・東京都の公共工事の入札参加資格を取得したらCランクだった
・ずっとEランクだけど、どうやったらランクアップできるのか?
こうした等級(ランク)に関する悩みの根本的な原因は、「東京都の公共工事の等級格付基準」を明確に理解できていないことにあります。東京都の公共工事の等級格付は、「客観等級と主観等級を比較して、より低い等級が最終等級になる」という特殊な基準を採用しています。客観等級は経営事項審査(経審)結果の点数を、主観等級は過去最高完成工事経歴を参考に算出されます。
ただし、実際には、この基準を理解するのは容易ではありません。そこで、今回は、東京都の公共工事の入札参加資格申請に詳しい行政書士法人スマートサイド代表の横内先生に、「東京都の公共工事の等級格付基準の核心」について、お聞きします。この記事で等級(ランク)が決まる仕組みや評価のポイントを理解し、ランク改善に向けて、具体的な対策を見つけてください。
なぜ、等級やランクを「格付」する必要があるのか?
横内先生。本日もよろしくお願いします。今回のテーマは「東京都の公共工事の等級格付基準」についてです。
こちらこそ、よろしくお願いします。「東京都の等級格付」というかなり専門性の高い分野ですが、できるだけわかりやすく説明するように心がけます。
まず、「手続きのながれ」については、以前のインタビューでもお話ししていると思うので、簡単に済ませますが、東京都の公共工事の入札参加資格を取得するには、経営事項審査を受けたあと、東京都に入札参加資格を申請しなければなりません。入札参加資格を取得したあと、入札参加資格が適用されると同時に、等級や順位が付与されるのです。この流れは、大丈夫ですよね。
はい。手続きの流れについては「東京都公共工事の入札参加資格とは?建設会社の取得の流れを徹底解説」というインタビューでお聞きしているので、理解しています。
ありがとうございます。それでは、今回は、手続きの流れの説明は省略して「等級格付基準」に絞ってお話しをしますね。
東京都の公共工事の入札参加資格の申請業種は、全部で109種類もあります。そのうち、「A・B・C・D・E」という等級区分が付与されるのは、「道路舗装工事、橋りょう工事、河川工事、水道施設工事、下水道施設工事、一般土木工事、建築工事」の7つで、「A・B・C・D」という等級区分が付与されるのは、「電気工事、給排水衛生工事、空調工事」の3つです。
このように109種類ある工事業種のうち、等級(ランク)で区分されるのは、たったの10業種しかなく、それ以外の業種は順位のみで格付けされるということを事前に理解しておいてください。
はい。では、そもそも、なぜ、等級もしくはランクというもので、「格付」を行うのでしょうか?
入札の際に、各会社の格付・ランク付を行うのは、なにも東京都に限ったことではありません。「全省庁統一資格」という省や庁の入札に参加する際に必要になる資格をはじめ、「埼玉県」や「神奈川県」とった自治体でも格付を行っています。この格付は、入札に参加できる会社を絞るために用いられます。
たとえば、以下の文章をご覧ください。これは、東京都が実際に発注している建築工事の「希望申請要件」です。
この案件に参加するには、東京都の公共工事の入札参加資格のうち、「0700建築工事」という業種において「BまたはC」の等級を持っていなければなりません。「A」ではダメで、「DやE」でもダメなのです。このように、工事のおおよその金額・規模・難易度に応じて、あらかじめ、当該案件の入札に参加できる業者を振り分けるために等級格付が行われているのです。
たとえば、上記の案件で、「Dランク」や「Eランク」の業者も入札に参加できることにしたと仮定しましょう。そして、実際に「Eランク」の会社が落札したとします。工事の金額・規模・難易度からいって『「B」や「C」の等級を持っている会社が案件を落札することが相当である』という東京都の意思に反して、経験や実績が乏しい「Eランク」の会社が、案件を落札してしまったことになります。「Eランク」の会社だからと言って、工事を完成できないというわけではないでしょう。しかし、入札や公共工事は、国民の税金を元に行われるわけですから、より確実に履行され、完成されなければなりません。
そういった観点から、官公庁は、会社の業績・過去の実績・技術職員の人数などを総合的に勘案し、あらかじめ入札に参加できる業者をグループ分けすることができるように、格付を行っているのです。
なるほど、なぜ「格付」が必要なのか?という点について、よくわかりました。それでは、実際に東京都はどういった基準で格付を行っているのでしょうか?
