【専門家に聞く】大規模な経審の成功法|技術職員100名・機械台数15台以上の実例から学ぶ

経営事項審査(経審)は、公共工事の受注を目指す建設会社にとって避けて通れない重要な手続きです。経営事項審査の点数次第で、「受注できる公共工事の金額が決まってしまう」といっても過言ではありません。中でも、売上高100億以上、技術職員が100名以上、建設機械の保有機械が15台を超えるような大規模企業の場合、申請書類の準備に時間がかかるなど、手続きの難易度は一段と高まります。

本記事では、経営事項審査の申請手続きを専門とする行政書士法人スマートサイド代表の横内賢郎先生に、実際に担当した大規模企業の経審事例をもとに、「どのような準備が必要か?」「申請の際に気を付けるポイント」などについて、お聞きします。企業の総務担当者などは、自社の経審申請手続きに不安を感じている人も多いことと思います。大規模な経審を控える経営者や担当者の方にとって、実務に役立つ具体的なヒントがきっと見つかるはずです。

技術職員の人数が100名を超える会社の経審


それでは、横内先生、本日も、よろしくお願いします。本日は、「規模の大きい会社の経審を、ミスなくスムーズに完了させるには、どうすればよいか?」という点を中心にお話しください。


はい。本日もよろしくお願いします。規模の大きい会社の経審は、弊所としても、とても得意としている分野ですので、ぜひ、経営者のみならず、事務担当者や総務部の人にも役に立つようなお話ができればと思います。

まずは、技術職員の人数が100名を超えるような経審の申請についてです。大臣許可業者はもちろんのこと、東京都知事業者でも、技術職員の人数が100名を超える会社の申請手続きをおこなった経験があります。

経営事項審査は、X1×0.25+X2×0.15+Y×0.20+Z×0.25+W×0.15という計算式を使って、総合評定値P点を算出するための審査です。総合評定値P点の点数が、入札参加資格の「等級・ランク」の格付基準となりますので、総合評定値P点は良いに越したことはありません。そして、技術職員の人数は、「Z」評点の「技術力」という項目で審査の対象になります。「Z評点」について、詳しく知りたいという人がいれば、私がホームページに掲載している専門家解説のページ(※注)をご覧いただければと思います。

(注)「経営事項審査におけるZ評点(技術職員数及び元請完成工事高)をアップするには?」

経営事項審査の際には、技術職員名簿という名簿を作成し、提出することが必要です。技術職員名簿に記載されている技術職員の人数が多ければ多いほど、Z評点が高くなり、総合評定値P点によい影響を与えることになります。


具体的に技術職員名簿に記載できる技術職員とは、どういった人たちのことを言うのですか?


はい。技術職員名簿に記載できる技術職員は、以下の6種類に区分けすることができます。

  • 1級の技術者で監理技術者証を保有し、かつ、監理技術者講習を受講している人
  • 1級の技術者で上記以外の人
  • 監理技術者補佐
  • 基幹技能者
  • 二級技術者
  • そのほか(10年の実務経験者など)

また、技術職員名簿に名前を記載できるのは、「決算日時点において、6か月を超える期間、会社に在籍している人」に限ります。そのため、「入社して3か月しか経っていない」という人は、仮に1級の資格を持っていたとしても、技術職員名簿に掲載することはできないのです。


技術職員が100名を超えるような会社は、技術職員名簿の作成だけで、ひと苦労かと思うのですが。


そうですね。技術職員名簿の作成だけで、かなりの労力が、かかってしまうのは事実です。

しかし、そういった会社は、人事部などが、「経営事項審査の手続き」とは関係なく、自社社員の情報を管理できているはずです。たとえば、生年月日や入社年月日は、もちろんこと、保有資格、講習受講の有無、実務経験年数など、しっかりと管理できている会社がほとんどです。

そのため、経営事項審査の際には、「0」から技術職員名簿を作成するというのではなく、人事部が持っている情報をもとに、Excelなどを使ってデータをリスト化しておくようにアドバイスしています。こういった事前準備をまったくしないで、経営事項審査のためだけに、技術職員1人1人の情報を確認していくとなると、かなり、厳しいものがあるでしょう。

実際に、私のお客さまの中には、経審担当の総務部が、人事部から技術職員の情報を共有してもらい、技術職員名簿を作成しているお客さまもいらっしゃいます。経営事項審査の際には、技術職員名簿に記載されていることの裏付資料として、「資格証」や「合格証」の提示も必要になります。弊所では、「資格証」や「合格証」をお客さまから送ってもらったうえで、技術職員名簿の記載に誤りがないかチェックをし、経営事項審査を申請しています。


