円は、「1,500万円以上2,000万円未満」に該当するわけですから、「14×(自己資本額)÷5,000+561」の計算式をあてはめることになります。そうすると603点がX21の評点になります。

  • 14×15,000÷5,000+561=603点

自己資本の額が、22,000千円の場合

自己資本の額が、22,000千円の場合は、どうでしょう?自己資本額が、22,000千円ということは、テーブル表(左側)の「2,000万円以上2,500万円未満」に該当するわけですから、「12×(自己資本額)÷5,000+569」の計算式をあてはめることになります。そうすると621点(少数点以下切り捨て)がX21の評点になります。

  • 12×22,000÷5,000+569=621点

自己資本額が、25,000千円の場合

最後に、自己資本額が25,000千円の場合は、どうでしょう?自己資本額が、25,000千円ということは、テーブル表(左側)の「2,500万円以上3,000万円未満」に該当します。そのため「10×(自己資本額)÷5,000+579」の計算式をあてはめます。その結果、629点がX21の評点になります。

  • 10×25,000÷5,000+579=629点

「基準決算」か?「2期平均」か?

なお、経審の際には、自己資本額を「基準決算」もしくは「2期平均」のどちらか良い方を選択することができます。

例えば、第7期の自己資本額が80,000千円で、第8期の自己資本額が70,000千円だった場合。第8期の基準決算を「自己資本額」に採用すると、X21の点数は689点です。しかし、第7期と第8期を比較すると、第8期の方が、自己資本額が低いのですから、第8期の額(すなわち基準決算)を採用するのは得策ではありません。

この場合、X21の点数、X2の点数、ひいては経営事項審査の結果であるP点をよりよくしたいと考えるのであれば、第7期と第8期の2期平均額(75,000千円)を採用するべきなのです。2期平均(75,000千円)を採用した結果、X21の点数は694点になります。

基準決算(自己資本額70,000千円) 19×70,000÷20,000+623=689点
2期平均(自己資本額75,000千円) 19×75,000÷20,000+623=694点

たかが5点と思うかもしれませんが、されど5点です。自己資本額で「基準決算」を採用するか?「2期平均」を採用するか?で結果が異なるわけですから、自社にとって少しでも、有利な点数を選択して、申請することをお勧めします。なお、参考までに申請書類の該当箇所を添付します。以下の書類の「項番17」が、「自己資本額(基準決算もしくは2期平均)」を記載する箇所になります。

自己資本額の点数(X21)の計算式の一覧

自己資本の額又は平均自己資本額 点 数(X21)の計算式
3,000億円以上 2114
2,500億円以上3,000億円未満 63×(自己資本額)÷50,000,000+1,736
2,000億円以上2,500億円未満 73×(自己資本額)÷50,000,000+1,686
1,500億円以上2,000億円未満 91×(自己資本額)÷50,000,000+1,614
1,200億円以上1,500億円未満 66×(自己資本額)÷30,000,000+1,557
1,000億円以上1,200億円未満 53×(自己資本額)÷20,000,000+1,503
800億円以上1,000億円未満 61×(自己資本額)÷20,000,000+1,463
600億円以上800億円未満 75×(自己資本額)÷20,000,000+1,407
500億円以上600億円未満 46×(自己資本額)÷10,000,000+1,356
400億円以上500億円未満 53×(自己資本額)÷10,000,000+1,321
300億円以上400億円未満 66×(自己資本額)÷10,000,000+1,269
250億円以上300億円未満 39×(自己資本額)÷5,000,000+1,233
200億円以上250億円未満 47×(自己資本額)÷5,000,000+1,193
150億円以上200億円未満 57×(自己資本額)÷5,000,000+1,153
120億円以上150億円未満 42×(自己資本額)÷3,000,000+1,114
100億円以上120億円未満 33×(自己資本額)÷2,000,000+1,084
80億円以上100億円未満 39×(自己資本額)÷2,000,000+1,054
60億円以上80億円未満 47×(自己資本額)÷2,000,000+1,022
50億円以上60億円未満 29×(自己資本額)÷1,000,000+989
40億円以上50億円未満 34×(自己資本額)÷1,000,000+964
30億円以上40億円未満 41×(自己資本額)÷1,000,000+936
25億円以上30億円未満 25×(自己資本額)÷500,000+909
20億円以上25億円未満 29×(自己資本額)÷500,000+889
15億円以上20億円未満 36×(自己資本額)÷500,000+861
12億円以上15億円未満 27×(自己資本額)÷300,000+834
10億円以上12億円未満 21×(自己資本額)÷200,000+816
8億円以上10億円未満 24×(自己資本額)÷200,000+801
6億円以上8億円未満 30×(自己資本額)÷200,000+777
5億円以上6億円未満 18×(自己資本額)÷100,000+759
4億円以上5億円未満 21×(自己資本額)÷100,000+744
3億円以上4億円未満 27×(自己資本額)÷100,000+720
2億5,000万円以上3億円未満 15×(自己資本額)÷50,000+711
2億円以上2億5,000万円未満 19×(自己資本額)÷50,000+691
1億5,000万円以上2億円未満 23×(自己資本額)÷50,000+675
1億2,000万円以上1億5,000万円未満 16×(自己資本額)÷30,000+664
1億円以上1億2,000万円未満 13×(自己資本額)÷20,000+650
8,000万円以上1億円未満 16×(自己資本額)÷20,000+635
6,000万円以上8,000万円未満 19×(自己資本額)÷20,000+623
5,000万円以上6,000万円未満 11×(自己資本額)÷10,000+614
4,000万円以上5,000万円未満 14×(自己資本額)÷10,000+599
3,000万円以上4,000万円未満 16×(自己資本額)÷10,000+591
2,500万円以上3,000万円未満 10×(自己資本額)÷5,000+579
2,000万円以上2,500万円未満 12×(自己資本額)÷5,000+569
1,500万円以上2,000万円未満 14×(自己資本額)÷5,000+561
1,200万円以上1,500万円未満 11×(自己資本額)÷3,000+548
1,000万円以上1,200万円未満 8×(自己資本額)÷2,000+544
1,000万円未満 223×(自己資本額)÷10,000+361