今回のテーマの核心部分ですね。
東京都は、「客観点数から導き出した客観等級」と「主観点数から導き出した主観等級」を元に「最終等級」を導きだしています。この点が、すこし難しく感じるかもしれませんので、以下、「客観等級」「主観等級」「最終等級」の3つに分けて、お話しをさせて頂きますね。
客観点数から導き出される客観等級について
「客観等級」「主観等級」「最終等級」の3つですね。
まずは、「客観等級」についてです。
「客観等級」は「客観点数」から導き出されます。この「客観点数」は、経営事項衣審査の結果である総合評定値P点のことを言います。先ほど、冒頭に「東京都の公共工事の入札参加資格を取得するには、経営事項審査を受けなければならない」という手続きの話をしましたよね。この経審の結果の点数が「客観点数」であり、「客観点数」から「客観等級」が導き出されるということになります。
東京都の公報を見てみると、「客観点数」と「客観等級」の関連性は、以下のようになっています。
- 900点以上=A
- 750点以上900点未満=B
- 650点以上750点未満=C
- 600点以上650点未満=D
- 600点未満=E
建設会社の社長の中には、公共工事の入札に参加する際に、「なぜ経営事項審査を受けなければならないのか?」わかっていない人が多いです。「経審の結果である総合評定値P点が、入札の際の客観等級の格付基準である客観点数として用いられるため、経審を受けておく必要がある」ということが、この説明からお分かりいただけると思います。
主観点数から導き出される主観等級について
そうですね。「経営事項審査」と「入札参加資格の取得」は、手続きがバラバラで、一見すると、連動していないようにも思えます。が、このような説明を聞くと、「経営事項審査」の結果である総合評定値P点が、入札に直に影響してくるというのが、よくわかります。
ありがとうございます。続いて、「主観等級」についてです。
「客観等級」が「客観点数」から導き出されるのと同様に、「主観等級」は「主観点数」から導き出されます。この「主観点数」は「過去最高完成工事経歴における工事請負金額(税込み)」のことを言います。「過去最高完成工事経歴」という言葉に説明が必要ですね。「過去最高完成工事経歴」とは、
- 申請業種に該当する工事であること
- 過去6年間に完成した工事であること
- 東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、茨城県、栃木県、群馬県内において完成した工事であること
という3つの条件を満たす工事のなかで、1件当たりの工事請負金額(税込み)が一番大きい工事のことを言います。要は、この3つの条件を満たす工事の中で、一番金額が大きい工事の工事請負金額(税込み)そのものが、主観点数になるのです。
すこしわかりづらいので、具体的に数字で説明すると、「過去最高完成工事経歴の工事請負金額(税込み)」が5500万円だった場合、その業種における御社の主観点数は5500万点になります。また、「過去最高完成工事経歴の工事請負金額(税込み)」が1億4000万円だった場合、その業種における御社の主観点数は1億4000万点になります。
1件あたりの税込み工事請負金額が、そのまま、主観点数になるのですね。
はい。その通りです。
但し、注意しなければならない点が1つあって、民間発注の工事の場合、「工事請負金額に2分の1を乗じた金額」が主観点数になるという点です。この点がとてもわかりにくいのですが、先ほどの例で言うと、過去最高完成工事経歴である5500万円が、公共工事であった場合、主観点数は5500万点となるのですが、民間工事であった場合には2分の1の2750万点となってしまいます。
同様に、過去最高完成工事経歴の1億4000万円が公共工事であった場合、主観点数は、1億4000万点になりますが、仮に民間工事であった場合には1億4000万点ではなく、2分の1の7000万点になってしまいます。
「過去最高完成工事経歴」が、民間工事であるか公共工事であるかによって、主観点数の計算方法が変わってくるのですね。
はい。
主観等級の算出の根拠である主観点数は、過去最高完成工事経歴が「公共工事」か「民間工事」かによって、2分の1つまり半分になってしまうということに注意が必要ですね。
