経営事項審査の得点を少しでも上げたいと考えている建設会社は多いのではないでしょうか?公共工事の入札に参加するために欠かせない経営事項審査。この審査での得点が高ければ、「規模の大きい高額な公共工事」への入札が可能になります。しかし、「具体的に何をすれば評価が上がるのか?」「どこに注意すればいいのか?」と悩む会社も少なくありません。経営事項審査の結果である総合評定値P点は、「X1評点×0.25+X2評点×0.15+Y評点×0.20+Z評点×0.25+W評点×0.15」という特殊な計算式によって算出されるため、点数をアップするには、どうすればよいのか?わからないのも無理はありません。
そこで今回は、東京の公共工事の入札に精通し、多くの建設会社の経審対策をサポートしてきた行政書士法人スマートサイドの代表・横内先生に、経営事項審査で確実に評価を上げるための3つの方法についてお話を伺います。高得点を狙うために何ができるのか?その具体策を詳しく伺います。
経営事項審査の評価の方法
それでは、横内先生、本日は、「経営事項審査の点数が確実に上がる3つの方法」というテーマでお話しを聞かせてください。
はい。本日も、よろしくお願いします。
まず、経営事項審査は、公共工事の入札に参加する建設会社にとって必須の手続きです。官公庁が発注する公共工事を官公庁から直接受注する際には、経営事項審査を受けていなければなりません。この経営事項審査を受けると、「総合評定値P点」が記載された「経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書」が送られてきます。
経営事項審査は、「X1」「X2」「Y」「Z」「W」という5つの審査項目にわかれます。より具体的に説明すると「X1」が「工事種類別完成工事高」、「X2」が「利益額+自己資本の額」、「Y」が「経営状況分析」、「Z」が「技術力」、「W」が「社会性等」になります。5つの項目は、さらにさまざまな要素に細分化されて、点数化されていくのですが、ここでは、経営事項審査は、5つの審査項目から成り立っていると覚えておいてください。
その5つの審査項目を採点した結果の点数である「X1評点」「X2評点」「Y評点」「Z評点」「W評点」を「X1評点×0.25+X2評点×0.15+Y評点×0.20+Z評点×0.25+W評点×0.15」という計算式にあてはめて算出した点数が、総合評定値P点です。
経営事項審査は、5つの審査項目から成り立っていて、その5つの評点から算出した点数が、総合評定値P点になるわけですね。続けてください。
おっしゃる通りです。続けますね。
多くの人が「総合評定値P点が高ければ高いほど、規模の大きい公共工事の入札に参加することが可能になる」という認識だと思います。すこし説明を補足すると、総合評定値P点は、おおむね700点前後が平均値と言われています。なので、大雑把に分類すると「400点や500点は、かなり点数が悪いイメージです。600点や700点であれば、まあまあ普通。800点や900点だと、エリート」と言って良いと思います。
経営事項審査の点数は、「どのくらいの規模感の公共工事の入札に参加できるのか?」に直結してくるので、より規模の大きい公共工事への参加を希望している建設会社は、経審の点数をよくすることに必死なわけです。経審の点数が下がると、公共工事に関する売上が減り、最終利益が大幅に赤字になってしまうようなこともあります。つまり、経審の点数は、単なる指標ではなく、建設会社の経営そのものを左右する極めて重要な要素なのです。
1つ目の方法:完成工事高の振替
ありがとうございます。ここまでのお話しで、経審の点数が重要なのが大変よくわかりました。それでは、その点数・評価を確実に上げる方法について、お話しをしていただけますでしょうか?
