動画で解説した内容を簡略化して文章にしました。動画だと伝わりにくい箇所や、文字(文章)で確認したい箇所があれば、ぜひ、以下のページをご覧ください。
目次 | |
---|---|
1 | 東京都の入札資格(公共工事)の仕組み |
2 | 東京都の公共工事の入札に参加するまでの手続 |
3 | 東京都の入札に参加したいとお考えの方へ |
1.東京都の入札資格(公共工事)の仕組み
(1)実際の発注案件
東京都から実際に発注されている建築工事の入札案件のご紹介です。【発注事例1】は、2億5000万円を超える規模の大きい工事なのに対して、【発注事例2】は、4700万円と、それほど、金額は大きくありません。
【発注事例1】 | 【発注事例2】 |
---|---|
予定価格(税込み):252,263,000円 | 予定価格(税込み):47,187,800円 |
受付等級:A,B,C
※特定建設業許可が必要※ |
受付等級:D |
上記の表を見ると分かるように、【発注事例1】の入札に参加するには「A,B,C」のいずれかの等級が必要なのに対して、【発注事例2】の入札に参加するには「D」の等級が必要です。
(2)等級と発注標準金額
東京都の公報を確認すると、各業種について、等級と発注標準金額が公表されています。以下の表は、建築工事の「等級と発注標準金額」について、記載されている表です。建築工事の等級Aの場合、発注標準金額は「4億4千万円以上」となります。等級Bの場合、発注標準金額は「2億2千万円以上4億4千万円未満」となります。
このように、「等級が良い方が発注標準金額が高くなり、等級が悪いと発注標準金額も低くなる」という関連性にあります。解説動画のスライドの中には、建築工事だけでなく、電気工事や空調工事、道路舗装工事の発注標準金額もありますので、ご確認ください。また、参考資料3をダウンロードすることによって、「等級と発注標準金額」を確認することもできます。
等級 | 発注標準金額 | ||||
---|---|---|---|---|---|
A | 4億4千万円以上 | ||||
B | 2億2千万円以上4億4千万円未満 | ||||
C | 6千万円以上2億2千万円未満 | ||||
D | 1千6百万円以上6千万円未満 | ||||
E | 1千6百万円未満 |
(3)等級はどうやって決まるのか?
それでは、「A,B,C,D,E」という等級はどのように決まるのでしょうか?東京都の場合、客観点数から算出される客観等級、および、主観点数から算出される主観等級を比較して、より、低い方が最終的な「等級」になります。
より詳しく見ていくと、
- 御社の客観点数から「客観等級」を導き出します。御社の主観点数から「主観等級」を導き出します。
- 客観点数から算出される「客観等級」と、主観点数から算出される「主観等級」が同じであれば、その等級が御社の最終的な「等級」になります。
- 「客観等級」と「主観等級」が異なる場合には、より低い方の等級が御社の最終的な「等級」になります。
たとえば、客観等級が「B」で主観等級が「B」の場合、御社の最終的な等級は「B」になるのに対して、客観等級が「B」でも主観等級が「C」の場合、御社の最終的な等級は「C」になります。下記の表は、東京都が公表している建築工事の等級算定表になります。
客観点数 | 客観等級 | 主観点数 | 主観等級 |
---|---|---|---|
900点以上 | A | 4.4億点以上 | A |
750点以上900点未満 | B | 2.2億点以上4.4億点未満 | B |
650点以上750点未満 | C | 6,000万点以上2.2億点未満 | C |
600点以上650点未満 | D | 1,600万点以上6,000万点未満 | D |
600点未満 | E | 1,600万点未満 | E |
- 客観点数から「客観等級」を算出する
- 主観点数から「主観等級」を算出する
ということが分かったとして、そもそも、客観点数・主観点数とは、いったい何なのでしょうか?
(4)客観点数=総合評定値(P点)
客観点数とは、経営事項審査の結果通知書に記載されている「総合評定値(P点)」のことです。経営事項審査とは、公共工事の入札に参加する際には、必ず、事前に済ませておかなければならない手続きです。経営事項審査は、許可行政庁(東京都知事許可業者であれば、東京都庁)に提出して行います。さまざまな申請書類の準備・提出が必要なため、非常に難しい部類の手続きに該当します。
この経営事項審査を受けると、数週間後に経営事項審査の結果通知書が郵送されてきます。その結果通知書に記載されている総合評定値(P点)が、客観点数にあたります。
(5)主観点数=過去最高完成工事経歴
それでは、主観点数とは、何でしょうか?