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平均利益額の点数(X22)

ここまでは、X2のうち、「自己資本額(X21)の点数」について見てきましたが、X2を構成するのは、X21のみではありません。X2を構成する要素として、もう1つ「平均利益額の点数(X22)」というものがあります。X2評点は、「自己資本額の点数(X21)と平均利益額の点数(X22)を足して、2で割る」ことによって算出します。そこで、以下では、「平均利益額の点数(X22)」について、解説していきたいと思います。

自己資本額・利益額(X2評点) {自己資本額の点数(X21)+平均利益額の点数(X22)}÷2

利益額とは?

まず、前提として、平均利益額の「利益額」が、何を表しているか?言葉の定義を明確にしなければなりません。税理士の先生が作成した決算書を見ると、「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前利益」「当期純利益」といったように5つの「利益」が記載されていると思います。他方、経営事項審査の際に、X2で評価の対象となる平均利益額(X22)の利益額とは、「営業利益」に「減価償却実施額」を足した額を言います。

「営業利益」は、「売上高」から「売上原価」と「販売費および一般管理費」を差し引いた後に出てくる利益の額で、「企業が本業で稼いだ利益」を言います。これにより、企業の主要な事業活動が、どれだけ効率的か?または収益性があるか?を判断することができます。いわば、その会社の本当の実力を見極めるために用いられます。

「減価償却実施額」は、会社の会計上は、費用として計上されているものの、実際には、現金の流出を伴わない費用のことを言います。現金の流出を伴っていないため、営業利益に減価償却実施額を足し算して、会社の収益力を評価するわけです。

なお、減価償却実施額の説明については、以下のChatCPTによる回答がわかりやすいと思いますので、以下、引用いたします。

企業が事業を行うためには、様々な設備や機械などの資産を購入する必要があります。仮に、建設会社が新しい建設機械を買ったとします。この機械は一度購入すると、何年も使用することができますが、使っているうちに古くなっていき、最終的には使えなくなります。つまり、その機械の価値は徐々に下がっていくわけです。

しかし、会社の会計では、この機械の価値が下がっていく状況を、毎年一定額、「減価償却費」として計上することにより表現します。

例えば、1000万円で購入した機械が10年で価値がゼロになると想定した場合、毎年100万円が減価償却費として計上されます。 ここで重要なのは、この減価償却費100万円は、実際にはその年に100万円が支出されるわけではないという点です。

機械は初めに全額支払いをして購入されており、その後の減価償却費は、機械の価値が下がっていることを会計上で表すためのもので、実際の現金の流出(支払い)は伴いません。 つまり、減価償却費として計上される額は、会社の費用として計上されますが、実際にその金額が支出されるわけではなく、あくまで会計上の処理であるという意味です。

このように、減価償却費を考慮することは、企業が実際にどれだけの現金を稼いでいるか(現金流入)を把握する上で重要になります。

経審の評価対象となる平均利益額(X22)とは?