はい。そうですね。そろそろ本題に入ります。
まず、みなさんの中には、「経審の点数が確実に上がる方法なんてあるのか?」と、疑問に思っている人もいるかもしれません。専門家の私から言うと、経審の点数が確実に上がる方法はあります。ただ、ここが重要なのですが、よりわかりやすく言うと、「500点台を700点台にする」ことは可能ですが、「900点台を1000点台」にするとなると少し難しいかもしれません。
どういうことかというと、総合評定値P点が「900点」の会社は、現時点ですでにとても優秀な会社です。その会社が、さらにもう100点伸ばしたいとなった場合、すでに対策が尽きている場合があるので、それ以上、伸ばしようがないケースがほとんどです。これに対して総合評定値P点が「500点」の会社は、はっきり言って、とても悪い状況にある会社です。このような悪い状況にある会社は、今回お話しする対策を取ることによって、比較的簡単に「600点」ないしは「700点」と点数を上げていくことが可能です。
まずは、確実に評価を上げる方法の1つ目として「完成工事高の振替」を積極的に利用することです。完成工事高の振替とは、経営事項審査の際に、「ある業種の完成工事高を別の業種に加算して申請することができる制度」です。例えば、「建築一式工事:0円。内装工事:1億円。大工工事:2000万円。」という完成工事高の会社の場合。完成工事高の通り、「建築一式工事:0円。内装工事:1億円。大工工事:2000万円。」で経審を受けることもできますが、「完成工事高の振替」を行うことによって、「建築一式工事:1.2億円」として、経営事項事項審査を受けることができるのです。
この完成工事高の振替は、おもに「工事種類別完成工事高」である「X1」で評価の対象になります。「前者の場合、建築一式工事のP点は99点、後者の場合、建築一式工事のP点は183点」というように、P点が84点もアップします。申請の際に「完成工事高の振替」のルールに則って、書類を作成するだけで、この違いが出てきます。そのため、建築一式工事や土木一式工事といった、「一式工事のP点を上げたい」とか「一式工事で公共工事の入札に参加したい」という場合には、「完成工事高の振替制度」を利用することによって、P点が爆上がりする可能性があります。
2つ目の方法:建退共・中退共・法定外労災の3点セット
専門工事の完成工事高を一式工事の完成工事高に加算することができるのですね。「完成工事高の振替」は、絶対に忘れないように覚えておきます。
これだけインパクトのある対策なのに、意外とできていない会社が多いです。
続いて、確実に評価を上げる方法の2つ目として「建退共への加入」「中退共への加入」「法定外労災への加入」という3点セットがあります。お手元に「経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書」がある人は、ぜひ見て頂きたいのですが、その中の「その他の審査項目(社会性等)」の「W評点」の箇所に
- 建設業退職金共済制度加入の有無
- 退職一時金制度若しくは企業年期制度導入の有無
- 法定外労働災害補償制度加入の有無
という箇所があります。これが今お話ししている「建退共への加入」「中退共への加入」「法定外労災への加入」の3点セットです。建設会社の社長の中には、「完成工事高」や「利益額」ばかりに気を取られ、W評点で評価の対象になる「社会性等」の審査項目に無頓着な人が結構いらっしゃいます。しかし、この3点セットをおろそかにすることはできません。なぜなら、総合評定値P点に与える影響がとても大きいからです。
いま、お話ししている3点セットのうち、どれか1つにでも加入すれば、P点は20点アップします。3つ全てに加入すると59点アップします。「P点が59点アップする」と聞いても、いまいちピンと来ないかもしれないので、これを完成工事高で言い換えると、業種別の完成工事高が1億円から2億円にアップしても、P点は20点しかアップしません。完成工事高が1億円から2億円に倍増させたときのP点の加算率が20点なのに対して、どれか1つの保険に加入するという対策を取れば、それだけでP点は20点アップするのです。費用対効果の面で、どちらの対策をより優先して行えばよいかというのは、一目瞭然のはずです。
ところが、こういった点について理解していない社長は、ともかく「売上高をアップする」とか「経費を削減する」という数字の部分に目が行きがちです。もちろん、売上高も大事ですし、経費を削減して利益を出すのも大事です。しかし、経営事項審査を受けるうえでの、優先順位としては、「建退共への加入」「中退共への加入」「法定外労災への加入」の3点セットにまさるものはありません。
3つ目の方法:技術職員の洗い出し
「建退共への加入」「中退共への加入」「法定外労災への加入」の3点セットは、意外と見落としがちかもしれません。そんなこと、誰かに教えてもらわなければ、自分で気づきようがないですよね。
そうですね。こういったことは、誰かに教えてもらわなければ、気づきようがないでしょう。そういった意味で、いかに情報収集して、知識を獲得していくかということも、経審対策の1つと言えるかもしれません。
確実に評価を上げる方法の3つ目として「技術職員の洗い出し」が挙げられると思います。技術職員の人数および保有資格は、経営事項審査の5つの項目の中の「技術力」という「Z評点」で審査の対象になります。技術職員の人数が多ければ多いほど、点数が高くなりますし、2級の資格者よりも1級の資格者の方が、評価が高くなります。
実際にあった話として、「資格を保有していない人は、技術職員名簿に掲載できない」と勘違いされているお客さまがいらっしゃいました。たしかに建築士や施工管理技士などの資格を持っていれば、それだけ評価は高くなります。しかし、一方で、資格を持っていないから技術職員名簿に掲載できないということはありません。例えば、高校の土木科や機械科などの指定学科を卒業して5年以上の実務経験がある人、大学の指定学科を卒業して3年以上の実務経験がある人は、技術職員名簿への掲載が可能です。また、仮に、指定学科を卒業していなかったとしても、10年以上の実務経験があれば、技術職員として評価の対象になります。
このように、資格保有者だけでなく、資格を持っていない人の実務経験年数を管理しておくことが経審の点数アップにつながります。
また、これも実際にあった話ですが、「出向社員は、技術職員名簿に掲載できない」と勘違いされているお客さまもいらっしゃいました。このお客さまは、以前から経審を受けていたのですが、手続きを外注するために、弊所にご相談に見えたお客さまです。偶然にも出向社員の話になったため、出向社員でも経審の評価対象になることをお伝えさせて頂きました。従前まで、出向社員は技術職員名簿に掲載できないと勘違いしていたらしく、グループ会社から出向社員を丸々、技術職員名簿に掲載していなかったのです。合計で10名程度の出向社員を掲載しておらず、そのほとんどが有資格者であったため、総合評定値P点に換算すると、18点もの取りこぼしがあったことになります。
技術職員名簿に関して言うと、「1人の人が2つの業種まで評価の対象になる」「6か月を超える期間在籍していなければならない」「一次検定に合格した技士補も加点対象になりうる」という細かいルールがあります。これらのルールを暗記しておくのは、難しいかもしれません。そこで私がお客さまにお勧めしているのが、「技術職員の洗い出し」です。
技術職員の洗い出し?具体的にはどういうことをするのですか?
