【お客さまインタビュー】共信冷熱株式会社さま

東京都の公共工事に関して。

経営事項審査を申請し入札参加資格を取得しても、なかなか公共工事の落札・受注に至らず、苦戦している企業は少なくありません。そんな中、「東京都以外に本社を置く企業」が、東京都の入札に参加し、見事、公共工事を受注する成功事例がありました。

山梨県甲府市に本社を置く共信冷熱株式会社です。

共信冷熱株式会社は、管工事の特定建設業許可を持つ、国土交通大臣許可業者です。同社は、東京都八王子市に西東京支店を設置後、本社で取得していた東京都の入札資格を西東京支店に変更。かつ、工事業種を「09:給排水衛生工事」「10:空調工事」「72:冷凍・冷蔵庫工事」の3つに増やすなどの工夫を重ね、東京都発注の2億7000万円規模の案件を受注することに成功しました。

同社の岸本会長に、東京都の入札についてはもちろんのこと、山梨県内での公共工事の実績、会社の経営方針について、1時間に渡って、インタビュー(取材)を行いました。

「これから東京都の入札に参加を希望する企業」や「公共工事の受注に苦戦している企業」さらには「東京都以外に本店がある建設会社」にとって、共信冷熱株式会社の案件落札事例は貴重なモデルケースとなるでしょう。

昭和59年3月にたった1人で創業し、その後、西東京支店を立ち上げ、現在では年商27億円・従業員60名を超える企業に成長した共信冷熱株式会社の成功の秘訣に、行政書士法人スマートサイドが迫ります。(ご本人の了承を得て、記事を公開しています)。

インタビュアー:行政書士法人スマートサイド(横内)

お客さま情報 詳細
企業名    共信冷熱(株)
取材対象者    代表取締役会長:岸本務さま
本店所在地    山梨県甲府市
主な業種    管工事(冷凍・冷蔵設備/空調換気・給排水設備)

東京都の公共工事を落札するに至った経緯


-まずは、東京都の公共工事、落札おめでとうございます。簡単で構いませんので、山梨県甲府市にある御社が東京都の公共工事を落札するに至った経緯について、お聞かせいただけますでしょうか?


岸本会長:はい。

ご存知の通り、弊社は、山梨県甲府市に本社があり、東京都八王子市に支店(※西東京支店)があります。山梨県では、年に数件程度、公共工事の受注実績はあるものの、東京都では経験がなかったため、東京都の入札については、まったく知識がない状態でした。

ある時、西東京支店の社員から、「東京都の入札参加資格を取得しておいた方がよいのではないか?」という相談がありました。言われてみると、せっかく東京都内に支店があるわけだから、会社の今後のために、東京都の入札の資格だけでも取っておいた方が、良いのではないか?という思いが湧いてきました。

「山梨と東京では、手続きのやり方が違う」程度の理解はありました。が、実際に東京都の入札参加資格を取得するとなると、まったくわからない状態でしたので、インターネットを検索したところ、たまたま、横内先生のホームページがヒットしました。そこで、東京都の入札については、横内先生のところにお願いしようと思ったのがきっかけです。

そうこうしているうちに、本当に偶然としか言いようがないのですが、東京都の方から「この案件の入札に参加してもらえませんか?」というオファーが来たのです。それが、今回落札に至った「食肉市場 冷蔵庫・冷凍機改修工事」です。

横内先生に東京都の入札参加資格の手続きを依頼している最中だったので、本当にタイミングが良かったというほかありません。とんとん拍子で話が進み、周りの人の助けもあって非常に運がよかったという感じです。


-東京都の方から、御社にオファーがあったということなんですね。


岸本会長:はい。なぜ、うちの会社にオファーがあったのか?正確にはわかりません。

ただ、うちの会社は山梨県での実績が多数あります。東京都内に支店もあります。ですので、もしかしたら、東京都が、うちの会社の山梨県の公共工事の実績を見ていた可能性も否定できません。あくまでも推測ですが。そういった観点から、うちの会社に白羽の矢が立ったのかもしれませんね。

