東京都内で公共工事を受注するためには、建設業許可を取得し経営事項審査を受けたうえで、東京都の入札参加資格を取得する必要があります。しかし、はじめて経審を受けるとなると、「どうやって申請すればよいのか?」「何を基準に評価されるのか?」「手続きはどうやって進むのか?」と、疑問や不安が絶えない方も多いのではないでしょうか。
特に、経審の結果である総合評定値P点は、公共工事の入札参加に大きく影響し、等級(ランク)が思うように上がらないと、金額の大きい工事の入札に参加できないリスクがあります。一方で、しっかりと準備し高い評価を得られれば、受注のチャンスが広がるだけでなく、「経営状況が良好な会社」としての信頼向上にもつながるのです。
そこで今回は、東京都の経営事項審査に精通し、多くの建設会社をサポートしてきた行政書士法人スマートサイド代表の横内先生に、初めて経審を受ける社長が押さえておきたい重要ポイントをお聞きしました。経審の点数と東京都のランクの関連性・事前確認が必要なケース・具体的な準備の進め方・審査で差がつくポイントなど、実務的な視点で解説いただきます。
経営事項審査の結果と東京都の等級の関連性
本日はお忙しい中ありがとうございます。早速ですが、本日のテーマである「東京都の経営事項審査を成功に導くノウハウ」をお聞かせください。
はい。
今日は、「東京都の経営事項審査」についてですね。「経営事項審査を受ける」ということは「公共工事の入札にチャレンジしたい」ということだと思いますので、東京都の公共工事の等級格付について、まずは、お話しさせて頂きます。
経営事項審査を受けると「総合評定値通知書」が発行されます。その「総合評定値通知書」には、経営事項審査を受けた業種ごとに「総合評定値P点」という点数が記載されています。例えば、「建築一式工事:850点」「管工事:700点」「内装工事:720点」というように。この「総合評定値P点」は、おおむね700点前後が平均値であると言われています。
ここからがポイントなのですが、経営事項審査の結果である総合評定値P点が、東京都の入札にどのように影響してくるかという点です。意外と、「点数が高ければ良くて、低ければ悪い」という大雑把なイメージしか持っていない人が多いようですが、より詳しく説明します。東京都の場合、経営事項審査の結果である総合評定値P点は、入札の際の等級格付の「客観等級を定める基準」として用いられます。「総合評定値P点が客観点数で、客観点数によって、客観等級が決まる」ということです。
東京都の公報を確認すると、「道路舗装工事」「水道施設工事」「「一般土木工事」「建築工事」など主な業種で、「総合評定値P点」が「600点未満だとE等級」「600点以上650点未満だとD等級」「650点以上750点未満だとC等級」「750点以上900点未満だとB等級」「900点以上だとA等級」というように、総合評定値P点ごとに客観等級が、決められています。
最終的な等級は、客観等級のみならず、「過去の最高完成工事経歴」を基準に導かれる主観等級も勘案して決定されるわけですが、客観等級が低いと、どんなに主観等級が高くても、最終的には低い等級に格付けされてしまうというルールになっています。
みなさんが、経営事項審査を受けるということは、東京都の公共工事の入札に参加したいということだと思います。東京都の公共工事の入札に参加するには、東京都へ入札参加資格を申請しなければなりません。その際に、経営事項審査の結果である総合評定値P点によって客観等級が決まり、客観等級が低いと、最終等級も「Dランク」や「Eランク」に格付けされてしまうということを肝に銘じておいてください。
簡単にいうと、「経営事項審査での失敗は、取り返しがつかない」ということになるのでしょうか?
