東京都の公共工事に参加するためには、「入札参加資格」の取得が不可欠です。しかし、申請の手続きは複雑で、必要な条件や流れが分かりにくいため、多くの建設業者が戸惑っています。そこで今回は、東京都の入札参加資格申請の専門家であり、これまで数多くの建設会社をサポートしてきた行政書士法人スマートサイドの代表である横内先生に、よくある疑問にお答えいただきます。
「申請に必要な条件とは?」「スムーズに手続きを進めるためのポイントは?」「資格を取得した後、実際の入札で成功するには?」など、入札に関心のある建設会社にとって実践的で役立つ情報を詳しく解説していただきます。これから東京都の公共工事の入札に挑戦したい企業や、申請手続きをスムーズに進めたい方にとって必見のインタビュー記事です。
東京都の公共工事の入札資格について
横内先生、本日もよろしくお願いします。今回のテーマは、東京都の公共工事の入札資格に関する「よくある疑問」ですので、Q&A形式でお答えいただければと思います。
はい。承知しました。本日もよろしくお願いします。
それでは、早速ですが、そもそも、東京都の公共工事に参加するための「入札資格」とは何ですか?
はい。
「入札」というと、誰でも、いつでも、簡単に参加することができるようなイメージですが、官公庁の入札に参加するには、発注機関ごとに入札資格を持っていなければなりません。例えば、東京都の入札に参加したいのであれば東京都の入札資格を、神奈川県の入札に参加したいのであれば神奈川県の入札資格を、国土交通省の入札に参加したいのであれば国土交通省の入札資格を持っていなければなりません。
東京都の場合は、「建設工事等の競争入札参加資格」と「物品買入れ等の競争入札参加資格」の2つに分かれています。今回お話しする「建設工事等の競争入札参加資格」の中には、建築工事や土木工事など工事のほかに、設計や測量などが含まれています。東京都の財務局や交通局や水道局や下水道局が発注する公共工事の入札に参加するには、東京都の「建設工事等の競争入札参加資格」を持っていなければならないのです。
東京都の入札資格に「特徴」や「注意点」は、ありますか?
はい。ぜひ覚えておいて欲しい点が2点あります。
まず1点目が、東京都の入札参加資格を持っているからと言って、「都内の新宿区や渋谷区の入札に参加することができるか?」というと、そういうわけではありません。東京都と都内区市町村の入札資格は、別物ですので、区や市の入札に参加することを検討しているのであれば、東京都の入札資格を持っているか否かにかかわらず、「区」や「市」の入札参加資格を持っていなければなりません。
2点目が、東京都の入札資格の有効期限についてです。多くの自治体で入札参加資格は、2年度ごとの更新期限を設けています。東京都もそのうちの1つです。そのため、2年度に1回、更新手続きが必要になります。「1度取得した入札資格は、2年度に1回、更新しなければならない」ということを、覚えておいて頂きたいと思います。
入札資格を取得するための条件・期間について
それでは、次の質問ですが、入札参加資格を取得するために必要な条件はありますか?
まず、申請日時点で確定している決算がない法人は、東京都の公共工事の入札参加資格を持つことができません。また、公共工事の入札資格を申請するには、建設業許可を持っていることの他に、経営事項審査を受けていることも必要です。
経営事項審査とは、公共工事を直接請負おうとする建設会社が、必ず受けなければならない審査です。この経営事項審査については、以前のインタビュー(※注)でもお答えしていますので、もし、経営事項審査について詳しく知りたいという人がいれば、そちらの記事をお読みいただければと思います。
(注)『【専門家に聞く】経営事項審査の手続きをスムーズにクリアするための重要ポイント』
ときどき、「債務超過だと東京都の公共工事の入札参加資格を取得することができないのですか?」という質問を受けることがありますが、「債務超過」であることを理由に「東京都の公共工事の入札参加資格を取得することができない」ということはありません。また、「東京都内に本店や支店がないのですが、東京都の入札参加資格を取得することができますか?」という質問もあります。東京都以外の会社でも東京都の入札参加資格を取得することは可能です。東京都内に本店・支店・営業所がないからと言って、東京都の入札資格を取得することができないということはありません。
申請手続きには、どれくらいの時間がかかりますか?