ただ、実際にやってみると、スケジュールがすごくタイトでした。社員が休まず協力してくれたおかげで、ぎりぎり工期には、間に合いました。が、現場の担当社員は、相当、胃が痛い思いをしたのではないかと思っています。東京都の人たちとも、いろいろ相談をしながら問題を解決できたおかげで、無事、終わらせることができたという印象です。

1発の工事で2億7000万円ですから、この金額は大きいです。その後、東京都から「今後もお願いします」と言われていますので、仕事の中身については、とても満足して頂いていると感じています。いい仕事をしていないと「またやってください」とはならないので、この点については、非常にうれしく思っています。

会社としても、「山梨県だけでなく東京都からも、継続して仕事が来るといいな」と期待をしています。

東京都からの連絡があり、社員も協力してくれて、たまたま横内先生に手続きをお願いして、すべてがうまく行ったから、今回の案件の落札につながったという、本当に今回は、周りの人達に助けられて、無事、スムーズに進んだという感じです。

民間工事と公共工事の売上高の割合は、民間が7割、公共が3割といったところです。東京都の案件は今回が初めてだったのですが、今期は27億円の売り上げを達成することができたので、今後も東京都の公共工事を継続して受注していきたいと思っています。

会社設立から現在まで


-御社の会社設立は、昭和59年3月と伺っていますが、「設立当初から現在までのお話」をお聞かせいただけますでしょうか?


岸本会長:はい。

昭和59年3月に私一人で、共信冷熱を立ち上げました。もともとは、東京都内のメーカーに技術職として勤めていたのですが、出身地である山梨県に戻り創業しました。

創業当初は、スーパーの冷蔵庫のメンテナンスやエアコンの点検などが主な業務でしたが、年を追うごとに人が増えていき、創業9年目に社員が9名に増えました。人が「入っては辞め、入っては辞め」を繰り返す中で、いま現在、60名を超える規模になりました。会社の経営というのは「人・もの・金」に尽きると言いますが、やはり「人」の問題が一番重要であると感じます。

経営理念である「全従業員の物心両面の幸福の追求」を目的として会社を経営してきたからこそ、従業員が増え、今回のような突発的な工事にも、社員が積極的に協力して、休みを削りながらも対応してくれたのだと思います。


-「全従業員の物心両面の幸福の追求」というのは素晴らしいですね。会長が考える「経営方針」は、他にもございますか?


岸本会長:こちらの会社案内にも記載していますが、私たちの会社の基本方針は、「お客様第一主義」です。

私たちの仕事は『スーパーなどで食品を冷やす「冷凍設備」をメーカーから購入し、お客さまの要望に合わせて配管や電気をつなぎ、ひとつの冷蔵装置(システム)として提供すること』です。24時間365日のメンテナンスも引き受けているため、夜中でも、修理に行かなければならないという苦労もあります。

機械を納品したら、それで終わりではなく、メンテナンスや修理をしっかり行い、「万が一、壊れてしまったら、また新しいものを納品する」といったように、お客さまと末永くお付き合いをさせて頂いております。販売するだけでなく、最適なご提案、施工、保守、管理、メンテナンスといったように最後まで責任を持って、お客さまを大事にしながら対応させていただく、「お客さま第一主義」にこだわって仕事をしています。

「空調」「換気扇」「クリーンルームの機械」「給排水」といったように管工事の分野はとても広いです。レストランの厨房機器の納品のほか、機械の点検・保守・メンテナンスにも対応しているので、お客さまからから信頼され、安心して仕事を任せられるようにしていきたいです。


-3年前に、息子さんが代表取締役に就任していますが、代替わりや事業の承継で苦労している点はありますか?