主観点数とは、東京都に入札参加資格を申請する際に入力が必要な「過去最高完成工事経歴の請負金額(税込み)」を言います。過去最高完成工事経歴とは以下の条件を満たす工事の実績です。
- 過去6年間の間に
- 東京都近郊で施工した工事のうち
- 1件あたりの金額が1番大きい
- 工事の請負金額(税込み)
- 但し、民間工事の場合は、上記金額に×1/2
たとえば、2年前に、東京都内で、3600万円(税込み)の工事を施工したような場合。この工事が、民間の工事であれば、主観点数は3600万円×1/2=1800万点になります。
(6)(株)スマートサイド建設の場合
仮に(株)スマートサイド建設が、東京都の道路舗装工事の入札に参加しようとした場合。
道路舗装工事の経営事項審査の結果 | 道路舗装工事の過去最高完成工事経歴 |
---|---|
561点 | 3600万円(都内、民間、税込み) |
経営事項審査の結果である総合評定値(P点)が561点のため、客観点数は561点、客観等級はE
過去最高完成工事経歴の請負金額が3600万円ですが、この工事は民間工事のため、主観点数は1800万点(3600万×1/2)、主観等級はDとなります。
客観点数 | 客観等級 | 主観点数 | 主観等級 |
---|---|---|---|
900点以上 | A | 2億点以上 | A |
750点以上900点未満 | B | 8,000万点以上2億点未満 | B |
650点以上750点未満 | C | 3,000万点以上8,000万点未満 | C |
600点以上650点未満 | D | 700万点以上3,000万点未満 | D |
600点未満 | E | 700万点未満 | E |
客観等級がEで、主観等級がDなので、(株)スマートサイド建設の道路舗装工事の最終的な等級は、「E」になります。これを道路舗装工事の等級算定表にあてはめると、発注標準金額は以下のように、700万円以下ということになります。
等級 | 発注標準金額 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
A | 2億円以上 | |||||
B | 8千万円以上2億円未満 | |||||
C | 3千万円以上8千万円未満 | |||||
D | 7百万円以上3千万円未満 | |||||
E | 7百万円未満 |
(7)横内電気工業(株)の場合
それでは、横内電気工業(株)の場合でも、客観点数から客観等級、主観点数から主観等級を算出していきましょう。
- 横内電気工業(株)が東京都の電気工事の入札に参加するために、経営事項審査を受けました。その結果、電気工事の総合評定値(P点)は、700点でした。
- 横内電気工業(株)の過去最高完成工事経歴は、4200万円(民間工事)でした。
以上の条件を見ると、客観点数は「600点以上750点未満」該当し、主観点数は2100万点(4200万円×1/2)のため「1,800万点以上5,500万点未満」に該当します。そのため、客観等級はB、主観等級はB。横内電気工業(株)の最終等級はB等級ということになります。
客観点数 | 客観等級 | 主観点数 | 主観等級 |
---|---|---|---|
750点以上 | A | 5,500万点以上 | A |
600点以上750点未満 | B | 1,800万点以上5,500万点未満 | B |
500点以上600点未満 | C | 600万点以上1,800万点未満 | C |
500点未満 | D | 600万点未満 | D |
横内電気工業(株)の最終等級は、Bなので、これを電気工事の「等級と発注標準金額」の表にあてはめると、発注標準金額は「1千8百万円以上5千5百万円未満」になります。
等級 | 発注標準金額 | ||||
---|---|---|---|---|---|