東京都の公共工事の入札参加資格を取得するには、経営事項審査を受けた後に、電子証明書やICカードリーダを購入しパソコンの環境設定を行ったうえで、東京都電子調達システムから電子申請を行うことが必要です。経営事項審査を受けるには、たくさんの書類の提出が必要です。その書類の準備状況によって、かかる期間は大きく変わってきます。おおむね3か月~半年程度で、東京都の公共工事の入札資格を取得することができるイメージです。
よくあるお問合せとして「来月の入札に参加したい」とか「2週間後の入札に参加したい」というご相談を受けることがあります。しかし、建設会社が公共工事の入札参加資格を取得するには、経営事項審査を受け、なおかつ、経営事項審査の結果通知書を受領しなければなりません。東京都の場合は、経営事項審査を受けて、結果通知書が発送されるのに3週間程度かかります。そのため、「来月の入札」とか「2週間後の入札」というタイトなスケジュールの場合には、そもそも、間に合わないと考えた方がよいでしょう。
また、東京都が設定している入札参加資格の申請受付スケジュールは、「20日までに電子申請を行えば翌月1日から資格が適用される」というものです。21日から月末までに申請が完了した場合は、翌々月の1日から資格適用です。「15日からの資格適用」や「20日からの資格適用」というスケジュールは、そもそも予定されていませんので、来月の1日からの資格適用に間に合わなければ、翌月の1日からの資格適用になってしまいます。
申請の受付スケジュールや適用開始日は、東京都によって決められているのですね。
はい。おっしゃる通りです。
そのため、どんなに「急いで資格を取得して欲しい」というケースであったとしても、そもそも、間に合わない場合があるということを理解しておいて欲しいですね。特に、東京都の場合は、「電子証明書の取得」「PIN番号の受領」「パソコンの環境設定」という、東京都電子調達システムを利用するための事前準備が終わってないと、入札参加資格を取得できないという流れになっています。
事前にやるべきこととしては「経営事項審査」と「電子申請のためのパソコンの環境設定」が必須なので、そういった手続きにかかる期間も考慮すると、入札に参加したいからといって、すぐに入札参加資格を取得できるわけではないのです。
東京都の公共工事の等級・格付について
それでは、東京都の公共工事の入札資格を取得した際の「A」「B」「C」というランクは、どのようにして決まるのですか?
等級の格付基準の話ですね。
この点についても以前のインタビュー(※注)で詳細をお話ししましたので、興味のある人はぜひ、そちらの記事を参考にください。
(注)『【専門家に聞く】建設会社必見!東京都公共工事「等級格付基準」の核心に迫る』
簡単に言うと、東京都の公共工事の等級格付は、経営事項審査の結果である総合評定値P点から導き出される「客観等級」と、過去最高完成工事経歴の請負金額(税込み)から導き出される「主観等級」を総合的に考慮して決定されます。ポイントは、経営事項審査の結果である総合評定値P点が、等級の格付に用いられることと、P点だけでなく過去の工事経歴も加味して、「A」「B」「C」というランクが付与されるという点です。
「なかなかランクが上がらず、思ったように公共工事の入札に参加することができない」という話をよく聞きます。原因は、どういったことが考えられますか?
さきほど、申し上げたように、東京都の公共工事の等級は、経営事項審査の総合評定値P点に過去の工事実績を加味して格付されます。そのため、たとえば経営事項審査の結果である総合評定値P点が400点台や500点台だとすると、どんなに過去の工事実績があっても、ランクがあがることはありません。
そういった会社は、私たちのような専門家の力を借りるなどして、まずは、経営事項審査の点数を700点台に持っていけるような対策が必要になってきます。
具体的にはどういった対策がありそうですか?