岸本会長:息子は、ほかの会社に8年くらい勤めていましたが、本人も会社を継ぐ気があったようなので、うちの会社に入ってもらいました。徐々に役職を上げて、いまでは大体のことを任せても問題ないようになりました。

私が甲府市管工事共同組合の理事に就任したり、息子が山梨県管工事協会の理事になったりして、業界内での役職もあるので、会社の代表権については、私にも残しつつ2人3脚で会社を経営できています。この2人3脚での経営が、いまの私たちの会社の強みです。いまが、一番、理想の状態で経営できていると思います。

他の会社へのアドバイス


-最後に、入札資格を持っているものの、なかなか落札できずにいる会社へのアドバイスを頂けますか?


岸本会長:はい。

共信冷熱も今でこそ、山梨県の案件のほか東京都の公共工事を落札できるようになりましたが、最初はほとんどが民間の仕事でした。会社設立後30年くらいたった時に、公共の仕事にもチャレンジしようと思い、山梨県や東京都の設備の案件に力を入れて、山梨県の中で、トップ3に入るようになりました。そういった部分では比較的有利に仕事をもらえるようになりました。

経営事項審査の「財務内容」や「技術力」については、最初のころは他社に馬鹿にされるようなこともありましたが、ちからのある技術者を増やしていくことによって、徐々に、よい点数をもらえるようになったのです。

私たちの場合、公共工事を落札するのに10年かかりました。業界の風習やしがらみがあって、なかなか思うように行かないときも、もちろんありました。創業当初は、どうしても「技術力がない」「社員がいない」ということで、強引に仕事を取りにいくことができなかったのです。

しかし、優秀な社員を1人増やし2人増やして、業績が上がってくると力関係も変わってきます。まずは、民間工事で力をつけて技術者を増やしていくということが一番大事だと思います。いまの若い人たちは、昔に比べて、「踏ん張りが弱い」ところがあるように思います。2~3年で辞めていってしまう人が多いのは残念です。社内の評価制度で悪い評価をつけると、意気消沈してしまう人が多いんですね。

ただ、経験として言えることは、「いい仕事をしていると、いい技術者が集まってくる。いい技術者が集まると、公共工事でもいい仕事ができる。いい仕事をしていると、さらにいい技術者が集まってくる」という好循環ができます。そういった意味では、躊躇なく人を雇うということが大切です。

先ほどの経営理念とも重複しますが、技術力を上げるには、やはり「人」が必要です。人の採用・育成にはコストがかかります。現場に同行させたり、さまざまな体験をさせたり時間がかかりますが、次の人たちを育てることは重要です。

私たちの公共工事への挑戦も、最初は、負け戦でした。ただ、人を採用し力をつけて、さまざま条件を克服してきました。ずっと、改良・改善を繰り返してきたわけです。負けて次の手を打つという感じです。

これから建設業界を担っていく若い人には、ぜひ、参考にしていただければ幸いです。

(あとがき)

共信冷熱(株)の岸本会長のインタビューはいかがでしたか?

インタビューの際に頂いた会社案内(パンフレット)には【基本方針】として「お客様第一主義」「環境整備の徹底」「クレーム最優先」とあり、【経営理念】には「我々は全従業員の、物心両面の幸福を追求すると同時に、高度な技術力を通じて快適な環境を創造し、広く地域社会に貢献する」とありました。

まさに、【基本方針】【経営理念】を感じとることができる取材内容だったと思います。

弊所では、東京都の入札参加資格の取得手続きのほか、その後の変更手続きをご依頼頂いていますが、

  • 当初は、公共工事の受注に苦戦していたこと
  • 人の採用・育成を繰り返す中で、技術力を向上し、仕事を獲得してきたこと
  • いまでは山梨県の中でもトップ3に入るくらいの財務内容や技術力を有していること

など、取材をしてみて、はじめて知るようなことも多く、私自身、非常に勉強になりました。

インタビューの中に「周りの人たちに助けられて、とんとん拍子で進んだ」「非常に運がよかった」との言葉がありましたが、その裏には、創業から現在に至るまでの試行錯誤・工夫の積み重ねがあったからこそ、「2億7000万円の公共工事の落札」に至ったことが伺えます。

行政書士法人スマートサイドでは、今後も、公共工事の入札にチャレンジし成果を上げている企業の取材をしていきたいと思います。

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