A | 5千5百万円以上 | ||||
B | 1千8百万円以上5千5百万円未満 | ||||
C | 6百万円以上1千8百万円未満 | ||||
D | 6百万円未満 |
(8)シミュレーション
それでは、最後に東京都の「建築工事」の入札に参加したいと考えている以下の会社の「等級」および「発注標準金額」をシミュレーションしてみましょう。
- 経営事項審査の点数が、649点
- 過去最高完成工事経歴は、税込み1億8千万円(3年前に株式会社Aから受注した都内工事)
この会社の場合、経営事項審査の点数が649点なので、客観点数は600点以上650点未満に該当し、客観等級はDになります。一方で、過去最高完成工事経歴は、税込み1億8千万円なので、主観点数は9000満点になり、6000満点以上2.2億点未満に該当するため、主観等級はCになります。
主観等級がCでも、客観等級がDのため、この会社の建築工事の最終的な等級はDになります。
客観点数 | 客観等級 | 主観点数 | 主観等級 |
---|---|---|---|
900点以上 | A | 4.4億点以上 | A |
750点以上900点未満 | B | 2.2億点以上4.4億点未満 | B |
650点以上750点未満 | C | 6,000万点以上2.2億点未満 | C |
600点以上650点未満 | D | 1,600万点以上6,000万点未満 | D |
600点未満 | E | 1,600万点未満 | E |
建築工事の等級と発注標準金額の表にあてはめると、発注標準金額は「1千6百万円以上6千万円未満」ということになります。
等級 | 発注標準金額 | ||||
---|---|---|---|---|---|
A | 4億4千万円以上 | ||||
B | 2億2千万円以上4億4千万円未満 | ||||
C | 6千万円以上2億2千万円未満 | ||||
D | 1千6百万円以上6千万円未満 | ||||
E | 1千6百万円未満 |
もし、かりにこの会社の経審の結果である総合評定値(P点)が650点だったらどうでしょう?650点だったとした場合、客観点数は650点以上750点未満に該当し、客観等級はCになります。客観等級がCということは、主観等級もCなので、最終的な等級はCになります。
ここで、このページの一番最初に掲載した【発注事例1】と【発注事例2】を再び、見ていくと…
【発注事例1】 | 【発注事例2】 |
---|---|
予定価格(税込み):252,263,000円 | 予定価格(税込み):47,187,800円 |
受付等級:A,B,C
※特定建設業許可が必要※ |
受付等級:D |
「発注事例1(2億5200万円)」の受付等級は「A,B,C」でした。「発注事例2(4700万円)」の受付等級は「D」でした。そうすると、この会社は、P点が1点足りなかった影響で、等級Cを取得することができず、2億5200万円の公共工事の入札に参加するチャンスを逃してしまったということが言えます。
このように経営事項審査の結果であるP点のたった1点の違いで、かたや2億5000万円、かたや4700万円という価格に開きが出てきてしまいます。もちろん、「等級が良ければ良い」というわけではありません。「規模の小さい工事を複数取っていきたい」という建設会社の社長のいますし、そもそも、「金額の大きい工事の入札に参加すること=大手を敵に回すこと」にもなりかねないため、必ずしも、DよりもC、CよりもB、BよりもAがよいということは言い切れません。
もっとも、上記のシミュレーションを見てみると、P点1点の違いで、入札に参加できる工事の規模感が全く変わってきてしまうことをご理解いただけたと思います。
東京都の公共工事の入札資格を取得する手続きは、戦略的に行わないと損をするということがお分かりいただけましたでしょうか?