はい。その点についても、過去のインタビュー(※注)ですでにご説明させて頂いておりますので、詳しく知りたい方は、そちらのページをご覧いただければと思います。
(注)『【専門家に聞く】東京都の公共工事の等級制度とランクアップの秘訣』
対策といっても、ひとことで説明するのは難しいですが、「建退共への加入」「中退共への加入」「法定外労災への加入」という対策が、わりと手っ取り早い対策ということができます。また、経営事項審査を申請する際に、「工事業種の選択がきちんとできているか?」「完成工事高の振替を利用できているか?」「2年平均と3年平均を比較して、より有利な売上高で申請できているか?」などが、チェックポイントになるかと思います。
初めての人が陥りやすいミスやアドバイスについて
これから、東京都の公共工事に挑戦する企業が陥りやすいミスなどはありますか?
はい。一番は、事前の情報不足です。
東京都が発注する公共工事の概要は「東京都電子調達システム」から見ることができます。その中には
- 都内に東京都と契約する営業所があること
- 特定建設業許可を持っていること
- 営業所の専任技術者を工事現場の配置技術者にすることはできないこと
といったような、条件が細かく書かれています。公共工事の入札参加資格を取得することができれば、どんな工事の入札にも参加できるかのように考えている人もいらっしゃいます。しかし、「A」「B」「C」という格付以外にも、細かな条件が付されています。そういった条件をクリアしなければ、該当の案件の入札に参加することはできないのです。
東京都電子調達システムで案件を検索したり、同業他社がどういった業種で何ランクを持っているのか?を検索したり、事前に集めることができる情報は、必ず集めて、自社の公共工事落札のために利用するべきだと思います。
公共工事の落札がうまく行く会社と、そうでない会社とは、なにが違うのでしょうか?
1つは、会社の規模があると思います。やはりどうしても「社長1人でやってます」とか「技術者が2人しかいません」となると、なかなか難しいのではないかと思います。公共工事の現場には、技術者を配置しなければいけないわけですから。「民間工事と公共工事の割合をどの程度の割合でやっていくか」ということにもよりますが、規模の小さい会社は、公共工事の落札はなかなか難しくなってくると思います。
また、うまく行く会社は、「前回ダメだった点は今回に活かす」「今回ダメだった点は次回に活かす」というように、継続して、改善しチャレンジしている傾向にあると思います。はじめての経審で満足いく点数が取れるか?というと、それは難しいでしょう。何回も、修正を繰り返しながら700点台後半を目指していくというのが通常の流れです。はじめから800点や900点を出せる会社は少ないので、まずは、低い点数でもあきらめないことが重要です。
また、うまく行っている会社は、私たちのような専門家とうまくお付き合いしている傾向にあります。手続きを自社で内製することも重要ですが、やはり専門的な手続きですので、費用を払ってでも、専門家のサポートを受けている会社の方が、圧倒的に有利であると感じています。
最後に、東京都の公共工事に挑戦したい建設会社に向けてアドバイスはありますか?
私個人の見解ですが、これから東京都の公共工事に挑戦したいと考えている会社にとって、大事なのは「情報」であると思っています。入札参加資格を取得するまでの手続きの流れは、もちろんのこと、「どうやったら総合評定値P点が上がるのか?」「どうやったら等級はランクアップするのか?」「入札参加資格を取得するための事前準備は何が必要か?」「同業他社はどういった案件を落札しているのか?」「競合他社の経審の結果は何点か?」というように、調べようと思えば調べられることはたくさんあります。
「自分たちの会社が実際に経審を受けた場合に、何点くらいになるのか?その場合、等級は何等級になって、どれくらいの価格帯の公共工事を落札することができるのか?」については、ある程度、大まかに推測することができます。そういった準備を心がけることによって、少しずつ、差が生まれてくるでしょう。
これから公共工事の入札にチャレンジして行く際には、ぜひ、上記のような情報を積極的に集めて、自社にとって有利な公共工事の受注活動につなげていっていただければと思います。
今回は、さまざまな質問にお答えいただきありがとうございました。
こちらこそ。東京都の公共工事の入札資格でお困りの方に、すこしでもお役に立てれば幸いです。