たしかに、専門家のチェックが入ることによって、安心して申請を行うことができそうですね。


はい。この点は、お客さまとの役割分担をかなり意識してやっています。個人情報の関係もあるので、社外の人間が、イチから技術職員名簿を作成することはできないケースもあります。技術職員の人数が10名程度であれば、社長の一存で、丸投げできるケースもあります。しかし、大きい会社であれば、大きい会社であるほど、社員の情報の取扱いには厳格な運用基準を設けていることが多いです。そのため、技術職員に関するデータは、会社さんの方で、用意して頂くということが多いです。

建設機械の保有台数が15台を超える会社の経審


技術職員については、わかりました。それでは、建設機械の台数が15台以上のケースについては、どうでしょう?


はい。

建設機械の保有台数は、総合評定値P点を算出する際の、「W」評点の評価項目である「社会性等」で審査の対象になります。「W評点」については、ホームページ(※注)でも、解説していますので、詳しく知りたいという人は、参考にしてみてください。

(注)『経営事項審査の「W評点(その他の審査項目/社会性等)」の審査項目を徹底解説』

建設機械を保有しているということは、「災害時における地域を守る担い手」となることを意味しています。また、建設機械の保有は、「公共工事の品質確保や適正な施工確保の見地」から重要な要素と位置づけられています。そのため、経営事項審査の際に、建設機械の保有状況が審査の対象となり、建設機械の保有台数が多い会社は、点数が高くなるように制度設計されているのです。

建設機械の保有台数が、評価対象になるのは15台までです。つまり、建設機械を20台持っていようが30台持っていようが、点数としては15台しか持っていない時と同じ点数です。また、評価の対象となる建設機械は「ショベル系掘削機」「ブルドーザー」「ダンプ車」などであるため、どちらかというと建築系の会社よりも、土木系や道路舗装の会社などが、有利な印象です。


建設機械の保有台数が多い会社の場合、経審の申請の際には、どういった点について気を付ければよいのでしょうか?


建設機械の保有状況を経審の加点事由にするには、「売買契約書」「リース契約書」「特定自主検査記録表」「自動車検査証」などの書類の提示が必要です。「申請会社が本当に所有またはリースしているのか?」「建設機械が安全に稼働しているのか?」といった点を審査するためです。

こういった書類は、経営事項審査のために準備するというよりも、常日頃の会社運営において、社内で厳重に保管しておかなければならないものです。建設機械を使って、工事を施工しているのであれば、「特定自主検査記録表」や「車検証」の期限管理をしっかり行わなければなりません。

経営事項審査の際には「建設機械保有状況一覧表」という書類を提出することになりますが、弊所では、各書類をメールやPDFで共有してもらい、申請書類の裏付資料として提出しています。経営事項審査の副本は、都度、お客さまにお返ししています。その中には「建設機械保有状況一覧表」も含まれております。次回の経審までに、車両の変更や購入があった際には、お客さまの方で、その一覧表に上書きや追記をしてもらっています。そのようにして、次回の経審の際には、最新の情報を頂くという方法を取っています。

年間総売上高が100億円を越える会社の経審


技術職員が100名を超えたり、建設機械の保有台数が15台を超えるような規模の大きい会社は、当然、年間売上高も小規模事業者とは比較にならないくらい高額になると思うのですが、その点について、なにかご指摘はありますか?


おっしゃる通り、会社規模が大きくなればなるほど、年間完成工事高も大きくなります。完成工事高は、X1という項目で審査の対象になりますが、弊所のお客さまの中には、年間総売上高が100億を超えるような事業者さまもいらっしゃいます。もし、X1評点について、より詳しく知りたいという人がいれば、私がホームページに記載した該当箇所(※注)をお読みください。

(注)「経営事項審査の工事種類別年間平均完成工事高(X1評点)についての解説」

100億円を超えるとはいかないまでも、売上高が数十億円になるような会社の場合、

  • 「完成工事高」と「兼業事業売上高」の割振り
  • 「各許可業種ごと」の売上高の把握
  • 元請完成工事高と下請完成工事高の金額の算出

といった点に注意が必要です。規模の大きい会社であればあるほど、この辺りは、経理部の担当者がしっかり把握してくれているイメージがあります。規模が大きい会社で、「建設業以外の事業をやっていない」とか「建設業の許可業種が1業種だけ」というような会社は、珍しいと思います。建設業以外の事業を行いつつ、かつ複数の建設業許可の業種を取得されている会社の方が圧倒的に多いです。