主観点数が「過去最高完成工事経歴の請負金額(税込み)である」ということが理解できたところで、「主観点数」から「主観等級」が、どのように導きだされるか?について、見ていきます。この点については、東京都の公報を見るのが一番早いです。
例えば、建築工事であれば
- 4.4億点以上=A
- 2.2億点以上4.4億点未満=B
- 6000万点以上2.2億点未満=C
- 1600万点以上6000万点未満=D
- 1600満点未満=E
となっています。
また、電気工事・給排水衛生工事・空調工事であれば
- 5500万点以上=A
- 1800万点以上5500万点未満=B
- 600万点以上1800万点未満=C
- 600万点未満=D
となっています。
この点について、より詳しく知りたいという人は、私が以前、開催した『東京都建設工事競争入札資格「仕組み」と「手続き」_解説セミナー』をYouTubeで視聴していただけるとよいのではないかと思います。100分という長い動画ですが、2倍速で聞き流せば、1時間もかかりません。
客観等級と主観等級から導き出される最終等級について
ありがとうございます。私も時間がある際に、YouTubeセミナーを拝見させて頂きます。客観等級と主観等級がわかったので、続いては、最終等級についてですね。
はい。最終等級の説明に入りますね。
最終等級の算出の仕方は、きわめてシンプルで、わかりやすいと思います。
- 客観等級と主観等級が同一等級であれば、その等級が最終等級になります。
- 客観等級と主観等級が異なる等級であれば、より低い等級が最終等級になります。
ここでも念のため、具体例を挙げると、客観等級も主観等級も「B」であれば、最終等級も「B」になります。一方で、客観等級が「B」でも主観等級が「C」であれば、最終等級は「C」になります。客観等級が「E」だと、仮に主観等級が「A」だとしても、最終等級は「E」になってしまうのです。
最終等級の導き出し方について、「より低い等級が最終等級になる」という決め方は、とても面白いと思うのですが、「どちらか良い方」でもなければ「客観と主観の平均」でもなく、「より低い方」という点について、十分に理解しておいてください。
ご説明ありがとうございます。1つ疑問があるのですが、質問させて頂いてもよいですか?「客観等級と主観等級のどちらか低い方が最終等級になる」ということだと、客観等級つまり経営事項審査の点数が良いだけではダメで、主観等級つまり過去最高完成工事経歴の金額が高いだけでもダメということになりませんか?
その通りです。
そういった考え方ができるのは、東京都の等級格付について、よく理解している証拠です。いまの質問にあったように、最終等級を上げる、つまりランクアップするには、客観等級を上げるだけでは足りないですし、主観等級を上げるだけでもダメで、両方に対策が必要になってきます。
わからない人もいるかもしれないので、ここでも具体例を出しましょう。仮に、みなさんの会社が道路舗装工事のD等級だったとします。客観等級がDで、主観等級もD。そのため、最終等級もDといったケースです。みなさんの会社がDの等級をCに上げたいと考えた場合、客観等級をCに上げても、主観等級がDのままなら最終等級もDですので、Cに上げることはできません。同様に、主観等級をBに上げたとしても客観等級がDのままなら、最終等級もDですので、Cに上げることができません。
等級を上げるには、客観・主観の両方の対策が必要であるということがお分かりいただけたと思います。
最終等級を上げたい場合には、どうすれば良いのか?
今回のインタビューを通じて、「等級格付基準」については理解することができました。しかし、等級を上げたい場合どうすればよいのか?という対策が疑問点として残ってしまいました。
そうですね。今回は、「等級格付基準」を中心に、お話しをさせて頂きました。そのため「等級を上げるにはどうすればよいのか?」という点について、お話しする時間がなくなってしまいました。等級格付の基準を理解することは、とても重要ですが、建設会社のみなさんにとっては、「どうやったらランクや等級が上がるのか?」ということの方が興味がありそうですね。
では、次回のインタビューは今回の続きで、どうやったら等級をあげることができるのか?という点を中心に、「ランクアップの秘訣」について、お話しさせて頂こうと思います。
ぜひ、その方向でお願いします。今回も貴重なお話しありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。