2.東京都の公共工事の入札に参加するまでの手続き
(1)決算報告(決算変更届の提出)
東京都の公共工事の入札参加資格を取得する場合に、まず、行わなければならないのは「決算報告(決算変更届)」です。この「決算報告(決算変更届)」は、税理士が税務署に対して申告する決算の手続とは、まったくの別物です。
建設業許可業者は、毎年、事業年度終了後4か月以内に許可行政庁に決算の報告をしなければなりません。これは、建設業法11条2項に規定されている建設業許可業者の義務です。東京都知事の許可業者であれば東京都庁に、埼玉県知事の許可業者であれば埼玉県庁に、決算の報告を行う必要があります。
提出書類には、以下のような書類があります。
- 建設業法用の財務諸表
- 許可業種ごとの工事経歴書
- 直前3年の各事業年度における業種ごとの施工金額
- 法人事業税納税証明書
決算報告(決算変更届)で提出する届出書は、いずれも、経営事項審査の際の審査対象となる「数字(金額)」が含まれています。決算変更届は「届出」という性質上、間違いや不備があっても、あまり指摘を受けることがありません。そのため、決算の数字や売上高をいい加減に提出している事業者もいるようです。しかし、これらは、いずれも経営事項審査の「審査の場」で厳しくチェックを受けます。
「届出」だからと、侮らず、自社の1年間の実績を正確に記入するように注意しましょう。
(2)経営状況分析
続いて、経営状況分析が必要です。経営状況分析とは、民間の分析機関に、財務諸表を提出し、経営状況分析の結果通知書(Y点)を取得するための手続です。
経営状況分析の結果通知書は、経営事項審査を受ける際の必要書類です。また、経営状況分析の結果通知書に記載されているY点は、経営事項審査の結果であるP点の構成要素の1つです。そのため、経営事項審査を受けるには、先に経営状況分析を受けていなければなりません。「経営事項審査の後に経営状況分析を受ける」ということはできず、「経営事項審査を受けるには、事前に経営状況分析を受けて」いなければなりません。
それでは、経営状況分析とは具体的にどういったことをするのでしょうか?経営状況分析で、分析となるのは、以下の4つの項目です。
経営状況分析の対象となる4つの項目 | |
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どれだけ、借り入れがあるか?(負債抵抗力)
|
どれだけ、効率が良いか?(収益性効率性)
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どれだけ、つぶれにくい会社か?(財務健全性)
|
どれだけ、利益があるか?(絶対的力量)
|
総資本売上総利益率(収益性効率性)について
たとえば、売上高1億円・総資産1億円のA社と、売上高1億円・総資産1000万円のB社を比較した場合。A社とB社の売上高は、ともに1憶円なので、総資産額の大きいA社の方が、優秀で立派な会社のように思えます。しかし、収益性効率性という観点からすると、そうとも言い切れません。
A社は総資産1億円を1回転させて1億円を売り上げているのに対して、B社は総資産1000万円を10回転させて1億円を売り上げています。総資産を1回転しかさせることができなかったA社と、総資産を10回転もさせることができたB社とでは、どちらが、収益性効率性良く、経営ができているかというと、総資産を10回転させることができたB社ということができます。
そのため、経営状況分析においては、A社よりもB社の方が、Y点(経営事項審査の結果)が良くなるということができます。
負債抵抗力(負債回転期間)について
負債回転期間とは、「月商の何か月分の借り入れがあるか?」「今ある借金を、何か月分の月商で返済できるか?」という指標です。「今ある借金を1か月分の売上で返済できる場合」と、「今ある借金を完済するのに10か月分の月商が必要である場合」とを比較した場合、今ある借金を1か月分の売上で返済できる会社の方が、財務状況が健全であると言えます。
そのため、負債回転期間は短い方が、経営状況分析の結果であるY点が高くなります。なお、建設会社の負債回転期間は、平均すると6か月程度であるようです。
財務健全性(自己資本比率)について
自己資本比率という言葉は、よく目にすると思います。財務分析の指標としてとても有名な指標なので、知っている人も多いと思います。自己資本比率は「純資産合計÷総資産=自己資本比率」という計算式で算出します。
純資産は、「他人(他社)に返す必要のないお金」のことを言いますが、総資産(会社のすべての財産)の中に、他人(他社)に返す必要のないお金の割合がどれくらいかを表す指標です。
建設会社の平均は、30%台後半であるようです。より、財務の健全性を強固なものとして、つぶれにくい会社にするには、自己資本率が40%となることを目指しましょう。