経審の対象となる平均利益額(X22)は、「審査対象事業年度」の「営業利益+減価償却実施額」と「前審査対象事業年度」の「営業利益+減価償却実施額」の平均額になります。以下のように、審査対象事業年度の営業利益が「3,000千円」減価償却実施額が「1,500千円」で、前審査対象事業年度の営業利益が「4,000千円」減価償却実施額が「2,000千円」の場合。

利益額が、それぞれ、審査対象事業年度は4,500千円、前審査対象事業年度は6,000千円となり、平均利益額(X22)は、(4,500+6,000)÷2=5,250千円になります。

年度 営業利益 減価償却実施額 利益額
審査対象事業年度 3,000千円 1,500千円 4,500千円
前審査対象事業年度 4,000千円 2,000千円 6,000千円

「平均利益額の点数(X22)」の算出方法

「平均利益額(X22)」の点数は、どのように算出されるのでしょうか?「平均利益額(X22)」の点数も、「自己資本額(X21)」と同様に、テーブル表に記載されている計算式にあてはめて、点数を算出します。

平均利益額 点 数(X22)の計算式
以上、省略 以上、省略
1,500万円以上2,000万円未満 11×(平均利益額)÷5,000+605
1,200万円以上1,500万円未満 7×(平均利益額)÷3,000+603
1,000万円以上1,200万円未満 6×(平均利益額)÷2,000+595
1,000万円未満 78×(平均利益額)÷10,000+547

たとえば、上の例では、項番18にある通り、平均利益額は5,250千円でした。5,250千円は、1,000万円未満に該当するので、「78×(平均利益額)÷10,000+547」の計算式にあてはめることになります。そうすると、X22は、587点(少数点以下切り捨て)になります。

  • 78×5,250÷10,000+547=587点

それでは、平均利益額が13,000千円だった場合、「平均利益額(X22)」は、何点になるでしょう?13,000千円は、1,500万円以上2,000万円未満に該当するので、「7×(平均利益額)÷3,000+603」の計算式にあてはめることになります。そうすると、X22は、633点(小数点以下切り捨て)になります。

  • 7×13,000÷3,000+603=633点

「平均利益額の点数(X22)」の計算式の一覧

「平均利益額の点数(X22)」は、下記の計算式にあてはめることによって、算出することができます。平均利益額が0円に満たない場合には、0円として計算することになります。最低額の0円から、最高額の300億円まであります。ぜひ、自社の平均利益額を計算して、X22の点数がいくらになるのか?確認をしてみてください。

平均利益額 点 数(X21)の計算式
300億円以上 2447
250億円以上300億円未満 134×(平均利益額)÷5,000,000+1,643
200億円以上250億円未満 151×(平均利益額)÷5,000,000+1,558
150億円以上200億円未満 175×(平均利益額)÷5,000,000+1,462
120億円以上150億円未満 123×(平均利益額)÷3,000,000+1,372
100億円以上120億円未満 93×(平均利益額)÷2,000,000+1,306
80億円以上100億円未満 104×(平均利益額)÷2,000,000+1,251
60億円以上80億円未満 122×(平均利益額)÷2,000,000+1,179
50億円以上60億円未満 70×(平均利益額)÷1,000,000+1,125
40億円以上50億円未満 79×(平均利益額)÷1,000,000+1,080
30億円以上40億円未満 92×(平均利益額)÷1,000,000+1,028
25億円以上30億円未満 54×(平均利益額)÷500,000+980
20億円以上25億円未満 60×(平均利益額)÷500,000+950
15億円以上20億円未満 70×(平均利益額)÷500,000+910
12億円以上15億円未満 48×(平均利益額)÷300,000+880
10億円以上12億円未満 37×(平均利益額)÷200,000+850
8億円以上10億円未満 42×(平均利益額)÷200,000+825
6億円以上8億円未満 48×(平均利益額)÷200,000+801
5億円以上6億円未満 28×(平均利益額)÷100,000+777
4億円以上5億円未満 32×(平均利益額)÷100,000+757
3億円以上4億円未満 37×(平均利益額)÷100,000+737
2億5,000万円以上3億円未満 21×(平均利益額)÷50,000+722
2億円以上2億5,000万円未満 24×(平均利益額)÷50,000+707
1億5,000万円以上2億円未満 27×(平均利益額)÷50,000+695
1億2,000万円以上1億5,000万円未満 20×(平均利益額)÷30,000+676
1億円以上1億2,000万円未満 15×(平均利益額)÷20,000+666
8,000万円以上1億円未満 16×(平均利益額)÷20,000+661
6,000万円以上8,000万円未満 19×(平均利益額)÷20,000+649
5,000万円以上6,000万円未満 12×(平均利益額)÷10,000+634
4,000万円以上5,000万円未満 12×(平均利益額)÷10,000+634
3,000万円以上4,000万円未満 15×(平均利益額)÷10,000+622
2,500万円以上3,000万円未満 8×(平均利益額)÷5,000+619
2,000万円以上2,500万円未満 10×(平均利益額)÷5,000+609
1,500万円以上2,000万円未満 11×(平均利益額)÷5,000+605
1,200万円以上1,500万円未満 7×(平均利益額)÷3,000+603
1,000万円以上1,200万円未満 6×(平均利益額)÷2,000+595
1,000万円未満 78×(平均利益額)÷10,000+547

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X2={自己資本額の点数(X21)+平均利益額の点数(X22)}÷2

「自己資本額の点数(X21)」と「平均利益額の点数(X22)」の意味や求め方は、理解いただけましたでしょうか?