はい。その理解で間違いありません。
東京都の入札においては、「経営事項審査で低い点数になってしまっても、挽回の余地はある」ということではなく、「経営事項審査で低い点になってしまったら、等級も低くなってしまう」というように考えてください。この点が、初心者の人が見落としがちな点です。それだけ、「経営事項審査には、真剣に取り組まなければならない」ということが言えると思います。
東京都の経営事項審査の申請方法
ちょっと話が変わりますが、東京都に経営事項審査を申請するには、「電子申請」「郵送申請」「対面申請」のどれを利用すればよいのでしょうか?「対面申請」だと、わざわざ都庁まで行かなければならないため、若干、面倒に感じるのですが…。
申請の方法の問題ですね。
現時点で、東京都では、「郵送申請」というのは受け付けていません。コロナ禍では、一時「郵送申請」も受け付けていたようですが、うちの事務所としても「郵送」で申請することはありませんでした。逆に大臣許可の経審で関東地方整備局に申請が必要な場合には、いまでも「郵送申請」を多用しています。
はじめて経審を受けるみなさんは、「電子申請」ではなく「対面申請」を選択されるとよいと思います。「対面申請」は、予約が必要であり、かつ、都庁まで行かなければならないという面倒くささがあります。しかし、対面で審査を受けることによって、審査担当者が書類のどこを見ているのか?を勉強する機会になります。また、書類に不備や補正があった際には、その場で、説明を聞くこともできます。
経営事項審査は、入札に参加する以上、毎年受けなければなりません。1回で終わるのであれば良いですが、毎年、継続して審査を受け続けなければならないので、同じミスは繰り返したくないですね。そのため、初めて経審を受ける際には、その場で、審査担当者の話が聞ける「対面申請」がよいと思います。
東京都ではJCIPを利用した「電子申請」も受け付けております。弊所に経審のご依頼をいただいた際には、基本的には電子申請をおこなっています。電子申請の場合、都庁に予約を入れる手間が省けたり、都庁に訪問する必要が無かったりとメリットもあるのですが、申請者本人がGビズIDプライムアカウントを持っていなければならないという条件があります。GビズIDプライムアカウントの取得は、それほど、難しいものではありませんが、面倒に感じる人もいるようです。そういった場合には、「対面申請」一択でいくしかないですね。
横内先生の事務所に経審をご依頼されるお客さまは、GビズIDプライムアカウントを持っている人が多いですか?
はい。どちらかというと、持っている人が多いイメージです。
ただ、お客さまの中には、GビズIDを持っていても、紙での申請を希望される会社もいらっしゃいます。そういった場合には、お客さまのご要望に応じて、事前に都庁に予約を入れたうえで、対面申請で経審を受けるようにしています。
東京都への事前確認が必要な4つのケース
東京都の経審では、事前確認が必要になるケースがあるということを聞いたことがあるのですが。
そうですね。おっしゃる通り、東京都では経審を受ける際に、事前確認が必要になるケースがあります。
東京都が発行している手引きにもありますが「新規の申請で、最初に受けた建設業許可通知書を紛失した場合」「技術職員の人数が40名以上の場合」「建設機械の保有台数が6台以上の場合」「工事経歴書の裏付資料の提出件数が20件を超える場合」の4つの場合が、該当します。経審の対面審査は、およそ20分程度で終わります。一方で、今申し上げた4つの場合は、「審査に時間がかかり所定の時間内に終わらせることができないため、事前に確認を受けたうえで、経審に臨んでください」ということらしいです。
ちなみに、弊所のお客さまの中にも「建設機械の保有台数が15台を超える会社」や「技術職員の人数が80名を超える会社」があります。そのような比較的規模の大きい会社の経審を申請する際には、必ず、事前確認を受けています。事前確認は、経営事項審査の審査日のおおむね1か月前までに、指定の書類を都庁に提出するように言われていますので、書類の準備とともに期限の管理も大事になってきます。
経審の審査項目と総合評定値P点の算出方法
はじめて経審を受ける際には、自分の会社が、4つの場合に該当するかの確認が必要ですね。東京都庁の事前確認が必要か否かは、経審手続きの流れで、とても重要な意味を持つように思います。ところで、インタビューの冒頭に、総合評定値P点は700点前後が平均という話がありましたが、総合評定値P点は、どのような方法で計算されているのですか?
するどい質問ですね。これから経審を受ける初心者の人も、そこが気になっていると思います。
入札参加資格における等級格付は、東京都独自のものです。東京都の入札に参加する建設会社の等級は、東京都が独自のルールや基準で算定します。神奈川県の入札に参加する建設会社の等級は、神奈川県が独自のルールや基準で算定します。埼玉県だろうが大阪府だろうが、愛知県だろうが、入札における等級格付の方法は、バラバラで、各自治体ごとに違いがあります。
一方で、経営事項審査の審査項目や総合評定値P点の計算方法は、自治体ごとにバラバラではなく、全国で統一されています。そのため、「東京都で経審を受けるとP点が高いが、神奈川県で経審を受けるとP点が低い」というようなことはありません。そんなことがあったら、不公平ですね。
経営事項審査の審査項目をより詳しく説明すると「工事種類別完成工事高(X1)」「利益額+自己資本額(X2)」「経営状況(Y)」「技術力(Z)」「社会性(W)」の5つの項目が審査の対象になります。この5つの項目ごとに評点が算出され、『X1評点×0.25+X2評点×0.15+Y評点×0.20+Z評点×0.25+W評点×0.15』という計算式によって総合評定値P点が算出されます。
うーん。いろんなローマ字と数字が出てきて、すこし混乱してしまいそうです。建設会社の社長は、この数字や式を理解しないと、経営事項審査を申請することができないのでしょうか?