はい。とくに難しいことはないのですが、技術職員の保有資格や卒業経歴や実務経験年数を一覧にして、Excelに保管しておくという、ただそれだけのことです。
技術職員が社長を含めた数名しかいないという会社は、技術職員の点数で差がつくことはないかもしれません。しかし、技術職員が10名以上いる会社や、入退社が頻繁にある会社、グループ会社から出向がある会社などは、技術職員の氏名や保有資格をExcelで一覧にして、都度、更新するなど、情報を最新のものにアップデートしておくとよいと思います。経審を受ける際には、毎年、毎年、技術職員名簿の作成が必要になるわけですから、常日頃から管理しておくことによって、いざというときに慌てることもなければ、思わぬ失点を防ぐこともできるはずです。
以上が、私の経験から考える「経営事項審査で高得点を狙うための3つの方法」です。参考になりましたか?
確実に経営事項審査の点数を上げたいとお考えの人へ
はい。とても参考になりました。横内先生の過去の具体的な事例なども聞けて、とても勉強になりました。ところで、こういった対策は、建設会社の人が、独自で行うには無理があるように思うのですが、その点については、どのようにお考えですか?
はい。私も同感です。
このインタビューで話したようなことは、頭では理解できても、いざ行動しようと思うと、「実際にどうしたらよいか?」わからなくなってしまうと思います。たとえば1つ目の対策としてお話しした「完成工事高の振替」ですが、「完成工事高の振替」のメリットがわかったとしても、「どうやって書類に書いたらよいのか?」という点がわからないと思います。また、「完成工事高の振替」をすることによって、振替元の業種で経審を受けることができなくなるというデメリットもあります。
そういったことを全て理解して、自信を持って経審を受けることができるようになるまでには、何年もの途方のない時間を必要とすることでしょう。
なので、「手続や書類の作成に不安がある人は、専門家の力を借りて欲しい」というのが率直な感想です。なにも私が行政書士をやっているから言うわけではありません。また、「私の事務所に経審の手続きを依頼してください」とお願いをしているわけでもありません。経営事項審査は、公共工事の入札における等級格付けの基準となります。特に、東京都は、経営事項審査で失敗して低い点数になると、その後の挽回をすることが非常に難しいです。「経営事項審査の点数が低い」イコール「D等級やE等級」ということになりかねません。
そのような状況を防ぐには、やはり専門家の手を借りて、専門家のサポートを受けつつ、経営事項審査を申請するのが、確実で、一番安心なやり方です。
そろそろ、お時間ですので、最後に一言お願いします。
はい。
このインタビュー記事をお読みの建設会社の社長の中には、経営事項審査の点数に一喜一憂している人もいらっしゃるかもしれません。確かに、経審の点数は大事です。しかし、経営事項審査の点数は、ただの数字ではなく、会社の現状を判断するうえで、大切な指標です。会社の現状を正確に理解したうえで、次回以降の点数につなげることは、決して特別なことではありません。経審を正しく理解し、対策を行うことができれば、確実に点数をのばすことはできるのです。
東京都をはじめ、公共工事の入札において、経審の点数が高いことは大きな強みになります。適切な準備と対策を講じ、確実に評価を上げていくことで、より有利な立場で入札に臨むことができるでしょう。今回の記事が、みなさまの会社の成長に少しでも役立てば幸いです。