こういった会社は、各許可業種ごとの売上高の把握を徹底して欲しいです。経営事項審査の際には、「本当に工事の実績があったか否か」を確認するために、「工事請負契約書」「注文書・請書」「請求書・入金記録」の提示を求められます。1件あたり数億円の工事を受注することもあるかと思うのですが、「その工事の工事経歴書への記載方法が間違えていた」とか、「元請と下請の割振りを間違っていた」となると、金額が大きいだけに、修正に時間がかかるのみならず、精神的なダメージも大きくなります。

いままで私が担当した経審では、そのような経験はありませんが、完成工事高や受注金額が大きくなれば大きくなるほど、申請書類の作成は細心の注意を払って行きたいものです。


ところで、東京都の経審では、事前確認が必要になるケースがあると聞いたことがあるのですが。


はい。この点については、以前お話ししたインタビュー(※注)でも少し触れましたが、ここでも説明させて頂きますね。なお、東京都が発行している経営事項審査の手引きは、こちらからダウンロードすることができます。

(注)『初心者が見落としがちな「東京都の経営事項審査」を成功に導くノウハウ』

東京都の場合ですが、

  1. 技術職員数が40名を超える場合
  2. 建設機械の保有台数が6台以上の場合
  3. 工事経歴書の確認対象工事が20件を超える場合

などには、経審の審査日のおおむね1か月前までに、事前確認資料を提出することが求められています。これは、東京都の場合ですので、他の県で同じような事前確認が必要になるか否かは、各自治体の手引きで確認する必要があります。

対面での審査は、およそ10分~20分程度で終わるイメージです。しかし、技術職員の人数が40名を超えたり、建設機械の保有台数が6台以上の場合、審査に時間がかかり、10分~20分の間に、審査が完了しないため、時間が大幅に伸びてしまう可能性があります。そうすると、待ち時間が長くなったり、申請の予約を入れづらくなったりするため、東京都は、事前確認という制度を設けて、事前に必要書類をチェックして、審査当日の負担を軽くしているのです。

こうのような点については、自分でしっかり手引きなどを読んで、情報収集をしたうえで、経営事項審査に臨むことが必要であると思います。

規模の大きい建設会社の「経審ご担当」のみなさまへ


それでは、そろそろ、お時間です。規模の大きい建設会社の経審担当の人に、何かアドバイスはありますか?


はい。

経審をスムーズに終わらせる成功の秘訣は、「申請の際に必要になる書類は、なるべく早めに準備すること」です。たとえば、技術職員の在籍を証明する書類に「標準報酬決定通知書」があります。この「標準報酬決定通知書」は、毎年9月ごろまでに、会社に届いているはずです。技術職員の資格証や合格証とともに、あらかじめ保管しておくと経審の際に、慌てることがなくなります。

また、建設機械の「売買契約書」「リース契約書」「特定自主検査記録表」「車検証」も同様に、前回の経審の副本を参考にしつつ、Excelにリスト化しておき、なにか変更があれば、その都度、書き換えておくとよいでしょう。経営事項審査の際に、まとめてやるとなると、なかなか作業が進みづらいように思います。

さらに、私たちのような専門家の手を借りるのも1つの手段です。規模の大きい会社には、「総務部」や「人事部」があって、経審の担当者がいるかもしれません。しかし、経営事項審査の手続に慣れているとは限りません。また、長年担当していた社員が退社してしまったり、病気で勤務できなくなってしまった場合に、代わりにできる人が社内にいないというケースもよくあります。

特に規模の大きい会社では、毎年、定期的に何億円という額の公共工事を受注している会社も多いと思いますので、手続きを引き継ぐ人が誰もいないというのは、非常におおきなリスクです。弊所では、そのような理由から、比較的規模の大きい建設会社から、経営事項審査の手続きをご依頼されることが多いです。


ありがとうございます。申請手続きが滞ってしまうリスクを考えると、手続きを行政書士事務所に外注するという方法もありなのかもしれませんね。本日はありがとうございました。


こちらこそ、ありがとうございました。

経営事項審査は、公共工事受注のための必須の手続きです。特に大規模な企業ほど、申請内容について、ミスは許されません。公共工事の受注に直結する手続きだけあって、担当者の頭の整理や戦略的な対応が求められます。実際の現場でどう対応し、どんな工夫をすればよいのか?この記事が、そのヒントになれば幸いです。

なお、私たち行政書士法人スマートサイドでは、こうした大規模な経審にも数多く関わってきました。ご自身の会社にとって最善の方法を見つけるうえで、「話だけでも聞いてみようかな」と思われたときには、ぜひ、弊所にご相談ください。

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