以下、まとめると

【自己資本額の点数:X21】

  • 自己資本額とは、貸借対照表の純資産の額を言う
  • 基準決算か2期平均か、どちらか良い方を選択することができる

【平均利益額の点数:X22】

  • 利益額とは、営業利益に減価償却実施額を足した額を言う
  • 審査対象事業年度と前審査対象事業年度の2期分の平均を用いる
  • 自己資本額のように、どちらか良い方を選択することができるわけではない

ということができます。

X2評点(自己資本額・利益額)の算出方法

このページの一番初めに書いたように経営事項審査の審査項目である「X2(自己資本額・利益額)」は、「{自己資本額の点数(X21)+平均利益額の点数(X22)}÷2」という計算式を使って算出することができます。

自己資本額・利益額(X2評点) {自己資本額の点数(X21)+平均利益額の点数(X22)}÷2

そこで、以下では、ここまで実際に使ってきた数字をもとに、最終的なX2評点を一緒に算出していきたいと思います。まずは、純資産の額、利益の額の状況は以下の通りです。

純資産の額

純資産の額
審査対象事業年度 70,000千円
前審査対象事業年度 80,000千円

利益の額

審査対象事業年度の

利益額

営業利益 3,000千円
減価償却実施額 1,500千円
前審査対象事業年度の

利益額

営業利益 4,000千円
減価償却実施額 2,000千円

「純資産の額」からX21の点数を

純資産の額=自己資本額は、審査対象事業年度が70,000千円、前審査対象事業年度が80,000千円なので、「基準決算(=70,000千円)」を採用するよりも、「2期平均=(70,000千円+80,000千円)÷2)=75,000千円」を採用したほうがよいです。そこで、この場合には、2期平均を採用し、「項番17」には、75,000千円と入力します。

その結果X21の点数は

  • 19×75,000÷20,000+623=694点

となります。

「利益の額」からX22の点数を

上記の利益の額を計算すると、平均利益額は{(3,000千円+1,500千円)+(4,000千円+2,000千円)}÷2=5,250千円となります。そのため、「項番18」には、5,250千円と入力します。

その結果X22の点数は

  • 78×5,250÷10,000+547=587点

となります。

X2の評点は?

X21の点数が「694点」で、X22の点数が「587点」ですのでX2評点は、640点((694+587)÷2)になります。

(経営事項審査の申請書の「項番17」および「項番18」の記載)

(経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書に記載されるX2評点)

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X2評点を上げるには?

このページでは、経営事項審査の審査項目である「自己資本額及び利益額(X2評点)」を「自己資本額(X21)」と「利益額(X22)」に分解して、説明をしてきました。それぞれの仕組みや計算式については、おおむねご理解いただけたかと思います。

それでは、今後、経営事項審査の結果である総合評定値P点、または「自己資本額及び利益額」の評点であるX2の点数を上げていくには、どうしたら良いのでしょうか?

まず、対策の1つ目として、「増資を行い、自己資本額を増やす」という方法が考えられます。一般財団法人建設業情報管理センターの令和4年度の分析によると、建設業全体では、自己資本比率が39%となっています。その水準を考慮し、自社の総資本における自己資本額の割合を検討してみると良いでしょう。また、自己資本がマイナスの場合、債務超過となり、金融機関からの借り入れが難しくなるなど、今後の企業の継続に直結することになります。経営事項審査の結果をよくするためには、もちろんのこと、将来の会社経営のためにも、自己資本を充実させることは重要です。

また、対策の2つ目は、毎年毎年、きちんと利益を計上することです。自己資本は、大きく分けると「資本金」と「繰越利益剰余金」からなります。「繰越利益剰余金」は、毎期の利益の積み増しです。利益が大きくなると、それに伴って税金の額も大きくなります。税金を払うことに抵抗があるからといって、節税対策を行い過ぎると、利益が残りません。節税対策も重要かもしれませんが、毎年、毎年、利益を計上し、繰越利益剰余金の額を大きくし、ひいては、自己資本額や利益額の点数が向上するように、常日ごろから意識していくように心がけてください。

以上のように、自己資本額・利益額の点数を、一朝一夕にアップさせる方法はありません。増資などの特殊な方法を除いては、利益の積み増しを計っていくしかないのです。

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