(3)経営事項審査
「決算報告(決算変更届の提出)」と「経営状況分析(Y点の受領)」が終わったら、いよいよ経営事項審査です。前半の「公共工事の仕組み」の部分でも記載しましたが、経営事項審査の結果である総合評定値P点が、客観点数になり、客観等級の基礎となるわけですから、経営事項審査はとても重要な手続きということができます。
経営事項審査とは
経営事項審査とは、公共工事の入札参加資格を取得する会社は、必ず、受けなければならない手続きを言います。これは、建設業法27条の23に規定されています。この経営事項審査の結果である総合評定値P点が、公共工事の入札参加資格を取得する際の、等級格付けの基準となることは前述した通りです。
経営事項審査の審査項目について
経営事項審査の審査項目は、多岐にわたりますが、一覧にすると下記の通りです。
審査項目 | 評点 | 区分 |
---|---|---|
(業種別)完成工事高 | X1 | 経営規模 |
自己資本額 | X2 | |
利払前税引前償却前利益の額 | ||
(業種別)技術職員数 | Z | 技術力 |
(業種別)元請完成工事高 | ||
建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組状況 | W | 社会性 |
建設業の営業継続の状況 | ||
防災活動への貢献の状況 | ||
法令遵守の状況 | ||
建設業の経理の状況 | ||
研究開発の状況 | ||
建設機械の保有状況 | ||
国又は国際標準化機構が定めた規格による認証又は登録の状況 | ||
負債抵抗力/収益性効率性/財務健全性/絶対的力量 | Y | 経営状況 |
上記の表にあるように、経営事項審査は、さまざまな審査項目について審査を行い、それぞれ「経営規模(X1・X2)」「技術力(Z)」「社会性(W)」「経営状況(Y)」の区分について、評点を算出します。その評点を下記の計算式にあてはめて、総合評定値P点を算出します。
総合評定値(P点)を算出するための計算式 |
---|
0.25(X1)+0.15(X2)+0.20(Y)+0.25(Z)+0.15(W)=P |
総合評定値(P点)算出の具体例
それでは、具体的な数字を使って、P点を算出してみましょう。「X1」「X2」「Z」「W」「Y」の評点が、下記の表の点数であった場合を、P点算出のための計算式にあてはめてみると。
審査項目 | 評点 | 評点 |
---|---|---|
(業種別)完成工事高 | X1 | 790点 |
自己資本額 | X2 | 568点 |
利払前税引前償却前利益の額 | ||
(業種別)技術職員数 | Z | 716点 |
(業種別)元請完成工事高 | ||
建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組状況 | W | 636点 |
建設業の営業継続の状況 | ||
防災活動への貢献の状況 | ||
法令遵守の状況 | ||
建設業の経理の状況 | ||
研究開発の状況 | ||
建設機械の保有状況 | ||
国又は国際標準化機構が定めた規格による認証又は登録の状況 | ||
負債抵抗力/収益性効率性/財務健全性/絶対的力量 | Y | 959点 |
上記の計算式にあてはめてみたように、総合評定値P点は749点になります。
それでは、X1やX2やZなどの評点は、具体的にどのように算出するのでしょうか?この評点の算出方法は、とても複雑で難解でわかりにくいので、「X1(業種別の完成工事高)」についてのみ、簡単に解説させて頂きます。
X1評点の算出の方法
「X1(業種ごとの完成工事高)」は、下記のようなテーブル表に数字をあてはめることによって算出します。例えば、建築工事の平均売上高が2億円だった場合。2億円は、「2億円以上2億5,000万円未満」に該当するので、28×200,000÷50,000+678=790点となります。
業種別年間平均完成工事高 | 評 点 | |
---|---|---|
以上、省略・・・ | ||
6億円以上8億円未満 | 25×(年間平均完成工事高)÷200,000+868 | |
5億円以上6億円未満 | 25×(年間平均完成工事高)÷100,000+793 | |
4億円以上5億円未満 | 34×(年間平均完成工事高)÷100,000+748 | |
3億円以上4億円未満 | 42×(年間平均完成工事高)÷100,000+716 | |
2億5,000万円以上3億円未満 | 24×(年間平均完成工事高)÷50,000+698 | |
2億円以上2億5,000万円未満 | 28×(年間平均完成工事高)÷50,000+678 | |
1億5,000万円以上2億円未満 | 34×(年間平均完成工事高)÷50,000+654 | |