とんでもございません。そんなことは決してないです。
むしろ、いま言った計算式や数字を理解して経審を申請している社長など、少数派と言っていいくらいだと思います。なぜ、私が、初心者のみなさんに対して、「5つの審査項目」と「総合評定値P点の計算式」の話をしたかというと、これが、のちのちの経審対策に繋がってくるからです。
経審対策?
さきほど、私は、経営事項審査の点数は700点前後が平均であるという話をしました。
なので、はじめて東京都の経審を受けたみなさんの会社の点数が750点だったり800点だったりした場合、平均を上回っているのですから特に心配はありません。もちろん、「より上を目指したい」という希望があるかもしれませんが、東京都の客観等級は、C等級が付きますので、そこそこの額の東京都発注の入札に参加することができると思います。
しかし、一方で、もし仮に、東京都の経営事項審査を受けた際の、点数が500点だった場合。何が足りないのか、どこを強化すればよいのか?という対策を取らなければなりません。次回に向けた対策を取らなければ、経審の点数は500点のままです。平均を大幅に下回っています。これでは、小さい規模の公共工事にしか入っていけません。その際に、先ほどの審査項目や計算式を少しでも理解していると、次回に向けての対策が見えてくるのです。
例えば、「工事種類別完成工事高(X1)」については、2年平均か3年平均を選べるようになっているため、2年平均を選択するよりも、3年平均を選択したほうが、有利であることがわかれば、次回以降は3年平均を選択するようになるでしょう。
また、「技術力(Z)」は、「業種別の元請完成工事高」と「技術職員数・保有資格」から成り立っています。そのことをキチンと理解していれば、下請工事ばかりを受注しているのではなく元請工事にもチャレンジしてみようとか、技術職員の保有資格をもう一回確認し、リストアップしてみようといったことができるわけです。
さらに「社会性(W)」の中にある「建退協への加入」「中退共への加入」「法定外労災への加入」が、P点に占めるウェイトが大きいとわかれば、次回の決算までに、いずれかの保険に加入できるようにスケジュールを組むことができるのです。
「初めて経審を受ける人は、経審を受け続けてきている人に比べ、情報量や経験値が圧倒的に足りていない。」なので、その情報や経験の差を埋めていき、自分の会社にとって、納得のいく点数を獲得することが、経営事項審査を成功に導くノウハウであると思っています。
経営事項審査で差が付くポイント
なるほど。経営事項審査で良い点数を獲得するには、それなりの方法があるということですね。
はい。
弊所のお客さまの中には、20点や30点は当たり前で、前回の経審と比べて100点以上、点数がアップしたお客さまもいらっしゃいます。はじめて経審を受ける人にとっては、「手続きの流れ」「申請の仕方」「スケジュールの把握」も重要ですが、経営事項審査でよい成績を残すには、それだけでは足りず、正確な情報に基づいて、自社の足りないところを補うことが必要不可欠なのです。
例えば、財務状況を改善する方法や、工事の実績をどう積み上げるか、さらには技術者の保有資格の充実など、各社ごとの状況に応じた対策を講じる必要があります。経審では、単に書類を整えるだけでなく、審査項目ごとに「どの対策が効率的なのか?」「その対策のためには、いつまでにどんな書類準備をするべきか?」というアプローチが求められます。過去の実績や現在の状況を客観的に正確に把握し、それを、どのように「次回の経審までに準備するか?」がとても重要になってきます。
横内先生。ありがとうございました。経審初心者の方にとって、非常に勉強になるお話しだったと思います。そろそろ、お時間ですので、最後に一言お願いします。
これから初めて経審を受ける人にとっては、専門用語も多く、すこし、難しい話だったかもしれません。しかし、しっかりと準備を進めれば、スムーズに手続きできるでしょうし、経審を受けることは、会社の経営状況を客観的に把握する良い機会にもなります。もし「どこから手をつけていいのかわからない」という場合は、専門家へ早めに相談することも一つの方法です。行政書士法人スマートサイドとしても、書類作成からスケジュール管理、評点アップのアドバイスなど幅広くサポートしていますので、お困りの際は、ぜひ、ご相談いただければと思います。
みなさんの会社が東京都の経営事項審査を無事クリアし、1日でも早く東京都の公共工事を落札できることを祈念しております。本日は、ありがとうございました。