1億2,000万円以上1億5,000万円未満 | 26×(年間平均完成工事高)÷30,000+626 | |
1億円以上1億2,000万円未満 | 19×(年間平均完成工事高)÷20,000+616 | |
8,000万円以上1億円未満 | 22×(年間平均完成工事高)÷20,000+601 | |
6,000万円以上8,000万円未満 | 28×(年間平均完成工事高)÷20,000+577 | |
以下省略・・・ |
「X1」のほか「X2」や「Z」や「W」の評点も、上記のようなテーブル表に数字をあてはめて、計算式を使って、算出します。ただし、どの評点も算出するための計算方法は複雑ですので手計算で各評点やP点を算出することはなく、専門のソフトを使用して、各評点やP点のシミュレーションを行うことが一般的です。
(4)東京都への入札参加資格申請
経営事項審査が無事終了し、総合評定値通知書(P点)を受領したら、続いて、東京都への入札参加資格の申請を行います。ここまで見てきたように、「決算変更届の提出→経営状況分析→経営事項審査→P点の受領」という手順を踏んでからでないと、東京都の入札参加資格を申請することができません。
また、東京都の入札参加資格申請は、電子申請です。そのため、電子申請に必要な入札用電子証明書を購入し、入札環境を整えるためのPC設定を行わないと、入札参加資格の申請を行うことができません。
経営事項審査終了後の入札申請手続きの事前準備 | |
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手順1 | 入札用電子証明書とICカードリーダの購入 |
手順2 | 購入した電子証明書やICカードリーダを、パソコンで使用するための各種ソフトのインストールなど |
手順3 | 東京都電子調達システムを利用するためのパソコンの事前準備 |
以上の事前準備を行わないと、東京都への入札参加資格を申請することはできません。入札参加資格申請は、電子申請であるため(郵送や対面での申請は行っていない)、パソコンの環境設定は、必須の事前準備であると言えます。
東京都の公共工事の入札参加資格を申請する際の、入力項目は多岐にわたりますが、簡単に説明すると以下のような項目の入力が必要になります。
- 申請業種の選択
- 職員の人数
- 税金の支払い状況
- 業種ごとの年間平均完成工事高
- 業種ごとの年間平均施工件数
- 過去最高完成工事経歴(税込み)金額
(5)受付票と結果通知書
東京都の入札参加資格を申請すると、東京都電子調達システムから「受付票」と「結果通知書」がダウンロードできるようになります。これにより、御社も東京都の公共工事の入札に参加できるようになります。
3.東京都の入札に参加したいとお考えの方へ
以上見てきたように、東京都の公共工事を効率的よく受注するには、「仕組みの理解」と「手続きの実践」の両方が不可欠です。東京都の入札参加資格の仕組みを理解できたとしても、それを手続きのとして実践できなければ、意味がありません。また、書類の作成や申請といった手続きだけができても、仕組みを理解できていないと、より規模の大きい公共工事にチャレンジできる可能性を、失っているかもしれません。
行政書士の先生の中には
- 建設業に関する手続きを専門にしていない
- 建設業許可はできても、経営事項審査ができない
- 経営事項審査はできても入札参加資格申請ができない
という方も、いらっしゃいます。専門分野が異なれば、当然、知識や経験に差が出てくるため、もし、みなさんが東京都の公共工事の入札手続きを行政書士の先生に依頼しようとお考えの場合、経営事項審査や入札参加資格申請の手続きができるだけでなく、その中身をよく理解し、御社にとって有利な申請ができるような経験豊富な先生に依頼することをお勧めします。
しいて言うのであれば、
- どうやったら経営事項審査の結果(総合評定値P点)が上がるのか?
- 東京都の入札は、どういう仕組みで発注されているのか?
- ランク(等級)を上げるには、どうすれば良いのか?
- どういった会社(同業他社)が、実際に東京都の案件を落札しているのか?
といった点について、親身に相談に乗ってくれる人に依頼することをお勧めいたします。
もし、みなさんの周りに、そういった先生がいらっしゃらない場合は、行政書士法人スマートサイドへの有料相談(1時間/11,000円)をお申込みください。事前予約制とはなりますが、上記の疑問点や不安点について、ご回答させて頂きます。
最後になりましたが、東京都の公共工事の仕組みを理解し、手続きを実践すれば、公共工事の落札も「夢」ではありません。今日、この動画セミナーで学んだことを十分に生かして、ぜひ、東京都の公共工事の入札にチャレンジしてみてください。
みなさまの今後の活躍を祈念して、本日のセミナーを終わりにしたいと思います。最後までご清聴ありがとうございました。